淫辱通学
木暮香瑠:作
■ 地下室の淫辱8
ビデオ映像を見ていた雄一が、有紗を床に転がし隣の部屋に行った。戻ってきた雄一の手には、鋏が握られていた。その鋏を有紗の乳首に当てる。
「ひいい……、なにする気なの? いやあああ……」
ヒヤリと冷たい刃先が、恐怖心を煽る。何をされるかと、有紗は悲鳴を上げた。
「やはり、中学生の頃のショートヘアの方がお前には似合ってるな!」
雄一は、有紗の肩まで伸びた髪を鷲掴みにし、鋏を入れる。
ジョキッ、ジョキッ……。
「いやあ、切らないで……。だめっ……」
バサッと髪の毛が床に落ちる。雄一の手で、有紗の髪の毛が次々に切られていった。
「いい絵が撮れてるぜ! あにき。こりゃ、高く売れるぜ!」
ビデオをチェックしている康次の声が聞こえる。
「だめえ! 人になんか見せないで! ううう……、ううっ……」
髪の毛を切られ泣きじゃくっていた有紗は、二人に訴えた。
「心配しなくていい! 素人には売らなねえ。信用できる会員だけにしか売らねえから……」
雄一は冷たく言った。
康次は、学生鞄から有紗の携帯を取り出し、番号をチェックした。
「俺たちの呼ばれたら、いつでも来るんだぞ! 携帯を変えたり、繋がらなくしたらどうなるか判ってるな! このビデオを他人には見られたくないだろう」
そう言いながら、自分の携帯に有紗の電話番号をメモリーした。
「いいか、このことを他の人喋ったりしても、このビデオを町中にばら撒いてやるからな!」
有紗の返事など無視し、雄一はドスの利いた声でそう言うと、服と鞄を有紗の目の前に投げ渡した。
地下室から開放された有紗は、虚ろな瞳で町をとぼとぼと歩いていた。外はとっくに日が暮れ、ネオンが輝いている。すでに時刻は、8時を廻っていた。繁華街の向こうに駅が見える。その駅は、有紗が住む町の隣町の駅だ。
駅に向かう有紗が、ショーウィンドウに目を向ける。ギザギザに短く切られた髪の自分の顔が映っている。目線を少し上にあげると、『カットサロン』の文字が見えた。有紗は、その店のドアを押した。
店内は空いており、すぐに店員が有紗を席に案内する。有紗は何も言わず椅子に座った。
「どうしますか?」
店員が訪ねるが、有紗は何も言わない。黙って鏡を見つめている。瞳がどんどん潤んでいき、涙がひとしずく頬を伝った。
有紗の涙を見て、店員は少し戸惑いの表情を見せた。
「自分で切ったの? 失恋でもしたのかな?」
ギザギザに切られた髪が気になるのか、店員が有紗に訊ねた。
「ううっ、ううう……」
押し殺した泣き声が有紗の口から零れる。大粒の涙が両方の頬を濡らした。
「ごめんなさい。嫌なこと聞いてしまったわね。全部忘れましょうね、嫌な思いでなんて。……髪、揃えますね……」
店員は、それっきり口を閉じた。失恋を忘れる為、髪を切ったのだと思い込み、それ以上は何も訊かなかった。店員は、黙ったまま有紗の髪を手際よくカットしていった。
店員の手によって、ギザギザだった有紗の髪の毛が綺麗に切り揃えられていく。涙に潤んだ有紗の瞳に、ショートヘアの顔が滲んで映る。まるで、中学時代の空手を習っていた頃のような顔が……。キリッとしているが、可愛らしさと汚れを知らない天使のような少女の顔が、鏡の中にあった。
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