新・青い目覚め
横尾茂明:作

■ プロローグ3

(何でもします・・・)
 孝夫は少女の言った意味をどう解釈すべきか戸惑った。
(この少女は私になにをしてくれると言うのだ・・女の言葉・・まさか?)

「何でもしますって・・どういう意味なの?」

「・・・・・」
「それは・・おじさんが・・絵美にしたいこと・・」
「ひどいことされても我慢しますからそれでどうか許して下さい・・」

「・・・・」 (ひどいこと・・・)

「ひどいことって例えばどんなことを言ってるの?」

「この本に書いてあること・・」
 少女は机の上の本を見つめた、そして青い顔でブルっと震えた。

(この少女は一体・・)

 孝夫は少女の環境を思った・・こんなに清楚で理知的な少女に何が有ったというのか・・孝夫はこの少女の心の奥を痛烈に知りたくなった・・それは美しすぎる少女だからかもしれないが・・。
 毎日の本をながめるだけの単調な生活に・・少しだけ心をときめかすような出来事が欲しかったのかもしれない。

「絵美ちゃんと言ったね・・君はこの本の内容を知ってて言ってるの?」

「・・・・・」

「あまりよくは・・わかりません・・この間SF読本と間違えて中を少し見てしまったの・・女の子が縛られて・・何かされてて・・私・・恥ずかしくて・・胸が苦しくなって、それからは毎日・・この本の事が気になって・・」

「私・・何故こんな事をしてしまったの・・今でもわかんない・・気が付いたら本を持って走ってたの・・」

「おじさん本当にゴメンナサイ・・私どうかしてたんです・・許して下さい」
「こんな事・・お母さんが知ったら・・私・・もう生きて行けません」

 少女は胸のつかえを吐き出すように吐露すると・・悲しそうに泣き始めた。

 孝夫は何となく感じた・・この少女はマゾではないかと・・小説の世界だけの事と今までは思っていたが・・現実を目の当たりにして寒心してしまった。
 孝夫はSMに興味は持てなかった。排尿排便を強要するまでエスカレートすることには興醒めどころか嫌悪感さえ孝夫には有ったのだ。

(この少女・・万引きの罪を許して貰えるなら・・この本に書いてあることを行使してもよいと言う・・肉体と羞恥を代償に許しを乞うている)

 孝夫は思った。この美しい少女の肉体を現実として弄ぶことがもし出来たなら・・中年の醜いこの俺がこの白い柔肉を蹂躙出来たなら・・それこそSMとは言えないだろうか・・と感じた。

 いま孝夫は自分の部屋に小鳥が舞い込んだような気がした・・もし窓を閉めたなら・・いや・・締める勇気が有ったら・・。

 今のこの清楚な少女は、自分の犯した罪の大きさに耐えきれないでいる。俺がもしこの罪を俺と少女だけの秘め事にすると約したなら・・。

 孝夫はここまで考えた時・・肌に粟が立っているのを感じた・・。

 孝夫は今日に至るまでがむしゃらに働き・・12年間女性の肌にも触れていない・・孝夫は興奮のあまり腹が大きく脈打った・・口が渇き葛藤の渦の中、立っていることさえ辛く感じるほど興奮した。

 それから20分ほどの沈黙の時間が流れた・・それは淫靡な葛藤の流れとも言えた。

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