人妻の事情
非現実:作

■ 妻である私は5

「ぅあっンくっぅっ、あっぁっぁ…ぁっぁ〜〜」

言われたとおりバイブを押し当てた瞬間、頭の中が弾けて飛んだ。
目の前でフラッシュがたかれたみたいに真っ白になる。
ガクガクと身体中が振るえ、まるで自分の身体ではないような感覚。
そして私は夫以外の男性の目の前でイッた。
襲いくる虚脱感で身体を起こす事すらままならない。
ベッドに突っ伏したまま私は荒い息を立てて、暫し呆然としていた。
(あの感じは何だろう……気持ちよかったと?)
私は先程の感覚を自問自答する。
(イってしまうというのが、アレなのかしら)
男性経験は夫ただ一人しかいない。
夫とのセックスは、愛し合っているという儀式みたいなもので、私の嫌がる事は決してしないし、夫もセックスに対して熱心ではなかった。
(今でも身体が震えてる……それに全身が熱いわ)

「あ、あの……」
「旦那さんとは随分とご無沙汰だったのかね理沙ちゃん?。
1回押し当てただけでイッちゃうなんて僕もね、僕も予想外だったよ〜。」

田崎さんの好奇な眼差しから逃れる為に、私は身体にシーツを巻き付けた。
不意に田崎さんがベッドの端まで来て、バイブを拾い上げて言った。

「コレそんなに良かったの、そんなに良かったんだ理沙ちゃん?」
「べっ、別にそんな物っ!」
「バイブに夢中になり過ぎるとね、普通のセックスは物足りなくなるらしいよぉ?」
「そんな道具っ、私には必要ありませんからっ!!」
「あっそうなの〜じゃあ、僕貰ってくね」
「元々田崎さんの物じゃないですか!」
「コレねぇ〜〜まだ拭いてないの、この意味解る?」
「っぇ!?」

私の顔が引きつったのを田崎さんは素早く察知した。

「このバイブにはね、奥さんの愛液でビショビショになってるんだよねぇ〜。
どうどう、見てよ見てよ、ゴム製の擬似男根がテカテカと輝いてるよ?。
これってさぁ、やっぱり奥さんの愛液でコーティングされてるんだよねぇ。」
「止めてくださいっっ……お願いだから……止めてください……」

私は耳を手で塞いで顔をベッドに埋めた。
なんて事をしたのだろうか……頭がそれで一杯だ。
いつも田崎さんは私の泣き所を突いて来る。
言葉巧みに私を辱める。

「それに……んぅぅ〜〜〜〜ん……良い香りだぁ〜〜。
これが奥さんの愛液の臭いなんだぁ〜ねぇ〜〜。」
「ひっ、酷いわっ!」
「ホントはね、奥さんがバイブでヨガッてる写真を撮りたかったんだけどねぇ。
まさか一瞬でイッちゃうから激写出来なかったのよ、うんホント残念。」
「また……写真を!?」
「あぁ〜大丈夫大丈夫、公開とかはしないって約束したからね。
ただの僕のオナニー用にって思って撮ろうとしたんだよね。」
「ぉ……ぉな……そんな言葉、私に聞かせないで下さいっ!」
「おやおや、奥さんは根っからの箱入り娘さんだねぇ。
でもま……写真は残念だったけど、このバイブで一月は持つねぇ〜。」
「っぇ!?」
「この奥さんの愛液付きバイブ、永久保存しておくからねぇ〜」
「かっ、返してっぇ!!!」

事態をようやく理解したが、それは時既に遅しだった。

「理沙ちゃんコレいらないってさっき言ったじゃない、だからコレは僕の物」
「いやっぁ、それだけは……それだけは堪忍してくださいっ!。
さっきはあまり考えられずに、その……あの、だからっ私が持って帰ります!!。」
「だぁ〜〜め、2度は無し」
「そんな事に使われるのは嫌っぁ……お願いですから田崎さん……」

私の懇願に、田崎さんが深い溜息を吐いて云うのだった。

「理沙ちゃん覚えておくと良い、性を売り物とする者は相手の出方を必ず予測する事だ。
性に対して異性は貪欲だ、相手の言葉に対して有利に立とうと虎視眈々と狙ってる。
お店でもね、対話のやり取りで禁止されてる本番をせざる得ない人妻とか多いんだ。」
「……」
「ある意味理沙ちゃんは純粋過ぎる、だから僕の罠に簡単に引っ掛かる。
楽してお金は稼げないんだよ、残念ながらね。」
「……ひっく」
「悪いとは思うけどね、これは対話で勝利した僕の戦利品だ。
今後、理沙ちゃんも危なげなくお金を稼ぎたかったら考えてモノを言う事だ」
「ぅ……ひくっぅ」
「取り敢えずサ、この部屋は1日で取ってあるから。
で、契約は続いてるからサ、また連絡するよ。」
「……」
「今回はちょっとショッキングだったおもうからサ、少し多めにしとくね」

財布から抜き出された札は、涙目でぼやけながらも10枚だった。

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