青い蹉跌
横尾茂明:作

■ エピローグ2

あぁぁぁ…バレてない…よかった…。

でも…心配、そのビデオ…私も見たい、確かめたいの…。

ヒロシって高校生、一回会っただけなのにわたしの特徴覚えてるなんて
女の子より男の子の方が…勘が鋭いの…。


夏休みもあと三日という午後…非通知の電話が鳴った
わたし…怖くて出られなかった…。

あの男達に呼び出される…あぁぁ……もうイヤ…あんなことされるの絶対イヤ!
夕方にも二度鳴ったが無視したの…。

次の朝…階下からお母さんが「由加! 電話よー」て声がした…
私…階段を降り、お母さんに誰から? って問う。

「名前を言わないの、何か馴れ馴れしく由加いるか…だって」
「あなた、変な人と付き合っていないわよね!」って恐い顔して私に受話器を渡した…。


「俺だ…テツだよ、携帯何度も鳴らしてんのにどうして出ないの!」

「ゴメンなさい…非通知だったから……」

「まっ、いいや…」
「用はこの前撮ったビデオがえらく評判でなー…」
「お前にも約束通り、お裾分けしようと思ってな」

「どうだ、明日にでもこっちに来れないか」
「それと兄貴…ちょっとヤバくてさー、もう東京にはいないんだよな」
「だから安心して来いや」

「イヤです! もう…お金なんていりません…だから二度と電話しないで!」
わたし…電話に噛みつくような声を出したの。

「分かった…分かったよー…しかし…お前、あのビデオの仕上がり…」
「見たいって言ってたよな、昨日DVD送っておいたから…まっ、鑑賞してよ」
「もう電話もしないし、連絡もしないから…安心しな! じゃぁな…」

電話は切れた…脚がガクガク震えてた…
もう終わった…終わったんだよね?。


私…いま郵便配達屋さん、待ってるの
蝉が門柱のところで鳴いている…茅蜩だろうか…。

もうすぐ秋になるのね
オートバイの音がする度に垣根に目をやるわたし…。

どんなビデオに仕上がってるんだろうと想う…。

でも…見たら焼き捨てよう…
出演の少女がたとえ私であっても…もうかまわない
友達にバレても仕方がないと思う、だって罰が当たったんだもん

明日から学校が始まる、普通の女の子に戻るの
好奇な心は…もう私の胸の中から消えてしまったから…。

終わり……


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