人妻の事情
非現実:作

■ 人の妻として4

「いゃっはっは、ようこそいらっしゃいましたぁ。
いやいやいや理沙さんからの電話、ホント嬉しかったなぁ〜。」
「は、はぁ」
「で、で、で、ご用件はお電話の通りで?」
「…… ……」

私は小さく首を縦に振り、そのまま俯いた。
タイトスカートの生地をギュッと両拳で握り締め、恥ずかしさにただただ耐える。

「あ、怖がらないで怖がらないでね、理紗ちゃん〜」
「り、理紗ちゃ…ん?」

ちゃん付けなんかされたのは何時以来だろう。
思わず顔を上げると、店長さんの卑しい目線と合ってしまった。

「ふふふ、面接でも視線を合わせてくれなかったからねぇ〜〜?。
いやいや〜思った通りだ、理沙さんのその潤んだ瞳は実に美しいねぇ。」
「…そ、んな」
「男を狂わせるような妖しい瞳だ」
「そんな事……」
「私は光栄ですよぉ〜〜、こんな美しい方と時間を共有出来るなんてねぇ〜」
「…… …… …」

再び俯く私に、店長さんは再び口にした。

「さてさて、理沙さん?」
「……」
「お電話のご相談ですがね、勿論私はOKですよ」
「…… ……」
「勿論ね〜勿論、これはプライベートの中でのバイトですからね?。
絶対に誰にも言わないと約束しますし、誓約書も書きますよ?。」
「あ、あのっ……本当にお約束して…い、いた…いただけますか?」
「無論ですよ、僕も生活があるのでね〜」
「そ…れと…… ……ほ、本番とかも無しで?」
「お約束しましょう、僕はそういうのに興味が無いので安心安心」
「ぇ?」

(どういう事……なの?)
パニクっている私に対して店長さんは、鞄の中から
2枚の用紙を取り出した。
パソコンで打った文字をプリントアウトした物だった。

「電話を頂いてから、急いで作った物だからねぇ〜。
誤字脱字とかあったら恥ずかしいんだけどねぇ〜。」
「……は、ぁ」
「まま、呼んでみて?」
「……はぃ」


       愛人契約書

一:これは田崎○○と理沙殿との個人契約である。
  故に第三者の介入を一切遮断とする。
二:理沙殿との個人契約に対し、私田崎○○は月25万の契約金を支払う事をお約束します。
三:契約金が滞った場合、契約は切れると同時にいかなる法的措置にも従う所存です。
四:契約中の時点、理沙殿は私田崎○○に従う事。
五:契約中の時点で拒絶態度を示した場合、この契約書の下において理沙殿に命令する事を許可
  しなければなりません。
六:最低週1日の拘束期間を条件の下で契約は成立する事。
  但し第三者及び生活に支障をきたす場合は、
  前以って連絡の下にて、命令は破棄出来る物と
  致します。
七:尚、行為に対して、本番性行為の命令が無い事を誓います。
八:この誓約書は両者同意の元において、法的に有効である事を承諾致します。
九:上記の件を承諾した上で、下記の姓名記述の元
  捺印をした時点で契約は成立します。
十:尚、この誓約書は2枚存在し、契約者両名の下
  保管されます。
十一:最後に、姓名記述捺印した時点で、両者合意の下での契約であると示す。

「……!」
「ささ、よく読んでからお決めなさいな理沙さん」
「…… ……」

3度4度とジックリと文字を虱潰しに読んだ。
急いで作った割りにはよく出来ている……そう思った。
そして、最後の記述には店長さんの姓名と捺印が押されていた。
もう準備万端という訳だ。
(私は……どうしたら……)
この契約書には文句の付け所が無かった。
「法的措置」私には、その言葉が片隅の安堵だった。
それに……はしたない話だが……。

「月25万ってねぇ、うちの店で働くとねぇ〜。
毎日出勤で最低5人相手しなきゃならないのよ。」
「毎日…… ……5人」
「そそ、結構頑張ったんだよ、理沙さんの為にねぇ」
「…… ……」
「ささ、さぁ〜さぁ〜〜理沙さん?」
「……」

とても悩む。
悩んでいる場合などないのは解っているのだけど……。
月に25万最低でも週1回、それ以上は拒める事も出来る……確かに魅力的だ。
(…… …… …… …… …… …… ……っ!?)
そして私は……

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