憧れの女教師
〜両思いになる日を夢見て〜
M.M:作

■ プロローグ2

美しい声の正体は天使だった。
「どうして俺の名を?」
一番疑問に思ったことを聞いてみた。
「副担任ですからね。担当する生徒の顔くらい覚えないと。って言ってもまだカ行の子までしか覚えてないけどね。晃久君は苗字が秋元だからね。」
満面の笑みでそう言う先生は、やっぱり綺麗だった。
名前がア行で本当によかったと本気で思った。
「先生。今日はどうしたんですか?」
どんどんと質問する俺に先生は驚いている様子だった。
(やっぱりか…………キモイよな……俺。)
中学の時に同じような経験をした。
好きな子がいて、たまたま隣の席になったからって調子にのって質問攻めにしたことがあった。
その時に、その子に『なんなの? キモイわね!!』って言われた苦い思い出だ。
「ふふ。」
「え?」
何故か先生は笑っていた。
(そっか。キモイを通り越して笑えるんだ。きっと。)
「あら、ごめんなさい。大人しそうな顔だったから。以外にお喋りなのね。今日はね、晩御飯の材料を買いに来たの。」
「そ、そうなんですか。」
泣きそうだった。
優しい言葉を女性にかけてもらったことのない俺はどうしていいかわからなかった。
「ねぇ。晃久君は何しに来たの?」
「えっと、暇だったのでブラブラと………」
「彼女さんはいないの?」
「………………」
「いるよねぇ〜。晃久君モテそうだもん。」
「いえ、全然。」
「じゃあさ。一緒にカラオケでも行く?」
ドクン
俺の心臓は激しく脈打った。
「で、でも………」
「そっか。そうだよね。知り合って間もない生徒と教師がカラオケなんてね。ごめんなさい。いま大学3年なんだけど、つい友達感覚で……」
そういう先生の顔はどこか寂しそうだった。
「そ、そういうわけじゃ。」
「ありがと。やっぱり優しいね。見た目通りだ。私のことは恵美先生でいいわよ。先生だけだと、寂しいから。じゃあね。」
ニコッと微笑むと、先生は去って行った。
(馬鹿か俺は!! カラオケ行けよ!!)
俺は思いっきり後悔していた。
この時の俺は、先生の陥っていた状況を全く知らないでいた。
そしてのんきに、今日の出来事もまた『神様の悪戯』だなどと現実味のないことを思っていた。
この日の出来事が必然である事を知らずに………………

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