非幻想異端的日常
2004年 7月 1日 (木)
 銀行に行ったついでに久しぶりにレンタルビデオに寄ってビデオを借りてきた。日本のヤクザ映画と押井守の実写映画。

 最近、本を読んだりDVDを見たり音楽を聴いたりする行為にある種の混乱を覚えるようになった。俺はどうもいろんなものにはまりすぎているような気がする。はまるものがたくさんあるのはよろしいことではあるものの、毎日タランティーノの映画をくり返し延々と見ていたかと思うと、突然浴びるようにインド映画を見だしたり、たまにアニメばかり見る時期があったり、突発的に格闘技に萌えていたりする。コメディばかり見る時期もある。読書はブコウスキーや京極夏彦の同じ本をくり返し読んでばかりいたかと思うと、また突然中国文学ばかり読みはじめたり、格闘技の本を読んだり、節操ない。音楽は70年代の古くさいロックから、インド映画のサントラ、日本のアイドル、中国のポップスや70〜80年代のテクノなどを幅広く聴いている。
 実際、タランティーノの映画を見たいときの気分と、インド映画を見たい時の気分と、コメディを見たいときの気分と、アニメに萌えていたいときの気分と、格闘技を観戦するときの気分は明らかに違う。音楽や読書もまたしかり。
 これが素直に自然発生的に今はこれを見たい、読みたい、聴きたいと思って嗜好しはじめる場合はよいのだが、たまに腕を組んで「今の俺は何モードだろうか?」と書物やCDやDVDの山を眺めながら意識的に考えるようになるとやや危険な状態で、さらにこのまま何が何だか解らず、嗜好したい対象が決まらず、とりあえずテレビなんぞをつけ普段は見たくもないバラエティ番組などをカラッポの頭で見始めたりしようものなら、かなり重傷である。
 そんな虚無なひとときが、1〜2週間に一度くらい訪れるようになった。もう少し自分の嗜好をコントロールする術を確立する必要性を感じる今日この頃である。ちなみに他の人は「今の自分は何モードか?」と悩むひとときというのはないのだろうか。

2004年 7月 2日 (金)
 法人税の支払いで銀行へ。なんかこないだ何か払ったと思ったらまたこれだ。もう少しまけてくれ。税金。

2004年 7月 3日 (土)
竜二 金子正次の「竜二」なんぞを再見。18年ぶりくらいに見たがいま見ても新鮮だ。いい映画はいつまでたってもいい。ヤクザ映画は苦手な俺にとって、数少ない例外のひとつである。

2004年 7月 4日 (日)
スパイダーマン2 先行オールナイトで「スパイダーマン2」を見に行った。なんかよく出来てる感じで面白かったね。オーソドックスなヒーロー哲学が妙に新鮮に胸をうつ。
 例によって個人的に納得いかない点はあった。スパイダーマンの最初の登場がピザのデリバリーとはなんだ。狙っているのかもしれないが、俺は納得いかない。ヒーローの最初の登場シーンはさっそうと悪を倒すシーンであってしかるべきだ。
 あとはまあよし。良くも悪くも、アメリカ映画であった。

 暇だったので新宿南口でめしを食ったついでに悠里とゲームセンターに入った。俺はゲームをやらない主義なので、滅多にゲームをやらないのだが、たまにはこういうこともある。
 メダルを買い、穴から落として山と積まれたメダルを谷から落としてゲットするタイプのメダルゲームをやっていた。すぐにメダルがなくなったので、百円でできる勝てばアニメ絵の女の子が脱いだりエッチなことをしてくれたりする麻雀ゲームを何度かやった。飽きて、悠里を見ると、パチンコでかなりメダルをかせいでいたので、少しもらい、またメダルを山から落とすゲームをやりはじめた。座った場所が当たったのか、メダルがみるみるうちに増え、いっこうになくなる気配がなく、夜9時になってしまったので、諦めてメダルを預けて帰ることにした。預ける手続きをしてみて驚いた。最近のゲームセンターは指紋認証で自動的にメダルを預けたり引き出したりできる機械があるのだ。俺の知らないところでずいぶん文明は発達している。
 とにかく来週もゲームセンターに行くはめになりそうだ。

