人妻の事情
非現実:作

■ その時は妻であらず15

「やぁやぁ〜〜こんにちは理沙ちゃん〜」
「こんにちは田崎さん」

いつもの郊外の駅前、ここが私達の密会の待ち合わせ場所。
平日の2時過ぎ、暇そうなタクシードライバーから「不倫」という視線を浴びながら、娘と父親ほど年の離れた私達は堂々と近付く。
そんな視線すら、私にとっては快楽の糧。

「今日もイイネイイネ〜とってもエロいねぇ〜」
「ありがとうございます……今日のはこの前に私が買ってきたの……」

田崎さんの目の前でゆっくりと1回転してみせる。
今日の私は、胸の所が大きくV字にカットされた黒のセーター1枚で、ブラは着けてきていない。
ワザと3サイズ大きいのを購入してあるのでダボダボだ。
私は意味も無く、田崎さんの目の前でほんの少しだけ身体を屈める。

「へぇぇ〜なるほどなるほど〜〜そういう趣旨かぁ〜やるねぇ理沙ちゃん」

そう……このダボダボセーターは身体をほんの少しだけでも屈めると、胸と乳首が服の間から見えてしまうのだ。

「そして、そのスラリと伸びた美味しそうな足……また見事だねぇ〜」
「ちょっと恥ずかしいのですけど……買っちゃった」

下は白のスカートで、丈はそんなに冒険していない程度の膝丈。
だが、両サイドに腰のギリギリまでスリットが入っている。
買ったその日に倉庫で試着してみたら、早足とか大きい歩幅で歩くとスカートが捲れてしまうのだ。
下は勿論セクシーな赤の下着を着けている……今はまだ…… ……。

「やっぱり奥さんは最高にいい素質を持ってるよ」
「ゃですわ、奥さんだなんて……」

そうは言うものの、この言葉責めに病みつきになっている私。

「いやいや〜大人の色気ぷんぷんですなぁ〜奥さんは。
ホラホラ、タクシーの運ちゃんが釘付けだよぉ?。」
「もっもぅ……早く行きましょう〜」

熱い視線を感じつつ、口から甘美な吐息を漏らし、せかす私。

「どうせだったらサ、あのタクシー……乗ってかない?」
「こ、これ以上……ここで晒し者は嫌ですょ……」

無論、田崎さんに「命令だ」と言われたら、私は拒む事はない。
これは命令なのだという勝手な言い訳のもと、タクシーで恥ずかしい姿を晒して感じるのだろう。

「んっふっふっふ〜〜〜でも今日は止めにしよう」
「?」

全身を舐め回すように視線を飛ばす田崎さんが続け様に言った。

「今日はネ、また一段階グレードを上げてみようかねぇ〜。
今日の気合の入った服なら相応しい露出プレイがあるんだよ。」
「な…何をするのですか?」
「んふふ〜気になる?」

また一段階グレードアップの露出プレイ、聞いただけでもゾクゾクと興奮が止まらない。
ジワジワとまた敏感な所が疼いている。

「理沙ちゃんはただ座っているだけで羞恥を感じちゃうんだよ?」
「座ってるだ……けで、ですか?」
「そうそう〜ただ座ってるだけで大勢の人から見られて感じちゃうんだ。
所謂、視姦プレイっていうやつだね。」
「視姦プレイ…… ……ぁんく!」
「フフフ……理沙ちゃんもやる気満々のようだねぇ〜じゃあ移動しようかね?」
「は……ぃぃ……」


思ったほど人気が多い都心へと向かう電車内。
揺られ揺られて、真っ赤な顔を伏せながら私は長い客席の丁度真ん中辺りに座っていた。
端の席も空いてはいたのだが、田崎さんの命令でワザと真ん中に座しているのだ。
普通とは思えない荒い呼吸を隠し、携帯電話を弄っている様に見せかける。
全身が火照って仕方が無く、理性まで飛びそうな勢いだ。
この寒くなってきた11月で、セーター一枚の女……それだけでも怪しい。
それだけではない、凡そ普通の仕事をしているとは思えない妖艶な化粧と、身に纏った衣服である。
営業活動中風の中年サラリーマンの人、ゼミをサボって遊びに行く風体の若い男の子……。
皆が皆、私の前の吊り革を奪取しようと必死だった。
途中駅で降りなければならない男性は名残惜しそうに私を見送り、空いた吊り革を新たに奪取した男性は何気無さを装い真下を凝視する。
私が座り、一番最初に田崎さんが確認の意味で前の吊り革を手にした。
そして、携帯のメールが届いて知るその意味。

「理沙ちゃんへ……
大変凄い事になってますよぉ〜眺めは最高にグッドですねぇ〜〜ww。
真下から大きなお山が丸見え丸見え。
しかもねぇ〜そのお山にはピンクの旗が見えますよん。
ヤッホーーって叫びたくなる位に絶景かな絶景かな
んじゃ、服は抑えないでそのままネ〜〜〜」

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