危ないエステ
神野 舞:作

■ 第四話

 私のエステは最終段階に入った。ほんのりと桜色に染まった全身に媚薬クリームをゆっくり塗りこむ。すでに塗られているクリームとマッサージで血行の良くなった身体は、汗腺を開き媚薬効果を十二分に吸い込むはずだ。何重にも塗りこまれた媚薬クリームで、美鈴は恥ずかしくも、荒い息になる。
「はぁ〜、はぁ〜、はぁ〜……」
 瞼が腫れ、小鼻が膨れ、下唇が膨れて垂れ下がった顔。二重顎が醜さに輪をかけた。親指頭大の乳首、小指頭大のクリは仕込まれた媚薬シリコンで永遠に勃起し続ける。下着がかすっただけで、歩くだけで欲情する女。ブラで隠しきれない大きな乳首、揺れるたびにブラジャーと擦れ、ジンジンとじびれるような刺激に酔わされるはずだ。そして、つるつるの恥丘。縦裂から覗く勃起したクリも隠すことが出来ない。
(裕也の前に出て行ける? 醜い姿態は醜い心を呼ぶものよ)

 ポケットを探りダイヤの指輪を弄る私。
(フフっ、これはもう要らないわね)
 きめ細かな白肌に常にしこった大きな乳首は男性を悩まし続けるかしら。
 いいえ、醜い顔の美鈴にまともに声を掛ける男性がいるはずないわ。
 いつもあそこを濡らしている美鈴。街を歩けば、きっと太腿を伝った愛蜜が道路を濡らすでしょう。一日何枚ショーツを着替えることになるのかしら? それとも、オムツを履いて外出する? 恥ずかしいわね、24歳の若さでオムツ無しではいられないなんて……。
 声を掛けられても遊ばれるだけ。遊んでもらえたら喜ぶべきよ。ヘアの無い恥丘を、縦裂から飛び出したクリを晒すことになるけれど。

 変態美鈴。発情美鈴。媚薬の効果が消えたあなたはどうなるのかしら? 媚薬の効果が消えても、乳首もクリも大きなまま……。何時間も、何日間も刺激を与え続けられたあなたの乳首もクリも、刺激無しではいられなくなっているはず……。刺激のない生活なんて我慢できないはず。自ら弄り続けるでしょう。貴方は自慰を止めることはできないのよ。弄れば弄るほど活性化する性感帯。男が欲しくて堪らない体。それなのに化け物のように醜い顔。

 私は、美鈴の肌に手を這わせていく。掌に吸い付くようなすべすべの肌。贅肉のないお腹、絞り込まれた腰、そして、男たちを魅了する胸、お尻……。こんなに素敵な身体なのに、嫌らしく飛び出した親指大の乳首、股間の縦裂を割り開き覗く卑猥に勃起したクリ。
 私は乳房を鷲掴みし、乳首を転がしていく。強く、弱く、強く、弱く、強く、強く。乳首を摘み上げ、敏感な頭を爪で引っ掻く。
「あんっ、ぁぁん…………っん〜〜」
 美鈴の声が艶かしくなる。腰をうねらせ、胸を揺する。絶頂が近いのだ。いままで経験したことの無い波が押し寄せる。私はクリを摘んで左右に揺らした。爪を当て強く引っ張った。
「あんっ、ああああ〜〜、あああああああっ」
 ここがエステサロンであるのに、耐え切れない快感。今日始めて会った私に、恥ずかしげもなく喘ぎ声を聞かせる美鈴、恍惚の表情を晒す美鈴。媚薬クリームは皮膚の奥深くまで染み込んでいる。

 媚薬シリコンで勃起したクリを爪で押し潰しながら、最終説明をする私。
「美鈴様、プチ整形は無事すみました。お綺麗になっていますよ。これから鏡を見ていただきますが、もし、お気に召さなければ、整形しなおすことは可能です。お気にいられましたら、これで満足ですと、おっしゃってください」
「ああ〜〜、ああ〜〜〜〜〜〜、ああっ〜〜〜〜」
 美鈴に大津波が来る瞬間、私は愛撫する手を止めた。全身痙攣する美鈴。
「サロンをお出になってからの苦情は一切受け付けませんから、そのつもりで。ご来店の時に記入いただいたカルテにも、そう書いてございます。美鈴様からはそれを承諾したサインをいただいたことになっています」
「ああんっ〜、ああっ、んん〜」
 逝く寸前で断ち切られた愛撫を求める虚ろな眼差し。
 腰を弾ませ、狂ったように首を振る美鈴。
 拘束したベルトを外す私の手にすがり付く美鈴の美しい太ももは淫液で濡れ光っている。
「本日のエステは全て無料です。次回からは会員登録が必要になり、入会金は2百万円……あ……詳しいパンフレットを差し上げますね」

 診察台を降りた美鈴に鏡を見せる段階に入った。美鈴は新しい自分の姿にどう反応するだろう。私を裕也の元彼女と知らず信頼した美鈴。
「これで、満足です」
 美鈴は俯いたまま瞳を閉じていた。美鈴は鏡を見ないまま、衣服をまといながら店から飛び出した。悶え喘ぐ姿を晒してしまった恥辱と、燃え上がった官能の炎が消えることを恐れているのだろう。官能の炎が消える前に、自分で燃やし尽くしたい。そんな感情が美鈴を急かしているに違いない。
(フフっ、愛撫を止められたのが耐えられなかったのね。自慰に耽るのに家までもつかしら? それとも途中のおトイレで?)

 サロンで悶えた恥ずかしさ。上気した顔を俯かせ、小走りに家路を急ぐ美鈴。少し腰を引いた後姿、胸を突き出すような情けない姿。早速、肥大した乳首とクリの洗礼を受けてるのね。
 そんな格好で地下鉄に乗ったらどうなるのかしら? お尻を突き出し、もぞもぞと振って……、乳首がブラジャーに擦れることを求めて胸を揺すって……。まるで男を誘ってるみたい。早速、男たちの餌食ね。そしてあなたは、喜びの喘ぎ声を上げるのよ。官能に満足し、虚ろな眼を泳がして……。
 その顔がどう仕上がったのか知らぬまま…………。

≪完≫


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