非幻想異端的日常
2008年 12月 1日 (月)
 予定していた友達が出るキックボクシングの試合がお流れになったようなので、ずっと事務所で文章を書いたりしていた。夜は大縁会に参加した。参加者数にムラの多いこの飲み会だが、今日は4人と少なかったにもかかわらず、半分が女性だったのでよろしかった。こじんまりと飲んで話して、普通に早い時間に寄り道もせず帰った。その後は映画を見ながら早く寝た。

2008年 12月 2日 (火)
 明け方4時に起きた。ここぞとばかりに洗濯に行った。
 バイトの帰り、集金予定の池袋に向かったが、池袋に着いてから電話したら社長さんが入院中なので明日にしてくれと言われ、無駄に電車賃を使っただけで帰るはめになった。腹いせに寿司でもヤケ食いしていこうと思ったが、この時間、回転寿司は閉まっていたので、諦めてスーパーでイカめしを買って帰って食った。今の俺にはイカめしでもささやかな贅沢だったりする。

2008年 12月 3日 (水)
 バイトの帰り、池袋に向かったが、社長さんの入院が長引いているのでまた明日にしてくれと言われた。今日は念のために改札を出る前に電話したので電車賃は助かった。

2008年 12月 4日 (木)
 朝からバタバタしてて、渋谷で昼頃に予定の集金が午後三時になった。それでもやるべきことを二三、カットせざるを得なかった。せっかく渋谷に行ったのにムルギーにも寄らず事務所にすぐ戻り、「背中(仮)」のオーディション。それが終わってすぐまた出掛けた。
 父の会社でミーティング。そして近くの居酒屋で妹もまじえて飲んで食った。この後、池袋で集金の予定があったのであまり飲まなかったが、なにはともあれ、池袋の集金はまた延期になった。

2008年 12月 5日 (金)
 二週間ほど前に最後の詰め物を終え、やっと歯が完治したと思ったら、どうも噛み合わせが悪かったらしく、この二週間というものモノを食べると左の上の奥歯が痛くてしょうがない。そのうちなじむかと思ったら痛さは増す一方で、仕舞いには頭痛までしてきて、たまらず今日、また歯医者の門をたたいた。奥歯のでっぱっていた部分を軽く削ってもらって、今度こそ本当に完治したと思われる。しかし二週間、噛み合わせの悪い状態で歯を酷使したツケか、未だに奥歯はズキズキ痛む。これはまだしばらく様子見だな。

2008年 12月 6日 (土)
 金が無くて気がめいる。

 園子温監督の映画「紀子の食卓」見た。吹石一恵、吉高由里子、つぐみ主演。
★★★★ これは同監督の問題作「自殺サークル」のサイドストーリーである。自殺が流行って世間の人たちがどんどん自殺してゆく社会現象と、裏でその現象の糸を引いている謎の組織『自殺サークル』の存在を群像劇の形で描いたのが「自殺サークル」だったが、この「紀子の食卓」はそれらの事件を紀子という少女とその家族の視点を通して描いている。つまり前者は自殺サークル現象を俯瞰から眺めた映画で、こちらは主観的に眺めた映画といえる。
 しかしこの映画のメインは自殺サークルというより“レンタル家族”で、家族の虚構を描いた部分がメインになっていた。だから「自殺サークル」を見てなくてもこの映画単体で価値はあるが、見ていた方がよいことは確かだと思う。
 よくゲームで見る者をウツにさせるという、“鬱ゲー”と呼ばれるジャンルがあるが、なんとなくそれに似ている。何の変哲もないひとつの家族が崩壊してゆく過程を、時に明るく、時にもの悲しく、時にグロテスクに、手ブレが印象的なドキュメンタリータッチのカメラと細かい編集でテンポ良く描いてゆくのだが、すべての俳優の演技が最高で、この映画の底知れぬ鬱パワーに精神状態が浸食されっぱなしで最後までひき込まれた。
 この鬱パワーは単純なうまさだけの問題とは思えず、わけがわからないながらも観賞していたが、ラストで、これは精神的な意味でだが、人間を外側の皮膚と内側の内臓を逆にしたような気持ち悪さなのだと思い当たった。人間の、家族の、内側の闇を表に曝け出した気持ち悪さとでも言おうか。しかしあくまでもこれは表と裏が逆になっているだけで、最後に辿り着く中心点は同じことなのだ。だからラストで俺はちょっとホッとした。この映画を見てよかったと思った。それにしても「逆噴射家族」といい「家族ゲーム」といい「空中庭園」といい、食卓シーンてのは、その崩壊を描くにしろ狂気を描くにしろ再生を描くにしろ、ともかく家族の象徴なんだな。
 吹石一恵も吉高由里子もかなりよかったが、つぐみがとにかくどえらいハマり役だった。彼女はこないだ見た「月光の囁き」に主演していた女優さんだが、あんなものとは比べものにならない真実に迫った迫力があった。また彼女の演じる久美子というキャラが、どうも俺にはこの物語の主人公に思えてしょうがなかった。結局レンタル期間中にこの映画を俺は三度も見たが、久美子を中心にこの物語を追ってゆくのが一番深く核に届くような気がした。
 ちなみにこの映画、なんとたった2週間で撮影されたそうだ。この2時間半もある、膨大なカット数の映画を2週間で撮れるとは、スケジュールもハードだったに違いないが、それ以上に早撮りのテクニックがものすごいと思った。映画制作の勉強になったな。

