人形殺人事件
  

――ギシ……ギシ……
 ベッドが軋む。
「んっ……くぅっ!」
 知らずに口から漏れる声。
 私は下から男に貫かれている。
「そうだ。もっと良い声で啼け。クックッ……薄汚れた小娘と思ったが、思わぬ拾い物だわい」
 男――醜く太った老貴族――は、私の胸を揉みしだきつついやらしい笑みを浮かべた。
――キリ、キリ、キリ……軋んだ音。
 私の身体の中から……
「ほれ、どうした? もっと動かぬか」
「あうっ!」
 一気に突き上げられた。
「ホホ、どうじゃ、たまらぬだろう」
 一瞬身体を硬直させた私を見、嘲う。
――キリ……
――チガウ
 私の中で、何かが囁いた。
――殺せ
――ころせ
――コロセ……
「ほれ! 休んでいる暇はないぞ!」
 男は私の身体を更に激しく突き上げる。
「ああっ、はぁっ! ……くぅン!」
「いくぞ、中に、出すぞ!」
「あ〜〜〜ッ!!」
 私の中に熱いものが溢れ、私と男は重なり合って頽れた。
「ふふ……どうじゃ? もう一度……」
 そう言いかけた男の首に、私の手がかかる。
「なっ!?」
――ごきり……
 老貴族の首は、脆くも私の手の中で折れた。
「……さようなら、束の間のご主人様……」
 私は服を纏うと、夜の闇に包まれた館を後にした。
 私の主であった人を求めて。
 自動人形(オートマタ)である私が、錆びて動けなくなるその日まで……