僕の転機
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■ 第9章 新たな日常12
昌聖は、ソファーから立ち上がると、何も言わずに扉まで歩いて行く。
鍵を外し、扉を開け外に出る。
扉を閉める寸前に
「反省しろ。罰を受けたければ…知らせろ。」
そう言って、扉を閉めた。
泣き崩れる美咲。
オロオロと美咲に駆け寄り、掛ける言葉を探す佐知子。
佐知子の目にも、大粒の涙が溢れていた。
美咲が独り言のように、昌聖へ対する謝罪を呟いている姿に
(私のせいだ…。私のせいだ…。何とかしなきゃ…。何でもします許して上げて下さい…。昌聖様!)
心の中で、叫ぶ佐知子。
そんな、佐知子の思いの中、美咲の涙は、嗚咽に変わっていた。
そして、美咲の嗚咽は、徐々に納まっていく。
(反省しなさいと言って下さった…。罰を受ける覚悟をしろと…。まだ、私は奴隷で居て良いんだ…。まだ…)
美咲の心は、徐々に平静を取り戻し、反省する事に集中しだした。
そんな変化に、佐知子が声を掛ける決心が付いた。
「美咲様、ご免なさい…。私のせいで…、私のせいでこんな事に…。せっかく合格を貰って、美咲様と仲良くするようにと、言われたばかりなのに…」
佐知子が、美咲に詫びる。
その時、美咲は佐知子の言葉に反応した。
すーっと上体を持ち上げると、扉の方を見詰めながら
「それは何時の事?」
佐知子に問い掛ける。
佐知子は、的を得ず[はぁ]と言う顔をした。
「私と仲良くするように、言われたのは…何時?」
美咲の呟くような言葉に
「えっ?えっと、合格を告げられた、直ぐ後です…」
佐知子の答えに、美咲はゆっくり佐知子に振り返りながら
「その後、昌聖様は何をされたの?」
さらに、質問を加える。
「はい、直ぐに携帯をお出しに成って、電話をされました…。美咲様に…」
佐知子の答えを聞いて、美咲はスッと立ち上がった。
突然の行動に、佐知子が驚く。
「あっ、あのう…どうされました…」
佐知子の質問に、美咲が答えた。
「反省するの。そして、死んだ方がましだと思うぐらいの、罰を受ける覚悟をするのよ…。それが、昌聖様の意志だから」
そう言うと、スタスタと扉に向かって歩いて行き、扉を開ける前に、佐知子に声を掛ける。
「佐知子も、歩美も、いつまでも主人の居ない場所でそんな格好を晒すのは止めなさい。そして佐知子は、反省しなさい。それが、昌聖様が仰った事でしょ」
美咲は、2人に伝え部屋を出て行く。
扉を閉める前に、[外で待ってるから]と告げた。
佐知子と歩美は、美咲の言葉に急いで服を着て、身なりを整える。
服を着ている間中、いや美咲が怒られている間中、歩美は昌聖の言葉の真意を理解し、その対象である美咲に嫉妬と羨望を感じた。
(昌聖さんの言葉は…。美咲さんに対する信頼で満ちていた…。言葉の裏から…、あの怒りは、佐知子に対する躾だと感じるわ…)
暗い目をしながら、歩美はブラウスを着てスカートを履く。
(昌聖さんは…、変わった…。美咲さんも佐知子さんもそうだけど…。一番変わったのは…昌聖さんだわ…。怖いぐらいに…)
歩美は、冷静に分析する。
まるで、敵の力量を計り、自分との差を確認するように。
生徒会室を出た、美咲の元にメールが届く。
美咲は直ぐに携帯を開くと、メールを確認する。
<美咲驚いたか?これからも、美咲には理不尽に怒る事が一杯起きる。それは、美咲が僕に一番近い存在だからだ。これからは、他の奴隷をコントロールするために、お前を使う。覚悟しろ!それと、何が有っても、誰が離れて行っても、お前だけは僕の傍に居ろ。此の命令は、終世変わらない>
昌聖のメールを読んで、美咲は涙が込み上げて来た。
(何が有っても…誰が離れても…美咲は、昌聖様の持ち物です…心の底から、お慕いしております…)
携帯電話を胸に抱き締め、フルフルと震える。
扉を開けた佐知子は、急いで外に出ようとしたが、目の前に背を向けて、立つ美咲に驚く。
「お姉…美咲さんどうしたの?」
危うく出そうになった言葉を、飲み込み学校用の話し方に変える。
美咲は、振り返り佐知子に優等生の笑顔で、
「何でもないは、佐知子さん歩美さん、行きましょう」
こちらも、学校用の台詞で、答える。
そして日常が始まる。
3日前とは、違う日常。
主に仕え従う、奴隷達の新たな日常が。
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