ボクとアイツと俺
木暮香瑠:作

■ 幼馴染から恋人へ4

「お前たち、付き合って永いよな。もうやったか?」
 宗佑は、圭一の横で二人の会話に面白くなさそうに顔を背けてる志穂に会話を振った。
 圭一と志穂は、一瞬顔を見合わせ、そして同時に真っ赤になった顔を俯かせた。志穂はそういう手前までいき、自分が原因で最後まで出来なかったことを思い出し恥ずかしくて……、圭一は、裸の志穂の姿を思い出し、何も判らず突き進み自分の未熟さが志穂を恐がらせて最後まで出来なかったことを恥ずかしがり……。
「へえーーー、そうなんだ」
 宗佑の顔が一瞬曇る。二人の態度を見て、二人がもう初体験を済ませている関係だと思った。
「どうだった? 圭一のは……」
 宗佑は思いっきりの作り笑顔で冗談っぽく志穂をからかう。
「なっ、なにのこと言ってんだ? バカ佑」
 真っ赤の顔の志穂は、今にも殴りかかりそうな剣幕で知らないとばかりに口を尖らせる。
「おーーー恐。少しは女らしく喋れよ。そんな男女じゃ、圭一に嫌われるぞ」
「圭一はお前と違うんだ。いつでも僕に優しいもん、ふん!」
 宗佑は呆れた顔を作り、言葉を続けた。
「圭一のに満足できなかったら、いつでも俺のところへ来いよ。俺のはでかいぜ。満足させてやるぜ。志穂ならいつでも歓迎するぜ」
「バカ佑、本当に怒るぞ。ボクと圭一は絶対別れないから!!」
「そうですね。さあ、行った行った」
 宗佑は二人を追い払うように手を振った。
「じゃあな、宗佑」
 宗佑と志穂の二人の会話を微笑ましく見ていた圭一。宗佑の口の悪さと悪戯はいつものことで、悪気があるわけではないと知っている。圭一は志穂の手をとって歩き出す。
「決勝で待ってるからな。早々と負けるんじゃねえぞ」
「ああ、お前のところこそ油断するんじゃねえぞ」
 宗佑のエールにそう返し、志穂を連れた圭一は歩いて行った。

 二人と別れた後、宗佑は夕暮れの街を二人並んで去っていく圭一と志穂の後姿を見詰めていた。
「もう済ませたのか……」
 なぜか落ち込んでいた。
「二人が付き合っていたのは知ってるけど……、二人とも幼馴染だから祝福してやらないとな……」
 そう自分に言い聞かせる宗佑だった。

「よっ! 宗佑」
 宗佑に声を掛けてきたのは西工の不良グループの佐々木だ。どこそこの女子高生をレイプしたとか、酒を飲んで繁華街で大喧嘩をしたとか、何かと悪い噂ばかりのグループだ。
 宗佑に何かとちょっかいを出してくるものの、サッカー部を全国大会に送る立役者になるかもしれない宗佑に直接手出しをしてくることはない。サッカー部の連中ばかりが注目を浴びるのは気に入らないが、西工全体を敵に回す気はない。相手が手を出してくればいつでも相手になるつもりだが、様子見の状態が続いている。宗佑自身、ケンカには自身があり負ける気はしないが、それで全国大会をふいにする気はない。お互いが微妙な関係で対立していた。

「ん? あれ、東高サッカー部の小林じゃね? 隣の女は中田志穂じゃん」
 佐々木の取り巻きの棚田が、宗佑の視線の先のカップルを見つけ言う。
「あの隠れ巨乳って有名な?」
「そう、脱いだらすごいって噂だぜ、アイツ」
 同じくグループの大下と楠木が、両手を胸の前で大きくおっぱいの形を作りながら作りながらニヤニヤと卑猥な顔で笑いあっている。
「お前知り合いなの? ああ、中学は同じだよな、あの二人と……」
 佐々木は、圭一と志穂の後姿を見詰めながら言う。
「ああ、でもお前等には関係ないだろ?」
「そうだな。お前と関係なくてもいい女だな、あの志穂って女……。みんな行くぞ」
 佐々木達はそう言い残して裏通りの繁華街の方に歩いて行った。

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