2008年 12月 7日 (日)
 「背中(仮)」の脚本を書き直していたが、仕事が忙しくてあまり進まなかった。

 それにしても文章を書くって気持ちがいい。

★★★ 東映のアニメ映画「白蛇伝」を見た。日本における長編アニメーション劇場用映画の記念すべき第一弾である。昭和三十三年制作だが、アニメーションのクオリティは非常に高い。子供の頃に見ただけなので、完全に初めて見るのと同じだった。
 今にしてみると、宮崎駿にソックリだ。ストーリーの展開も動きもキャラクターも、宮崎駿そのものと言っていい。そうか宮崎駿の原点はここにあったのかと納得した。特にストーリー展開がなんともいえず、宮崎駿っぽい。微妙に破綻するところもまさに宮崎駿である。
 やはり古い映画なので、セリフ回しとか、おかしなところはいっぱいある。こういう古い映画が熟成してシュール化する現象はよくあって、それなりに楽しいものだ。人間の言葉をしゃべる動物が出てくるのはアニメの定番表現だが、それが中国が舞台だからといってパンダというのは、実に安易でまた楽しい。
 これを機に東映のアニメ映画のクラシックを順番に見てみようかな。

2008年 12月 8日 (月)
 「背中(仮)」のオーディション。
 まず最初にオバラさんがやってきて、その後のオーディションに立ち会ってくれた。オバラさんは俺の自主映画制作人生の兄弟子のような方であり、その活動といい創る映画のクオリティといい、目下もっとも影響や刺激を受けている人物なので、勉強さしてもらいます、ってなところで大変ありがたい。
 次に来たのはオッサン役には合わないかもしれないけど何か合う役があったらやらせてほしいので一応オーディションしてほしいと申し出てこられた53歳の俳優さん。こういう主体性にあふれた申し出は嬉しくて、一も二もなく来ていただいた。確かにオッサン役には個性が強すぎて合わなかったが、この個性を生かして何か他の役を当て書きしてでも出ていただきたいと思った。
 次は女学生役の若い女性。この方がまた個性が強くて、最初に想定していた女学生役には完璧に合わないような気もしたが、後で演技テストのビデオを見直してみたらフッとイメージがわいたので、キャラをちょっと微調整してでも出ていただくのは悪くないと思った。
 次に予定していた俳優さんは連絡なしにすっぽかし。彼はプロフィールも送ってこなかったような方だし、こういう方がひとりはいるものだ。
 最後にオバラさんがオッサン役の演技を実演してくださった。彼なりの解釈で2パターンやっていただいたが、さすが創意工夫にあふれて「なるほど」の一語に尽きるものがあった。
 オーディションの後、「背中(仮)」という映画の方向性について話し合ったが、ちょっと自分の考えの甘さを思い知らされた面があり、常に外から新しい刺激を受けるのは大切だなと、甚だ勉強になった次第である。