2004年 7月 5日 (月)
KHAKEE インド映画「KHAKEE」を見た。主演はアイシュ。これはなかなか凝ったストーリーで面白かった。
 冒頭でテロリストが逮捕され、裁判にかけるためにボンベイまで護送することになった。ボンベイまでの道中、必ずテロリストの仲間が同士を助けるために襲ってくる。その危険な任務に選ばれたのが、定年間近でほとんど仕事に情熱を失っている老警官(演ずるはインド最高の名優アミタブ・バッチャン)。彼は数日後に愛娘の結婚式をひかえ、何がなんでも死にたくないところ。そして女にしか興味がないプレイボーイのダメ警官(演ずるはアクシェイ・クマール)。その他数人。ここにテロがらみの事件の目撃者であるアイシュが加わる。このちょっといい加減なメンバーで最高に危険な任務に旅立つという前半がまず面白い。
 この時点でラストは大方予想がつくと誰もが思うだろう。難関をくぐりぬけながらも、テロリストのグループを撃破し、最後は無事ボンベイに辿り着いて、めでたしめでたし、となると思ったら、これが大間違い。中盤でストーリーは180度変化するのだ。ここからネタばれになるが、冒頭で逮捕されたのは実はテロリストの仲間なんかではなく、実は善良な医者で、政府とテロリストがグルになっているというとんでもない秘密を握っている。つまりテロリストが襲ってくるのは、仲間を助けるためではなく、裁判で不利な証言をされては困るので、途中で殺させるための政府のさしがねだったのだ。
 なるほど、護送する警官たちに頼りないやつばかりが選ばれたのは、映画を面白くするための演出などではなく、任務を意図的に失敗させるよう政府が仕組んでいたという、確固としたストーリー的な裏付けがあったのだ。そしてラストにいたって、さらにどんでん返しはくり返される。まったく最後の最後まで目が離せない見事な構成だ。
 傑作といっても過言ではないだろう。

2004年 7月 6日 (火)
 生活のリズムが見事に昼夜逆転してしまい、困っている。

2004年 7月 7日 (水)
水滸伝人物事典 最近遅ればせながら「水滸伝」を読みはじめたのだが、意外と面白いので、高島俊男の「水滸伝人物事典」なんぞを買って平行して読みながらさらに深くはまっている。
 「水滸伝人物事典」は108人の豪傑だけでなく、一度だけしか顔をださないポッと出のキャラまで網羅してあるといすごい事典である。おまけに当時の中国の制度や年表、武器の解説まであって、大変参考になる。4700円は痛かったが、買ってよかった。

2004年 7月 8日 (木)
 「キルビル」のDVDを買おうか迷っている。vol.1、vol.2あわせたボックスセットが出たら買おうと思っていたのだが、こうコンビニやらどこやらそこかしこで並べられているのを見せられると、我慢も限界に近くなってきた。買うか。

2004年 7月 9日 (金)
 生まれて初めて千葉真一のアクション映画を見た。脱力。カンフー映画なのにカンフーのシーンは少ししかなく、ほとんどコメディーだった。しかもわずらわしいことにちょっと笑える。如何ともし難い。

2004年 7月 10日 (土)
 深夜テレビで「12人の優しい日本人」という邦画がやっていたので見た。言うまでもなくこれはかのシドニー・ルメットの名作のパロディだが、それなりに考えてあって、思ったより楽しめた。もう一歩で佳作くらいにはなりそうだ。

