千佳
木漏れ日:作

■ 46

「千佳です…宜しく…。」
「こちらこそ…。」
部屋は四人部屋。
皆若い。
私と同じ歳位の子もいる。
「千佳さん窓際ね…。」

高橋さんが言う。
荷物を片付けていると、お昼が運ばれてきた。
食べながらおしゃべりする。
私の隣は唯さん。
足に包帯をしている。
歳は20位。

「千佳ちゃん脱毛?」
唯さんが聞いてきた。
「はい…でも不安です…。」
「心配ないわよ…。」
「そうですか?」
「ここの先生うまいから…。」

私は少し安心した。
「唯さんはどうしてここに?」
「バイクで転んで足折ったの…。」
「大変ですね…。・」
「まあね…。」
食事が終わった。

トイレに行きたくなった。
「あの、トイレは?」
「ないわ…。」
「ええ? じゃどうすればいいんですか?」
「ここでするの!」
「ええ!」

「ポータブルトイレですか?」
「違うわよ…。」
「じゃどうするんですか?」
「これよ…。」
部屋の隅からバケツを持ってきた。
「ええ! これですか?」

「そうよ! ちょっと舞!」
「ハイ…。」
女の子が私の前に来た。
私と同じ位の子だ。
丸裸だ。
「舞、あんたおしっこ出る?」
「少しなら…。」

「してみて…。」
「ハイ…。」
舞と呼ばれた子はバケツに跨った。
バケツは透明だった。
すぐにおしっこが出た。
バケツの底に黄色い液が少し溜まった。

女の子は腰を浮かしバケツから離れた。
「さああんたの番よ!」
「できません…。」
「じゃあ利尿剤飲む?」
「いえ、いいです…。」
「じゃ、やって!」

私はバケツに跨った。
3人が寄ってきた。
我慢しようとした。
シャー……。
勢い良くおしっこが出てしまった。
涙が出てきた。

「あら? 泣いちゃった?」
唯さんが顔を覗き込んだ。
「ねぇ千佳ちゃん、買い物行かない?」
舞ちゃんが声を掛けてきた。
「うん…。」
「カード持って行くのよ…。」

2人で部屋を出た。
エレベーターに乗る。
売店は地下一階らしい。
舞ちゃんがB1を押した。
サンダルのようなものを履いている。
後は2人とも素っ裸だ。

「ねぇ…。」
「ん?」
「舞ちゃんは幾つ?」
「16だよ…。」
「やだ…ごめんなさい…。」
「いいよ…。」

舞ちゃんは幼く見える。
体も私と変わらない。
「もう一つ聞いていい?」
「いいよ…。」
「何処悪いの?」
「私、生理が不順なの…。」

「そうなんだ…変な事聞いてごめん…。」
「いいよ千佳ちゃん脱毛でしょ…。」
「うん…。」
エレベーターが止まった。
降りてすぐの所に売店があった。
売店は混んでいた。

レジで多くの人が並んでいた。
見ると現金で払う人は居ない。
皆カードだ。
私はタオルとお茶とティッシュを買った。
舞ちゃんはノートを買った。
「千佳ちゃん…。」

「はい…。」
「屋上行ってみる?」
「うん…。」
私達はレジを済ませてエレベーターに乗る。
着いた所は日差しがふりそそいで明るい。
ベンチがある。

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