2008年 12月 9日 (火)
 午前中、「背中(仮)」の女学生役のオーディションで1名、事務所に来ていただいてお会いした。アイドルとしても活躍しているフリーの女優さんで、とにかく可愛い。勘もいいようで、女学生役じゃなくて他の役で出ていただくかもしれない。

2008年 12月 10日 (水)
★★★★★ ギャオで映画「俺たちに明日はない」を見た。ボニーとクライドの犯罪と暴走の青春映画。ウォーレン・ビューティ、フェイ・ダナウェイ主演。
 もう映画がはじまって、ふたりの出会いのシーンのカッコよさと、フェイ・ダナウェイの美しさにヤラれた。この映画がなかったらタランティーノの「トゥルー・ロマンス」や「ナチュラル・ボーン・キラーズ」は生まれなかったのではなかろうか。
 映画のような恋愛がしたいと思ったとき、俺のアタマに即座に浮かぶのはペキンパーの「ゲッタウェイ」だったのだが、これからはその下にこの「俺たちに明日はない」を並べておきたい気がする。有名なラストも想像以上にクラクラきた。
 ちょっと犯罪恋愛映画にハマりそうだ。こういう映画、他に知ってる人がいたら誰か教えてくれ。(そこで「ニキータ」とか言った奴は逝ってよし)

2008年 12月 11日 (木)
 前日、映画を見ながらうつらうつら寝てしまい、明け方の四時に目が覚めた。午前中はさらっと仕事して、せっかく早く起きたので、珍しく朝食を食った。サッポロ一番とサンドイッチと菓子パン。今日はあれこれ予定が詰まっててしばらく食事をする暇がないので力をつけるためにサッポロ一番に二個ばかし餅を入れたら腹がいっぱいになった。午後はピアノの先生と打ち合わせ。その後、ビジネスのコンサルティングでI社のIさんと事務所でお会いし、近所のワシントンホテルのイタめし屋でビールを飲みながら食事をした。長い一日だったが進んだ仕事はあまりなかった。

2008年 12月 12日 (金)
 オムニバス映画「10ミニッツ.オールダー 人生のメビウス」を見た。これは一話につき十分間の時間を使って、「十分間」という時間をテーマに、十五人の巨匠たちが撮った十五本の短編映画集である。この「人生のメビウス」と「イデアの森」の二本に分かれて公開された。
★★ この「人生のメビウス」ではアキ・カウリスマキ、ヴィクトル・エリセ、ヴェルナー・ヘルツォーク、ジム・ジャームッシュ、ヴィム・ヴェンダース、スパイク・リー、チェン・カイコーの七人の監督たちが撮った七本の短編映画が収録されている。
 ここ数年のあいだで見たオムニバス映画では、エピソードのうちだいたいほとんどがつまらなくて、ほんの数本だけおもしろいのがある、というパターンが続いている。ところがこの映画はかなり違って、どの作品も平均点前後の出来だった。とびぬけておもしろいものもなければ、つまらないものもない。他のオムニバス映画と比べて、いったいマシなんだかパッとしないんだかよくわからないところが特徴である。総括すると、

 平均点以上はヴェルナー・ヘルツォーク、ジム・ジャームッシュ
 平均点はヴィクトル・エリセ、ヴィム・ヴェンダース、スパイク・リー
 平均点以下はアキ・カウリスマキ、チェン・カイコー