2004年 7月 11日 (日)
 パソコンがインターネットにつながらなくなったのでみてくれと友人に頼まれ赴いた。
 原因不明なのでOSを初期化したら、それまで点灯していたルータのLANが消えた。メーカーに問い合わせたらパソコンを初期化した時にルータのドライバが消去されたのだろうと言う。一難去ってまた一難だ。ルータは誰かが家にあったのを持ってきたものらしい。ドライバのCDやフロッピーらしきものは見あたらない。あちこち電話をして頑張ったが、ダメだった。
 結局俺の手ではどうしようもなく、お役に立てませんでと頭を下げて帰った。
 パソコンが解らなくてあちらこちらいろんな人に手伝ってもらっていると、トラブル解消も分担作業になってしまうという見事な一例である。
 パソコンが解らない方、セットアップやらネット接続やらメンテナンスやらソフトのインストールやらトラブル解消やら友達に頼むのはいいのですが、なるべく同じ人にみてもらうようにしましょう。

2004年 7月 12日 (月)
 インド映画「DIL」を見た。主演はマドゥーリ。
マドゥーリ 恋愛映画とはいえ、恐ろしく意味のないストーリーに、ひっくり返りたくなるようないい加減なラスト。なのに飽きずに見れる。巨匠インドラ・クマール監督の独特のストーリーテリングの妙といえよう。つまりこれはノリで楽しむ映画なのだな。そう割り切ればこの意味のなさも愛嬌のひとつと思えてくる。
 それにしてもこのインドラ・クマール監督、ホラー映画ファンなのか、ホラー映画でもないのにホラー映画っぽいシーンを無理矢理いれこむ性癖がある。だいたい恋人どうしのケンカでどうして映像のトーンが「13日の金曜日」になってしまうのだ。ここまで来るとノリというより悪ノリである。
 いやあ、とにかく楽しかった。

2004年 7月 13日 (火)
 一日中カリカリしていた。怒っていたのではなく。あるものを掻いていたのだ。
 あそこを掻くと気持ちがいいのである。あそこと言っても、あそこのことではない。

2004年 7月 14日 (水)
 洗濯に行った。靴下の量があまりにも多いのに我ながら驚く。いつから俺は靴下コレクターになったのだ。理論は簡単だ。暑いので家に帰ると靴下を脱ぐ。同じ靴下を履く気にならないので次に外出するときは同じ日でも違う靴下を履く。すぐに靴下が底をつく。靴下を買いに行く。そして洗濯に行く。洗濯の後、靴下の右と左を合わせるのが面倒臭い。だから洗濯に行かなくなる。余計靴下がたまる。余計洗濯の後の作業が面倒臭くなる。さらに洗濯に行かなくなる。そうして果てしなく靴下が増えてゆく。怒濤の悪循環である。如何ともし難い。

2004年 7月 15日 (木)
 渋谷。
 昨日別件で電話したらいきなり新しい企画の話しを持ちかけられ会うことになった。まだあまり親しくない某会社の社長さん。
 それなりに斬新な企画だった。
 まだなかったっけか、こういうの。

2004年 7月 16日 (金)
 病院に行く途上、電車の中で週刊モーニングを読み耽る。
 ある漫画を読んでいて、世の中は様々な呪の言葉に満ちている、と思う瞬間があった。最近メディアを見ていて頓に感じていることである。
 人間だからしょうがないのかな。

 鼻水が止まらない。ぼーっとする。微かに頭が痛い。風邪か。

2004年 7月 17日 (土)
24 「『24』はもう見ましたか」
 「まだなんですよ」
 「面白いですよ」
 「どういう風に面白いんですか」
 「とにかく面白いんですよ」
 「どこらへんが」
 「いやもうとにかく、面白いとしか言い様がないのです」

