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11)思いがけない出来事

駐車場 箱崎が探し出した場所はとても二人が愛し合う場所と言うには程遠く、どこか卑猥な感じが伝わってくる駐車場の一画だった。
夕暮れの一歩手前の時間帯には人が来る様子もなく、
野晒しの車が数台あるだけだ。それに、既に仕事を終えたと思われる業務用の薄汚れた大型トラック2台が、大きな駐車場をやや狭く見せているだけだった。
 大阪郊外にあった箱崎の実家は、車で市内にも近かったが意外に田舎風情を残す静かな場所だった。
そんなところにある駐車場は、何の設備もなく区画らしいロープが砂利の地面を覗かせている程度の場所であり、大型トラックの陰は絶好の場所に思えた。

そんな場所に手を繋いで連れて行ってくれる箱崎の背中が愛おしくて、頬が緩むのを抑えきれない小野は口元に笑いを湛えたまま連れられて行った。
―――『前に回って箱崎の顔を覗いてみたら、どんなだろうか?』
きっと、真っ赤に茹で上がった頬をして、濡れた目をしているに違いないと、ほくそ笑んだ。

辛うじて積み上げられたブロック塀の横には、お誂え向きに、大きな栃ノ木があり、そして片方にはトラックが止まっていた。トラックの陰は思いのほか明るく、今から二人で揃って行くにはあまりに不釣り合いな場所に見えた。
 箱崎は後ろ手に小野と手を繋いで歩くだけでも、妙に気恥ずかしいのだが、そんなことより更に恥ずかしいことを今らするのかと思うと、下半身に熱が急速に帯びてゆくのがわかる。
それにしても、先ほどまでは苛々とした雰囲気を漂わせていた背後の小野からは、先程見られた焦りのような気配が消えていた。余裕が戻ったのだろうかと、思うのも束の間、トラックの陰に入った途端、ドンと勢い良く箱崎はブロック塀に押し付けられていた。

「……」
「ねぇ、どうする?」
―――『何だかなぁ…』
こうも早く自信を取り戻す小野にややあきれもした箱崎だったが、甘えた声で囁かれては、自分の行動が見透かされているような感じがしてしまい、やや乱暴に「判っているのに、声に出して確認させようとするところが、いやらしいんだよっ!」と、抑えぎみの声で言い放った。途端、小野がそれは愉快そうに笑った。
「言って欲しいなぁ〜」
「…って……クソッ」
悪態をつきながらも声を聞いて振り返ると、突然顎を固定されて不自然な体形のまま噛み付くようなキスが始まった。
「ちょ、っ、ま、まっ―――」
『待て』とまでは言わせてもらえなかった。

ねっとりと絡みつくような仕草で、厚ぼったい長い舌が『口を開けろ』と催促してくる。箱崎は心得たとばかりに口を開いて小野の舌を吸い上げた。小野の両手は箱崎の背後から弄るようにシャツの裾から差し入れた両手で箱崎の突起物を軽く摘み上げた途端、鼻から抜けるような声が聞こえた。
「…っう…ふっ…ん…」
ブロック塀に両手を着いて尻を突き出して揺する姿を小野は嬉しそうに笑い、箱崎の耳の穴の中に舌を差し入れてしゃぶった。
すると、箱崎もそれに答えるように身悶え切羽詰った声を上げた。

―――『昨日の今日なのに……箱崎さん、やっぱり若いですよ』
小野は自分のことをことのほか『中年扱い』する箱崎に前々から否定の言葉をかけていたが、何度も交わす会話に意固地になっているのか子供のように頬を膨らまして拗ねた態度をする箱崎を思い出していた。
指先に少し力を入れて乳首を摘み上げるとビクビクと身体が反応する箱崎が可愛かった。すると、息を殺すように喘いでいた箱崎がブロック塀に頬を寄せるようにして振り向きながら言った。
「もう、い、いから……」
「?!」
この言葉に小野は驚いた。
箱崎も最近やっと慣れてきたのか、戸惑いながらも積極的に小野を煽る。
今日は…煽りすぎだと思う小野だった。
―――『でも、ここで乗らなきゃ、ね…なんとかじゃないっ、と』

心得たタイミングに小野はポケットに忍ばせてあったモノを取り出して、箱崎に覆いかぶさりながら手のひらを差し出して見せた。
「準備万端。 …ホラ!」
と、言って小野は右手でズボンのポケットを弄り“薄紫色のパッケージに入ったコンドーム”を箱崎に自慢げに見せた。
「でも、1個しかないんだよ。だから使うのは、俺ね」
などと、のん気に喋る言葉とは裏腹に、直ぐにゴムを着けるべく器用にパッケージを破って装着した。
小野の周到さに呆れながらも、身体は気持ちよりも高ぶっていて更に熱を帯びつつあったので「早く!」と小さく言いながら身体を揺すった。小野は笑いながら自分のズボンのファスナーに手をかけ興奮の為やや大きくなったモノを素早く取り出して、更に扱いて硬さを増すように扱いてゴムを着けた。

小野は箱崎の性急さに驚きながらも、自分を求めるように身体を揺する行為に目を細めた。先程感じた志野木への嫉妬心にチラリと気を擡げながらも、温かい身体を抱いている自分を思うと優越感を覚えた。箱崎のモノをやや速さを増して扱き上げると、ブルりと震え背中を押し付けてきた。
 小野は着替えのことを思い、箱崎のズボンを脱がすことを考え実行した。その行為に驚いた箱崎だったが、それよりも他のことが気になるのか、さした抵抗も見せず、小野のなすがままズボンとパンツを脱ぎ、下半身を曝け出したまま、シャツを胸元までたくし上げた。