 と比率まで均衡を保っていたりする。比較的好きな監督に平均以上の作品が集中し、嫌いな監督や知らない監督に平均か平均以下の作品がまとまっている。その監督の作風を楽しめるかどうかがポイントだったようだ。ジム・ジャームッシュの作品はもろジム・ジャームッシュだったし、ヘルツォークの作品はもうヘルツォーク作品そのものだった。ヴィクトル・エリセは、映像美と象徴性だけの嫌いなタイプの作品、でも出来はいいので平均点。ヴィム・ヴェンダースは実はつまらなかったのだが、ドラッグ描写が優れている映画には個人的に評価が甘いたちなので平均点。スパイク・リーはジョージ・ブッシュの悪事を暴いたドキュメンタリーで、まぁ、こういうテーマは声を大にして訴えないといけないので、場所を間違えてる気はしないでもないが、平均点。アキ・カウリスマキは知らないし、おもしろくなかったし、チェン・カイコーはもともと大嫌いなので、平均以下。
 企画そのものとしてはあまり意味ないような気がする。

2008年 12月 13日 (土)
 人を紹介するのと、ちょっと仕事があったのとで、銀座のX社の事務所に行った。その後、父上の運営している組織の二十五周年記念パーティーで、虎ノ門のホテルに赴いた。到着すると、いきなり鳩山由紀夫氏が壇上でスピーチしていた。ご大層なゲストまで読んで、なかなか盛大なパーティーである。二十年前にアメリカ留学していたときにお世話になった人がたくさん来ていて、ほとんど二十年ぶりにお会いした。立食パーティーだったが、立ったまま食事をするのもこういう雰囲気も苦手なので控えめに隅っこで食っていたが、やはりお腹が痛くなったので、帰ってすぐに寝た。

2008年 12月 14日 (日)
 仕事しながらチャットで打ち合わせしてたら、同時にいろんなこと考えすぎて疲れた。

★★★★★ クリント・イーストウッド監督・主演の「ミリオンダラー・ベイビー」を見た。高価な赤ちゃんの映画かと思ったら、ボクシングの映画だった。
 いや〜、しかし、今まで見たクリント・イーストウッド監督の映画で一番おもしろかった。
 クライマックスから最後までのシーンは涙が出て止まらなかった。涙は出たけど、それをぬぐうのも忘れてまばたきもせず、画面に見入ってしまった。
 そしてはたと気がついた。
 そうか、涙って、まばたきしないで見るために出るもんなんだな、って。

2008年 12月 15日 (月)
 東京駅で仕事の打ち合わせの予定が少し時間が後にズレて場所が新宿に変更になって、めしを食って小津安二郎を見て待っていたら電話がきて打ち合わせが中止になった。そのまま夜まで「背中(仮)」の脚本を仕上げていた。

 女学生のオーディションで、女優さんを一名面接した。今回はあたる♪ちゃんをスカイプでつないでウェブカメラを通してオーディションに参加してもらった。
 オーディションの前にあたる♪ちゃんとスカイプをつないでカメラを設置して通信テストしていたら、トイレに霊の顔があるから盛り塩しろだの、南側が少し霊の通り道になっているから気をつけろだの、霊感占い師としての本領を発揮しはじめた。こういうのは例えば現実の世界でも専門家の目から見たらあちこちに菌が繁殖していたりノミやダニがいたり有害な薬品が使われていたりするのと同じで、気にしなければどうにかなってしまうものが、気になりだしたら気になるし、それで言われて排除したらそれはそれで環境がよくなったりと、そういうものだと思う。まぁ参考にしときましょう。
 やってきた女優さんは元グラビアアイドルの可愛い女の子。着いたとき既に制服を着てきてくれて、カメラテストがやりやすかったので有り難い。演技テストは、まだグラビアをやっていたときの習性が抜けないのか、終始グラビア風のキメの笑顔でなかなか役の核心に迫らず、煮え切らない。でも容姿のイメージには合っているので、一度ブチ壊したらよくなると思った。
 オーディションの後、またあたる♪ちゃんが女優さんに小さい頃に可愛がっていた子犬の霊がいるだの、おばあちゃんの霊がこう言ってるだの言い出して、女優さんが感極まって泣き出したりしていた。まぁついでにお役に立ってもらえたら幸いである。