 そんな会話を先日したのをきっかけに、この度やっと話題の米国テレビドラマ「24」をレンタルしてきた。いつかは見るつもりだったがインド映画や香港映画ばかりにかまけて後回しにしていたのだ。
 見た。
 まず一話目でブッ飛ぶ。その後三話まで一気に見る。
 次の日なにかに憑かれたようにレンタルビデオに飛んでゆき、あった分だけ全部借りてきた。十三話まであった。
 夜むさぼるように見た。
 朝になっても見続けた。
 寝坊できない都合があったので、7時頃続きを見たい気持ちを断腸の思いでふりきって寝た。
 起きても続きが気になって仕方がない。
 一日中『24』が頭から離れない。

 しまった。ひょっとしてはまってしまったのだろうか。

2004年 7月 18日 (日)
 「スチームボーイ」を見に行った。
スチームボーイ 待望の大友克洋の新作である。いま「待望の」と書いたが、正直いって彼の唯一の長編作「アキラ」は手放しで面白いと言えるような作品ではなかった。「迷宮物語」や「メモリーズ」などの短編や昔の漫画が傑作だったのと、あと世界における評価などで世間では彼がすごいアニメ作家のような錯覚をおこしているが、実際長編アニメ作品では彼はまったく実績がない。そしてその事実を裏付けるかのように、ネットの掲示板などでは既に悪評ふんぷんたる雰囲気が漂っている。まあでも「アキラ」よりマシならいいだろう。
 そんな想いを胸に、さっそうと公開初日の深夜オールナイトでこの作品を見た。
 これが予想をはるかに上回る酷い映画だった。ここまで酷いと中途半端に未消化だった「アキラ」よりかえってスッキリしていていいかもしれない。中盤でいきなり戦争が始まるところなど、ほとんどギャグである。しかしこの映画で一番ギャグなのは、全編映像が“スチーム史上主義”なところだ。「スチーム史上主義? なんだそのアホな言葉は」と思われた読者諸氏。そのアホさ加減がそのままこの映画の印象だと思えば問題ない。19世紀のイギリスはさぞや湿気で大変だったことだろう。
 映像的にはそれなりに楽しめたけどアクションとか描写とか見せ方とか、あまり上等なものではなかったなあ。なによりストーリーが退屈極まりない。退屈な原因はストーリーだけでなく、設定がアホらしいので、途中から白けて見ていることもあったかと思われる。むしろ一番楽しめたのは恥ずかしいまでのダメダメぶりの方だ。
 八割の悪い意味と、二割の良い意味で、壮快な大友克洋の待望の新作であった。

2004年 7月 19日 (月)
indesign 先日買ったAdobeのページレイアウトソフト「インデザイン」をぼちぼちいじりはじめた。
 このソフトを買った理由は他でもない。かの京極夏彦がこのソフトで小説を入稿していることをどこかで読んで、よし俺もこいつに小説を流しこんで、幻想異端文学連盟の本をつくるぞ、と思ったのがきっかけだ。平行して印刷会社にあちこち問い合わせして見積りを出している。
 しかしインデザイン、思ったより難しい。いやそれより説明書がいい加減なのかもしれない。なんど目次をなめまわしてもどこを読み返しても、さっぱり解らない。とにかくこの調子ではいつになったら使いこなせるのか、先が思いやられる。近いうちにマニュアル本を買ってこよう。ちなみに印刷料金もけっこう高いな。製本はやはり手動でやるか。
 というわけで雑誌・幻想異端文学連盟はいつの日か当サイトにて発売予定でございます。

2004年 7月 20日 (火)
 祭日なのになんか仕事した。

2004年 7月 21日 (水)
 最近毎日食ってるもの。セブンイレブンの焼きサバ寿司。うまいのだ。

2004年 7月 22日 (木)
 携帯サイトの営業で久しぶりに外をかけずり回る。行く先々でデモンストレーションするもんだから、携帯の電池がすぐなくなってしまうのには困った。

2004年 7月 23日 (金)
 A day like yesterday.

