淫辱通学
木暮香瑠:作

■ 新たなご主人様5

 五時間目の授業が終わり、休憩時間に入っていた。
「さっきのサイレンって、パトカーだよね? なんだったんだろうね?」
 先ほど聞こえてきたパトカーのサイレンの音がクラスメートの間で話題になっていた。そんな会話を引き裂くように、教師が慌てて教室に入って来た。休憩時間だというのに、厳しい顔が只事でないことを表している。
「みっ、みなさん、静かにしてください! 静かに!! 六時間目は自習にします。それから……、皆さん、教室から出ないように……」
「えぇ? 外に出てる人いますよ」
 生徒たちはみんな、何があったのだろうとざわついている。
「戻ってきたら伝えてください。教室から出ないように……。いいですね!」
 教師は、そう言い終ると急いで小走りに職員棟に帰っていった。

「みんな! 聞いてる? 三年の美由紀さんが理事長にレイプされたって……」
「えっ? 本当? うそぅ……」
 教室に戻ってきた生徒の言葉に、教室中が喧騒に包まれた。
「あの美由紀先輩が……? どこで犯られたの?」
「理事長室だって……」
 ほとんどの生徒が、噂を聞きたくて戻ってきた生徒の周りに集まっていた。

 有紗は、三年生の教室に走っていた。
(ど、どうして? どうして美由紀さんが理事長に……?)
 美由紀のクラスに着くまで、有紗の頭の中は疑問で渦巻いていた。有紗は、教室のドアを勢いよく開けた。
「み、美由紀先輩!! 美由紀先輩、居ますか!?」
 噂は、あっという間に学園中に広まっていた。三年生のクラスでも、美由紀が理事長にレイプされた噂で渦巻いていた。
「美由紀は、昼過ぎから誰も見てないの。あなたも噂、知ってるでしょ?」
 有紗に気付いた美由紀のクラスメートが教えてくれる。
「失礼しました」
 有紗は、一礼するとまた走り出した。

 有紗は、権堂兄弟のアジトがあるビルの前に立っていた。どうやってここまで来たか、有紗自身覚えていない。ビルの入り口では、警官が慌しく出入りし黄色い立ち入り禁止のテープが張られている。そして、その周りを取り囲むように、野次馬が取り巻いていた。
「何か事件か?」
「少女売春だってさ」
「犯人は捕まったのか?」
「犯人は逃げたらしい」
 野次馬たちの噂話が、有紗の耳に届く。しかし、どの噂も想像の域を出ていなものばかりだ。

 有紗は、野次馬の喧騒を後にしとぼとぼと歩いた。知らず知らず脚は、山手の方に向いていた。
 しばらく歩くと美由紀の家の前まで来ていた。美由紀を心配する気遣いが、有紗の脚を美由紀の家に向かわせたのだ。見上げる視線の先に、美由紀の部屋がある。有紗は、虚ろな視線を投げかけながら、佇んでいた。

 突然、背後から有紗に声が掛けられた。
「有紗、やっぱり来たわね。美由紀先輩、事情聴取も終わって帰ってきてるわよ」
 声を掛けてきたのは、笑顔の法子だった。
「さあ、行きましょ? 先輩のところへ……」
 有紗は、法子に後押しされ玄関の前に立った。法子は、合鍵で鍵を開け家の中に入っていく。有沙も後に続く。
 両親が演奏旅行で留守の屋敷の中は、シンと静まり返っていた。事件のショックで混乱している有紗は、不思議に思うことなく法子と共に美由紀の部屋に向かう階段を上っていった。

「美由紀先輩、大丈夫だった? 事情聴取、辛くなかった?」
 法子は、美由紀に飛び付き抱きついた。有沙の目の前で二人は、キスを始めた。法子は、有紗の視線を恥じることなく、熱烈なキスをしている。顔を左右に振りながら柔らかい唇を美由紀の唇に押し付けている。美由紀も、法子の抱擁を拒むことはなかった。

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