2008年 12月 16日 (火)
 支払いが立て込んで朝からバタバタ。札束が空からふってこないかなあ。

★★★ 香港映画「カンフー・カルト・マスター 魔教教主」を見た。1993年。リー・リン・チェイ主演(この頃はまだジェット・リーじゃなかった)。原作は武侠小説の金字塔、金庸。
 途中で飽きたが、ヤボなことは言うまい。おもしろかった。
 この頃の香港映画はこういうドタバタ伝奇アクションの全盛期で、香港映画が一番元気だった頃の作品である。香港映画は70年代から80年くらいにかけてオーソドックスなカンフー映画が大流行した。それが83年の「プロジェクトA」あたりで一段落し、85年の「霊幻道士」あたりからこういった伝奇アクションがドババババッと作られはじめ、90年代前半くらいまで量産された。その後はチェン・カイコーやらチャン・イーモウやらウォン・カーウェイなどの格調高い映画が注目されだし、香港映画はちょっと精錬された雰囲気の作品がメインになっていったような気がする。俳優もレスリー・チャンやアンディ・ラウやトニー・レオンみたいな、カンフーをやらないイケメンたちが幅をきかせるようになった。俺にとっての愛すべき香港映画というのはやっぱりこの頃までの古臭いカンフー映画や伝奇アクションなのだが、集中的に見ていたわけではないので、見逃している作品がまだまだたくさんある。これはそんな中の良質の一作といえる。
 原作が金庸の大長編なので、ストーリーがゴチャゴチャしてついてゆけない。しかし逆に金庸原作だから仕方ないかと思える面もあり、とりあえずこの手の映画はアクションが楽しめればそれでいいんじゃないかと思う。

2008年 12月 17日 (水)
 前の晩、寝たら、なぜか一時間でパチッと目が覚めた。そのまま眠れなくなったので普通に起きて行動した。昼くらいに一度眠くなったが仕事があったので我慢したら、眠くなくなったのでそのまま夜まで仕事した。夜になって、激烈に眠くなり、暗くなってからはほとんどナチュラルハイ状態でずっとすごした。なんだか、俺の中で何かが起こっている。

2008年 12月 18日 (木)
 中途半端な外出予定がいくつかあったが、雨だったのも手伝って、すべて中止になったり中止にしたりで、一日中事務所で仕事と相成った。昼食を食って小津安二郎のDVDの続きを見ていたらいつの間にか眠ってしまい、気がついたら日付が変わろうとする時刻だった。ここ数日小津安二郎のDVDを見続けているが、必ず数十分見進めたら寝てしまう。映画はおもしろいし特に退屈しているわけではないのに、なんなんだろう。

2008年 12月 19日 (金)
 昨晩ちょっと居眠りしたら眠れなくなって、朝まで結局眠れず、そのまま一日の行動を開始した。午前中は銀座でちょっとした手伝いと新橋で集金に失敗した。昼過ぎに立食い蕎麦を食ったら死ぬほど胃が痛くなって、これはインフルエンザかと心配になった。答えは明日か数日後にわかるだろう。あと死ぬほど眠くなって、しばし机に顔を伏せて仕事の合間に眠った。夜はさっさと眠ればいいところだが、珍しくなんとなく仕事がしたい気分だったので仕事した。

2008年 12月 20日 (土)
 ギャオで日本映画「セックス・チェック 第二の性」という映画を見た。増村保造監督。まだ若かった頃の緒形拳が主演。
★★★★ 内容を何も知らずに見始めたら、緒形拳扮する女ったらしの陸上コーチが、ひとりの気性の激しい女を立派なアスリートに育て上げようと頑張る姿が描かれはじめた。なるほどこれはひとりのスポーツ選手の成長とそのコーチとの愛情を描いたスポ根ドラマなのかな、いやそれにしてはタイトルがおかしいな、と思いながら見進めてゆくと、中盤でいきなりタイトルにもある「セックス・チェック」なる問題がもちあがり、おかしな展開になってゆく。この時点でもう先の読めない展開にこの先どうなるのかと驚愕しながら見ていたら、最後のシーンで「そうか、そうなるのか!」とすべてが納得いった。なるほど、これは巧妙な形で女の幸せとは何かを描いた物語だったのだな。
 それまで先も読めず意図もわからなかった登場人物やストーリー展開などの要素が、最後にすべてひとつのテーマに沿って無駄なく配置されていたのだとわかり、増村保造の手腕に敬服する思いであった。映画はやっぱり予備知識なしで見るに限る。