2004年 7月 24日 (土)
 運営しているサイトのデータがサーバからいきなり消滅。バックアップは重要だ。

2004年 7月 25日 (日)
 オールナイト上映で「マッハ!!!!!!」を見に行く予定だったのだが、居眠りしていて目が覚めたら深夜3時。見事に見逃した。平日に暇をみつけて行ってこよう。

2004年 7月 26日 (月)
 とんかつ「和幸」で食事。まずかった。

2004年 7月 27日 (火)
 やっと「24」の最初のシーズンを全話見終わった。
 いや〜それにしても後半はムチャクチャだったな。前半はしっかりしていたのに。いやそれとも最初のうちだから映像や演技などの演出に集中して見ていてアラが目立たなかっただけかもしれない。それにしても後半ストーリー運びや演出がえらくザツになったような気がするな。
 とくにストーリーが進むにすれて、どんどんキャラクターたちがバカになってゆくような気がしたのは俺だけだろうか。あえて分析するならば、つまりこういった物語はキャラクターたちを次から次へと窮地に陥らせてゆくところにポイントがあるわけで、最初はキャラクターたちが賢くてもただ窮地を与えればよかったところが、話しが24話もあると、毎回毎回窮地に陥らせるにもだんだん限界がみえてきて、ある程度キャラクターにバカな選択をさせねば続かないといったこともあるのだろう。テレビドラマだから映画のように何ヶ月も脚本を練りに練ったりすることもかなわぬことだから、これはしょうがないのかもしれない。
キム それにしても見ていて人間がバカスカ死にすぎるのにはまいった。主役たちだけが死ななければそれでいいのかと思えるほど、とにかく人が死にまくる。ただ殺されるためだけに画面に登場するキャラクターたちが後をたたない。前半で黒人女性の警官が殺された場面で、「ノオォォォ…」とジャックと一緒に頭をかかえて嘆いた自分がバカみたいだ。
 デニス・ホッパーは素晴らしかった。あと「レザボア・ドッグス」で耳をカットされる警官をやった俳優が出ていた。
 まあ全体としては面白かったし次のストーリーも気になるので、第2シーズンも見るぞ。そのうち。

 ちなみに画像はキム役のエリーシャである。
 とくに好きではないが、なぜか昨晩、夢にでてきた。

2004年 7月 28日 (水)
 麻雀漫画「哭きの竜」というのがすごい名作だとどこかで聞いたことがあり、コンビニで売っていたのをみつけて買って読んでみた。俺にはあまり上等な漫画には思えなかったが、まあこれがきっかけで、無性に麻雀がやりたくなった。かと言って麻雀をやるような仲間も暇もない。と困っていたらそうだ東風荘があったじゃないかと思い出し、昔登録したIDとパスワードをハードディスクの奥からひっぱりだしてきて、最近毎日仕事のあいまに遊んでいる。だいたい勝ったり負けたりだが、六割方負けることが多い。まあ、息抜きにはちょうど良い。

2004年 7月 29日 (木)
 久しぶりにパークタワーのインド料理「スパイスヘブン」で食事。
 ここはもう二度と行かないつもりだったが、最近店長さんがまた新しく変わったと聞いて、行ってみることにしたのだ。
 食事をしているあいだ、新しい店長さんとインド映画について語り合った。俺の方がなぜか詳しかった。
 料理はナンやサフランライスに対してカレーの量が少なくややバランスが悪かったが、うまかった。
 また来よう。