小野はその姿に興奮して、少々手荒な行動に出てしまいそうな欲望に駆られた。
ブロック塀に手を着かせて、尻を突き出した形の箱崎の身体は肌寒いのか、はたまたこの以後の行為の期待感からか少々震えているようにも見え、その形のいい尻の両丘に指を入れて押し広げると穴が現れて広がった。
昨日も使った穴がそこに現れ、物欲しげにヒクヒクを動いているように思えた。
小野は躊躇いもせず、物欲しげにヒクついた箱崎の穴に突っ込むと、箱崎の尻が一気に硬く締まった。
少々、強引な気もしたがあらがえない欲に些細なことに無視することに決め、大きく形を変えた小野自身を、やや乱暴に挿入し、突き上げ始めると期待に燃えていた箱崎の体が徐々に暖かく熱を帯びてくるようだった。

しかし、箱崎といえば、体の反応とは反比例するように脳の半分は冷静だった。ともすれば漏れそうになる声を必死で押し殺していたためだ。待ち望んでいた行為だったのだが、いざ始まってみると、見えてこなかった現実が急に見え出して、自分の今の状況が恐ろしくなるほど理解したのだ。誰もいない死角になった駐車場の隅で、男が二人、日の光がまだまだ高い時間に乳繰り合っているなんて箱崎の常識では到底考えられない現実だ。
しかし、後戻りをすることもできない。
それに体は正直なもので小野が与える刺激がほしくてたまらないのだ。
そんな考えで埋め尽くされている箱崎に覆いかぶさる小野は、前回よりも敏感に反応を見せる箱崎を訝しりながらも、滅多にないシチュエーションが嬉しくてたまらなかった。

箱崎の乳首を弄りながら、今度はゆっくりと腰を動かした。
すると箱崎のモノは大きき反り返り、固くなり我慢汁を流してきた。
そうなると箱崎の肉壁はいい具合に締める力が増してきて、こちらのモノを包み込みだした。
箱崎は絶頂が近いのかしきりに首を振り、自分の体を支えるよりも、口を押えて声を出すのを我慢しているようだった。
「…なんか、損している気分だ」
少々苛ついた感情が入ってしまった小野は箱崎をやや乱暴に押し上げると、自分の体を支えることが不安定な箱崎の尻が一気に締まり、勢いよく熱を吐き出して、正面のコンクリートブロックの壁へぶちまけた。箱崎の急な締め付けで危うく、もっていかれそうになった小野だったが何とか、その場をしのげた

 予想外の行為で驚きはあったものの、なんだか急に可笑しいという感情が芽生えて、小野は肩で息をしている箱崎の背中をひと撫ですると、更に自信を奥深く進めた。
今度は、ちょうどいい具合に締め付けてくる肉壁に小野は高揚し、箱崎の手を覆うように自分の手を重ね、耳たぶを甘噛みして上下に体を徐々に激しく揺さぶった。
箱崎のものはさらに大きくなっていったが、一瞬、又大きく膨れ上がったと思うと一気に熱を吐き出した。
箱崎の身体が、薄いコンドームのゴムを通して小野の熱を吐き出したことを知ると、二度目の大きなうねりがやってきて、カチカチになるほどそそりあがった箱崎のものは誰の手を借りるまでもなく、それ自身だけでたまった熱を吐き出してしまった。


                ***************************

「時間、たっちゃいましたね」
小野は助手席でシートを倒して休んでいる魅力的な箱崎を横目で見ながら言った。
箱崎は『ウーン』とも『あぁ』ともつかいない曖昧な返事で答えていたが、ゆっくりとした動作でやや皺になったシャツを伸ばす動作をしていた。

「まだ、時間ありますけど、どこへ行こうと思っていたんです?」
小野はそういえば『車の鍵を持っているか?』と言って誘い出されたことを思い出し、答えることも億劫そうな箱崎に尋ねてみた。箱崎はやおら、シートを戻すと「ちょっと、遅くなったけど行く?」と気怠そうな表情で小野を見た。
小野は生唾を飲み込んで「箱崎さん、その……」
「その……?」
「……いや、なんでもないです…」
「ヘンな小野」
「……」
流石に『どっかに時化こんで、さっきの続きしませんか? なんて言ったら殴られるかな?』とまだまだ余裕な小野はチラッと箱崎を盗み見た。箱崎は、少し考えを廻らせているようで窓の外を見ていたが、突然「やっぱり、行こう!」と、元気に返事を返され戸惑う小野をしり目に更に意外なことを口走った。

「『海遊館』だよ」
「……カイユウカン? ですか?」
「そう、“海遊館” ナビでルート検索したら行けるね?」打って変った箱崎が楽しそうに返事を返した。
「ええ、そりゃぁ……まぁ……でも、そこ、どこなんです? 挨拶回りじゃないですよね?」
「なんで、挨拶回りなんだ?」
「いや、そんな感じじゃないかと……」
「“海遊館”って知らない?」
「知らないですよ、お茶の会館とか?」
「そんな訳ないよ」
「はぁ」
どうも会話がかみ合っていないようで小野は頭を掻くようなしぐさをして、ナビに手をかけようとした時、箱崎の声が聞こえた。
「……デート、かな?」
「?!」
「そ、それらしいことしてないし……ほら、そのぅ……今回の旅行も、なんだかついでみたいだったじゃない? “水族館” だったら気を使うこともないかなぁ、なんて、いいんじゃないかって……」
驚いた目で見つめていた小野は、頬を染めて照れながら真摯に答える箱崎にくぎ付けだった。
小野は箱崎の言葉に動揺を隠せなかった。

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