2008年 12月 21日 (日)
 オムニバス自主映画「背中(仮)」だが、年に数話づつ脚本を書いて撮り進め、数年かけて完成させようと思っていたのだが、だんだん映画の全体像がとめどなく浮かんできて、楽しくなってきたので、このまま一気に最後まで完成させようかという気になってきた。
 とりあえずその勢いのままに、今週末は残りのエピソードの脚本執筆にあけくれ、新たにふたつのエピソードの脚本が完成した。書きなぐったのでまだまだ推敲は必要だが、内容は多少なりとも気に入っている。この調子で年末年始の休み中にすべての脚本を書き上げてしまいたいものだ。

 ギャオでアメリカ映画「ニュースの天才」を見た。プロデューサーがトム・クルーズであるという以外はストーリーも何も知らずに見た。
★★★ 最初はジャーナリズムの世界の裏舞台を描いた人間ドラマかと思ったら、途中からまたおかしな展開になってきて、後半はサイコホラーなみにぞぞっとした。ある種のサスペンス映画といっても過言ではない。というのも、主人公の奇行はほとんど異常者の域に達しているからだ。異常者という言葉には語弊があるかもしれないが、主人公は標準以上のコミュニケーション能力があり、周囲には普通に有能な人間として認知され、それでいて頭の中からは一般人が当たり前のように持っているモラルの一部がスッポリ抜け落ちている。その彼の異常な犯罪が明るみになるにつれ、それまで普通の人間として認識していた彼の行動すべてが少し常軌を逸した異質な色合いを帯びて思い出されてくる。この映画、見終わってまた最初から前半だけ見直すと、さらに怖いものがあった。
 内容はようするにスティーブン・グラスというジャーナリストによる記事捏造事件を映画いたもので、ノンフィクションとのこと。こんな事件が実際に起こったとは驚きだが、意外と悪いことって、あっけらかんに堂々と行うと、かえってバレなかったりする。逆に後ろめたさをかかえてコソコソやったりすると、すぐにボロが出たりするものだ。こんな大胆な悪事を誰にも気づかれずにこれだけの数くり返すことのできた主人公の心理は、やっぱり異常と言うしかない。
 映画の完成度としては、教室のシーンとか多少の小細工はあるが、だいたいはかなりストレートな作りで、もうちょっとひねれよと言いたくなるようなクサい演出がじれったくてある意味楽しく、普通におもしろかった。なかなかの拾い物だと思う。
 しかし映画はやっぱり予備知識なしで見るに限るな。

2008年 12月 22日 (月)
 夜長さんの忘年会で久しぶりに蒲田に。1時間くらい早く着いたので蒲田をぶらぶらした。蒲田も少し歩いてみるとなかなか妖しい街である。
 飲み会は一次会がモーモーパラダイスでしゃぶしゃぶ。二次会は同じビルの普通の居酒屋。
 俺は肉があまり好きではないのだが、食ったら食ったでうまいので、むしゃむしゃと食いまくってしまった。お陰で後でめちゃめちゃ気持ちが悪くなり、トイレでゲーゲー吐いた。肉を食い過ぎると決まって気持ち悪くなることはわかっていたのだが、食欲には逆らえぬ。ダメージは深く、二次会は何も食わずに、ノンアルコールの飲み物をずっとちびちびやっていた。
 終電前に帰った。