2004年 7月 30日 (金)
 レンタルで石井聰亙監督の「五条霊戦記」のDVDを借りて見た。
 石井聰亙は20年前くらいまでは日本で一番好きな監督だった。彼は84年の「逆噴射家族」以来十年ほど長編映画から遠ざかっていて、94年の「エンジェル・ダスト」で復活した。
 正直「逆噴射家族」までの初期作品はすべて傑作以上のクオリティに達していたが、「エンジェル・ダスト」以降の近作はすべて俺の口には合わなかった。石井聰亙はもうダメかと思っていたし、この「五条霊戦記」もあまり評判が良くないので、まったく期待はしていなかった。でもまあ石井聰亙だし、どんな映画なのか興味はあったので、この度、気まぐれに借りてきてみたというわけだ。
五条霊戦記 映画を見はじめて、ごっつい迫力ある映像の連続にあっけにとられ、一気に脳がひきしまる。なんだこれは、すごく面白いではないか。
 そして2時間17分、まったく飽きることなく画面に釘付けにされ、最後で見事にぶっ飛んだ。未だ曾て、源義経と武蔵坊弁慶の五条橋での戦いをこれほどまでに超絶的にかっこよく描いた物語があったであろうか。不思議だ。どうしてこんな大傑作が評判悪いのだろう。
 「仏」と「鬼」と「刀」と「戦」のテーマが深くからんだストーリーに、荒々しく美しい映像、そして音響効果がまたものすごい。船木が死ぬシーンもよかったが、やはりクライマックスは「狂い咲きサンダーロード」や「爆裂都市/バースト・シティ」などの往年の石井聰亙の傑作を思わせる迫力で、すばらしかった。やはり石井聰亙はアクションだな。そうか、思えば復活以来、石井聰亙はまだアクションを撮っていなかったのだ。これまでの時代劇の殺陣で見たことがなかったような独特の撮り方をしている。がしかし、これは石井聰亙の初期作品のアクションのガシャガシャしたカメラワークそのものだ。あれを時代劇に適用するとこんな斬新な映像になってしまうのだな。
 武蔵坊弁慶役の隆大介は黒澤明の「影武者」で織田信長をやった人。なんて絶妙なキャスティングなのだろう。義経役は浅野忠信。その他、永瀬正敏、プロレスラーの船木誠勝など、どれも絶妙なキャスティングで、それぞれ特筆ものの味わいがあり、またすべてのキャラクターがストーリーで重要な役割を演じている。
 誰がなんと言おうと俺はこの映画は完璧な傑作だと思う。欠点はタイトルくらいしか見あたらない。なんかオチも妙に気に入ったな。歴史なんてクソ喰らえだみたいな痛快な制作者の意志が見え隠れするようで、すべてをアクションでぶっ飛ばしたみたいな適当ないい加減さが気持ちいい。“サイバーアクション”という宣伝文句が意味なくピッタリ合っている。どこがサイバーアクションだって? なんとなく雰囲気がそんな感じじゃねえかよ。深く考えるな。
 それにしても近頃これほど見終わって嬉しい気持ちになれた映画鑑賞はなかったなあ。遠い昔に失ったものを取り戻したような充実感だ。吉本ばなな先生がダリオ・アルジェントの「スリープレス」を見た時って、こんな気持ちだったのだろうか(と普通の皆様には解らない例えをする)。
 というわけで石井聰亙先生、俺はまたあなたのファンになりました。これからもこんなイカしたイカれた映画をいっぱい作ってください。マル。

2004年 7月 31日 (土)
 いやあ、ずいぶん日記を書いてなかったな。
 これを書いているのはすでに8月15日だ。半月あまりも日記を書いていなかったことになる。忙しかったんだな。
 じゃあぼちぼち思い出しながらいってみようか。

 7月下旬。
 実にめでたいニュースがあった。
colors 悠里が参加した作家ユニット・未完百五円の本がゴザンスから出版されたのだ。その名も「COLORS」。人種差別という社会問題にまっこうから取り組んだ書物だと勘違いしてはいけない(いないか、そんなやつ)。「色」をテーマに書かれた小説・詩・エッセイ・なんだかわからないものなどの短編を集めたアンソロジーである。
 俺はさっそく買って、現在、電車に乗っているときにカバーをかけずなるべく表紙が見えるように読み進めている。皆も同じようにされたい。

こちらで買える
http://www.rakuten.co.jp/book-ing/431615/558291/


戻る
wwwnikki ver 0.641(20020410) (c)AuSYSTEM 2002