千佳
木漏れ日:作

■ 35

「これ、持っていて…。」
大型の封筒を手渡す。
「何ですか?」
「IDカードと千佳さんのデータベースよ。
パソコンで見て! あ、それから明日は全裸登校日だから宜しくね!」

担任は足早に立ち去った。
私は慌てて、
「あの…。」
と呼び止めようとした。
「千佳! バス出ちゃうよ!」
楓さんが私の腕を引っ張った。

私と楓さんが乗るとバスはすぐに発車した。
私は小声で楓さんに尋ねた。
「楓さんあの全裸登校日って…。」
「ああ、あれ、そうよ素っ裸で登校するのよ」
「授業も裸で受けるんですか?」
「もちろんそうよ…何も着ちゃいけない日だもの」

「ええっ…。」
私は驚いてそう言った。
「詳しくはパソコンで見てよ!」
「でも私パソコンなんて持ってないし…。」
「学校から届いている筈よ…。」
「そうなんですか…。」

そんな話をしているうちに、
「ほら! 降りる場所に着いたわよ!」
窓の外を見ると門の前にしのぶさんが立っているのが見えた。
「じゃ明日…。」
楓さんの声に送られバスを降りた。

「お帰りなさい…。」
「ちょっと時間ある?」
私はしのぶさんにそう聞いた。
「ええ、ありますよ…。」
しのぶさんは微笑みながらそう答えてた。
二人で私部屋に行った。


2人で畳に座った。
「どうでした? 学校は?」
しのぶさんが聞いた。
「すごい所ね…。」
「でも嫌じゃありませんでしょ?」
「まあ…。」

「千佳さん…。」
「え?」
「卒業生なんです、あそこの…。」
「ええ! 嘘!」
「嘘じゃありません…これ分かります?」
しのぶさんは袂からカードを一枚取り出した。

それは私のカードと全く同じものだった。
「千佳さんの担任〇〇っていいません?」
「なんで知ってるの?」
しのぶさんが言った。
「あの人がお話した康子ちゃんです…。」
「ええっ!」

「千佳さん…。」
「はい…。」
「あなたは選ばれた人なんです…。」
「どう言う事?」
「今に分かります…。」
そう言って微笑んだ。

「おやつお持ちします、着替えてて下さいね。」
しのぶさんは部屋を出て行った。
私は着替えに隣の部屋へ行った。
真新しい机とパソコンが置いてあった。
私は着替えるとパソコンの前に座った。
スイッチを入れた。

暫くすると、
>IDとパスワードを入れて下さい<
と表示が出た。
IDとパスワードを入力する。
>IDカードをお入れ下さい<
カードを挿入した。

>千佳さんようこそ<
続いて私の顔が表示された。
クリックすると全身の画像が表示された。
全裸の表面画像だ。
あとは普通の生徒手帳と同じだった。
続いてもう一枚のDVDを挿入した。

こちらは私のデーターが記録されていた。
体のサイズから成績まである。
次の学校行事には文化祭、体育祭臨海学校など。
その他で、全裸登校日、採便日、など。
採便日とは何か?

説明はない。
「お待たせしました…。」
そこへ、しのぶさんが入ってきた。
トレイを持っている。
トレイの上に紅茶とケーキが載っている。
「ねぇ、しのぶさん…。」

「はい?」
「このさいべんびってなに?」
「検便の事です…。」
しのぶさんは言いながらちょっとだけ恥ずかしそうだった。
「恥ずかしいの?」

私が聞くと、
「ええ、まぁ…。」
しのぶさんは曖昧に答える。
「どういう事? 教えて!」
「それは…。」
しのぶさんは言葉を濁した。

「なんで? おしえてくれないの?」
「教えてはいけない決まりなんです…。」
「決まりって卒業した後も続くの?」
「そうです!」
しのぶさんの表情は真剣だった。
私は少し怖くなった。

「学園の事も一生黙ってて下さい!」
「私には話してくれたじゃない?」
「千佳さんが学園生だからです…。」
「そうなんだ…。」
「そうです!」

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