2008年 12月 23日 (火)
☆☆☆ 小津安二郎の「麥秋」を見た。
 見始めては眠り、また次の日に見始めては眠りをくり返し、何日かかけてやっと見終わった。居眠りしてしまったからといって、つまらなかったわけではない。この映画を見ている最中、飽きた瞬間は一度もなかった。ただ眠くなっただけだ。きっとこの雰囲気が心地よかったのかもしれない。
 それにしても原節子っていい背中してるなあ。日本映画史に残るミス・背中じゃなかろうか。

2008年 12月 24日 (水)
 クリント・イーストウッド監督、ケビン・コスナー主演のアメリカ映画「パーフェクト・ワールド」を見た。見た、といっても、あまりおもしろくなくて途中からところどころ早送りして見たので、見たとは言えないかもしれない。
☆★ 一番の原因はケビン・コスナーのやってる犯罪者の役が、どうも彼の上品なイケメン面に合わなくて、話しに感情移入できなかったせいだ。ケビン・コスナーが悪いわけではない。これはキャスティングの問題だ。ケビン・コスナーはちゃんと演技で役に近づける努力をしていた。しかしケビン・コスナーのやる役といったら品行方正で高潔な人物という印象が強すぎて、なんだか物語自体も作り物クサく思えてしょうがなかった。
 しかしクリント・イーストウッドの選ぶテーマってどこかゆったりとしたアウトローさに満ちていてすがすがしい。演出は静かなリアリティとでも言おうか。だんだん俳優ではなく、映画作家としてのクリント・イーストウッドがわかってきた気がする。

2008年 12月 25日 (木)
 午前中、元T社のO社長と打ち合わせ。
 無理な仕事の依頼をもちかけられ、その場で断った。

 夜、父上の会社でミーティング。その後、妹と合流して親子三人で飲み。

2008年 12月 26日 (金)
 渋谷。バイト。

 ギャオでアメリカ映画「コンタクト」を見た。
☆ 宇宙人とのコンタクトを描いた映画だが、ロバート・ゼメキス監督でジョディー・フォスター主演だから内容はちゃんとしたドラマだと思って見はじめた。そしたら途中の日本人が出てきたあたりから普通の奇想天外なSF映画っぽくなってきてテンションが落ちまくった。まぁ最初の方から脚本にその気配はあったが…。
 とにかくこの映画、SFにしては宗教と科学とか、なかなかちゃんとした渋いテーマを扱っているのに、脚本がどうも昔ながらの安易なSF映画のチープさを抜け出してないのだ。セリフも安っぽいし。
 宇宙人から宇宙船の設計図を送られるところとか「宇宙戦艦ヤマト」を思い出すし、その宇宙船がテロで爆破された直後に「実はニッポンの北海道にもう一個つくってたのです」なんて展開を安易と言わずしてなんだというのだ。ジョディー・フォスターの演技もどうも納得いかない。考えてみたら例えジョディー・フォスターのような名女優でも、このレベルのSF映画でリアリティのある演技を追求するのは難しいよな。
 キャラの中で唯一、反SF思想を突っ走っているジェームス・ウッズだけが良かったのも頷ける。

2008年 12月 27日 (土)
 夜、いきなりパソコンが調子悪くなり、ソフトをすべて落として再起動したら二度と立ち上がらなくなった。セーフモードでもCDでも立ち上がらない。
 そんな感じで、パソコンがいきなりぶっ壊れた。バックアップをとっていなかったので、ここ数週間のデータがほとんどパーになった。その中には制作中のホームページや「背中」の脚本の書き直したものやこの日記のアップしていない下書きも含まれていた。ハードディスクの中身だけでもいいから、なんとか抽出せねば。あれや、これや、もう一回作ったり書いたりするかと思うと、非常に気が滅入る。

 ちなみにこの日記が長期間ストップすることになった理由がこれである。

2008年 12月 28日 (日)
 朝起きて、もう一度壊れたiBookの起動ボタンを押してみた。壊れたと思っていたパソコンが、日をおいて何気ない顔で立ち上がるということはよくあることだ。
 しかし、iBookはビクともしなかった。悲しかった。

