人妻の事情
非現実:作

■ 妻である私は2

肉体的労働ではない筈なのに、気を抜いたら崩れ落ちそうな程に相当バテている。
田崎さんに命令されるがまま、これまで20回以上のシャッター音を耳にした。
何度も何度もポーズを修正させられて、田崎さんが納得いくまでやり直しをさせられて……。
普段穿き慣れていないハイヒールというのもあるのかもしれないが、精神的に疲労が蓄積している。
こんな格好……考えられない仕草を要求する田崎さんが恨めしい。
それは男性の性的心理を擽る、グラビアアイドルの域を一歩踏み込んだイヤラしいポーズ。
田崎さん曰く、そういうポージングはHな雑誌とかでは当たり前の事らしい。
そんな事をいきなり言われても、やった事も見た事も無い私は、例え詳しく指示されてもよく解らないのだ。
だから、何度もやり直しさせられる…… ……。
でも、ただこの時間が早く過ぎるのを待ち続け「これは仕事だ」と何度も頭で言い聞かせ、無心で私は仕事をこなした。
「そう、これは仕事」そういう区切りが大切。
でないと私……壊れてしまいそう。

右手でお尻の刳り抜かれたショーツを広げ、左手でオマ○コの刳り抜かれたショーツを広げさせられるポーズ。
両膝を地に着けて、トップレスブラで強引に搾り出された乳房を揉むようなポーズ。
M開脚といわれる両足を限界まで開いての、犬のチンチンのポーズ。
背中を床にして、大股開きした両足を両手で支えての、大事な所は隠してくれないショーツのドアップ。
幸いというべきか、身に着けている(変態的な)下着を取れという命令は無かったが、顔が写っていないか等の不安は付き纏う。

「んン〜〜〜実に良いねぇ〜〜これも被写体が最高だからかなぁ〜」
「……ハァハァ…… ……はぁはあ」
「会わなくてもヌケるような写真、撮れたよ?」
「はぁはぁ、ぁふぅ……あ、あの、お…終わりですか?」
「いやぁぁ〜ふっふっふっふ、いい絵が撮れましたよ〜奥さん。
最初にしてはホントに上等、これで僕は2日抜けるね。」
「そ、そんな事!?」
「新井理紗こと人妻、大胆にこんなにヤッチャいました、とさ」
「あ、あの…… ……デジカメを調べさせてください」
「OKOK、顔は出てないよ?」
「は、拝借します」

デジカメの容量を全部を把握する…… ……。
確かに顔は一切映っていなかった。
私のイヤラシイ身体だけのみのデータ。
確認して、私は安堵する。

「このデータは相当なオカズになるよ、ホントホント最高だよ」
「そ、そんな風に……」
「いやいや理紗ちゃんはね、良い素材だって再認識したよ」
「わ、私はっ!」
「ウンウン解ってるからさぁ……奥さんはこれからも身体で稼ごうねぇ?」
「…… ……そんな言い方って」
「ふっふふふふ、奥さん〜〜〜貴女はねぇ〜。
ンとね大丈夫、あなたは美しい僕の変態モデルになれるから。」
「っ!?」
「ま、今日はこんな感じだって事を解ってくれればいいからサ。
次からはもっと大胆に感情も込めてやってよね。」
「くぅ」
「じゃあ、帰る準備しようかねぇ理沙ちゃん」

「今日はこれで終わり」その言葉を、どんなに待ち望んでていたか。
痴態を晒したデジカメのデータ……顔出し無しという最低限の約束は守られた。
だけど、穢れを知らぬ身体を一瞬で汚された思い。

「あ、そうそう下着はそのままで帰ってね奥さん」
「ぇ、ええっぇ!?」
「ガッコで習ったでしょ、帰るまでが遠足だって」
「そ、そんな……」
「家で着替えればいいじゃない、何もずっと着けてろと言ってないし。
あ、但し僕と会う時は必ず着用してきてよね。」
「…… …… ……」

逆らわない方が良い。
身に付けたままの変態的な下着のまま、ブラウスを手に取った。
   ・
   ・
   ・
   ・
ラブホテルを出て入り口付近、突然田崎さんが立ち止まった。
こんな所で立ち止まるなんて私には出来ない。
早くこの地から脱したい、その思いで私は無視して足早に歩を進めると……。

「待って待って奥さぁ〜ん」
「ちょっぉ!!」

後ろから大声で呼ぶ。
(何て酷い人っ?)
これ以上無視したら、どうなるか解らない。
入り口で立つ田崎さんの元へと戻る羽目となってしまった。

「ちょっとっ、困ります田崎さんっ!」
「だってさあ〜〜コレいらないのかなって、奥さん?」
「っ!」

万札をヒラヒラと見せ付けるように言った。
あまりの出来事だった故、完全に忘れていた。
でも、こんな場所でこんなやり取りをなんて……。

「ば、場所とかわきまえて下さい」
「良いじゃない、お互い大人なんだし、それに奥さんはこれが仕事でしょ?」
「……他人の目とか、そういうのを言ってるんです」
「ハハハ、理沙ちゃんはホントに僕の思うがままに動いてくれるねぇ」
「何がですか!」
「これも露出プレイの一環だって事さ」
「!?」
「ふっふっふ」
「…… …… ……頂きます」

田崎さんから約束の仕事料をひったくって、私は足早に後にした。

「また連絡するからサ、仕事頑張ってネェ〜〜」

後ろから大声で私に話しかける田崎さんを無視しつつ、足早で私は去る。
ギュッと握り締めた5万円を手に…… ……

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