 とりあえず午前中、ソフマップに行って新しいパソコンを買ってきた。一日だってパソコンがないと仕事にならないし、例え後で壊れたパソコンが治ったとしても、一度こういうことになったパソコンは怖くて大事なデータを扱うメインの端末としては使い続けるわけにはいかない。
MacBook 買ったのは最新型のMacBook。メタリックなデザインが素晴らしく、性能に比べて値段(148,000円)もかなりコストパフォーマンスが高い(らしい)。パソコンが壊れたのは痛かったが、なんだかんだ言って新しいMacに心は踊っていた。
 古いパソコンのデータが拾えないので、いつになく設定に時間がかかりそうだ。正月休みはこれで潰れるな、きっと。

 夜はバイトの忘年会が参加者極少につき中止になった。

2008年 12月 29日 (月)
 「ゼロから自主映画をつくる」と「大縁会」の合同忘年会。
 午後、編集長がやってきて、一緒に現地に。直前に大縁会の方の主催者である愉快さんが風邪で来れないと連絡があり、俺ひとりでコミュニティふたつぶんの参加者をまとめなければならないかもしれないと焦ったが、なんとか大縁会の副管理人であるドラゴン監督に押し付けることができてことなきを得た。
 参加者は総勢15名くらい。師匠である宇井郎さんや、いつも「音楽で映画をつくる」コミュでお世話になっているコンノさんも参加してくれた。ゼロ映から初めて参加するかたも2名ほどいた。愉快さんとかチカちゃんとかABさんとかレギュラーが少ないし、ゼロ映との合同ということもあって、なんとなくいつもとメンバーの色合いが違う飲み会となった。よっていつもとちょっと違った楽しさがあった。
 23時半ごろおひらきとなり、その後、ドラゴン監督と宇井郎さんと編集長とゼロ映から急遽参加した酒癖の悪い兄ちゃんとの四人でゴールデン街のヨーヨーを襲撃。今日の女の子はクマちゃん。最初は楽しく飲んでいたが、酒癖の悪い兄ちゃんがあまりにも失礼なことばかりまくしたてるので、だんだんドラゴン監督や編集長が怒りだし、編集長と彼とが一触即発の喧嘩になった。あわてて俺が止めに入ってとりあえず事態は沈静化したが、ヨーヨーはクマちゃんに追い出された。そのまま解散して帰った。
 まぁ酒にはこういうトラブルはつきものだが、酒癖の悪いやつは本当に迷惑だよな。

2008年 12月 30日 (火)
 喧嘩して暴言を吐いて反省した。

 バイトの後、オーナーのティーさんと六本木の和民に飲みにいった。
 酒の勢いも手伝って将来のアレのことで話をして、ちょっと迷った。

2008年 12月 31日 (水)
 壊れたiBookの起動ボタンを何気なく押したら「ジャーン」と音がして無事に立ち上がった。狂喜乱舞して、急いでデータを外付けハードディスクにコピーした。
 助かった。これでここ数週間の作業が無駄にならなくてすんだ。

 大晦日だというのに集金の予定が入っていたのだが、電話したら来年にまわしてくれと言われた。おかげで早く実家に帰れた。
 実家に帰ると、妹1夫婦が来ていて、カニ鍋を食っていた。俺もカニ鍋をつついて、カニと野菜を交互に腹が膨れるまで食いまくった。

 家族と年越しそばを食い、あたる♪ちゃんとスカイプでチャットをしながら、年を越した。いつになくにぎやかな年越しとなった。
 こうして家族と年を越したのは何年ぶりだろう。
 てゆうか、ひとりじゃない年越しも久しぶりな気がする。

 夜、ケーブルでガンダム・ファーストが21時間ぶっ続けで全話一挙放送というのがやっていて、それをずっと見ながら眠くなるまですごした。ガルマ・ザビが戦死したあたりで少し寝たがすぐ目が覚め、その後グフが登場する直後くらいまで見て眠った。


戻る
wwwnikki ver 0.641(20020410) (c)AuSYSTEM 2002