百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第四章 フィニッシュ技とパートナー2

その後三人が向かったのは5階の婦人服売り場。
「実は新しい下着が欲しくて―――」
亜湖が言った。香は、
「私に遠慮する事なんて無いじゃない。好きなの選べばいいわ」
と答えた。亜湖は、
「はい」
と少し赤くなって返事した。試合の時にどれを着ければいいのだろう? と思うと恥ずかしくもあり、楽しみ、という訳では無いが自分の気に入ったのを着けたい、という気持が強くなった。
「センパイ、これどうでしょう」
さくらはマネキンが着けているブラジャーとパンティを指差して言った。それはさくらに似合いそうな、白に水玉模様のかわいいものだった。亜湖は、
「うん、それいいね」
と答えた。さくらは気を良くして店員を呼び、
「これがいいです」
と言ってマネキンを指差した。そしてその他にも水色の縞模様のを選んだりしていた。一方亜湖は、模様モノではなく、ピンクや薄い水色、薄い黄色等色やデザインが可愛く、こんなの着けてるよ、とさりげなく存在感をアピールするものを選んだ。
「白が無いのは意外ね」
香が言うと亜湖は、
「うーん、2枚程持ってますから。お気に入りのを」
と答えた。香はそれを聞いて、
「成程」
と言った。亜湖とさくらは選び終たらレジに行き会計を済ませた。香は、自分もワンセット欲しくなり、黄色のブラジャーとパンティを買った。
「私って黄色が好きなのかしら。前も黄色だったような気が…」
香はそう呟いた。


三人は買い物を終えた後、帰り道で色々話した。香は亜湖とさくらに、
「フィニッシュ技、身に付けた方がいいわよ」
と言ってそれについて説明した。美紗はラリアットとパワーボム、香はポニードライバーを持っている。多少受け身を取られてもカウントスリーが取れる必殺技である。
「美紗さんのパワーボム、食らったら動けなくなった」
「ポニードライバー返せ無かったよ……」
亜湖とさくらは実際に食らった感想を言った。香は、
「そう。返そうとしても返せない技―――それがフィニッシュ技よ」
と答えた。


「香さん、今日は色々ありがとうございます。明日から早速フィニッシュ技の研究します」
亜湖は言った。丁度香と別れる所に来ていた。香は、
「じゃ、次は亜湖を指名しようかな」
と言って手を振ってから自分の家の方へと帰って行った。
「さくら、行こう」
亜湖が言うとさくらは可愛い笑顔を見せて、
「ハイっ、センパイ」
と答えた。


次の日―――。亜湖とさくらは更衣室に入る前に銀蔵に呼びとめられた。
「亜湖とさくらはタッグを組む気はあるか?」
と銀蔵は聞いた。亜湖は、
「はい、さくらと組みます」
と答えた。さくらもそれに同意した。銀蔵は、
「そうか。ならタッグデビューという事で特別試合を組もう」
と言って更衣室のドアをノックした。すると着替え終わった香が出てきた。体操服にブルマ姿で髪をポニーテールにしてメガネはしていなかった。
「昨日はありがとうございます」
亜湖が礼を言うと香は、
「どういたしまして」
と答え、その後、
「まあ後は、"いい試合を私に見せてくれれば"いいわ」
と言った。銀蔵は、
「香。この二人はタッグを組むそうだ。パートナーが居ないお前はタッグ戦が出来ない。パートナー欲しくないか?」
と聞いた。香は、
「プルトニウム関東は嫌よ。それに私は美紗を倒すのが―――」
と断り掛けたが、自分は前とは変わっている事に気付いた。以前は相手に技を掛け、反応を楽しみ、そして美紗に対してはポニードライバーを叩き込む事を目的にしていた。つまり、その目的を達成する為にはパートナーは要らなかったのでタッグは今迄全くやっていなかったのである。
しかし今はそれプラス亜湖とさくらがいる。亜湖とさくら、二人をまとめて相手するにはタッグは都合がいいと考え直したのだった。
二人とも場外に突き落とし下着姿の二人が場外で倒れているのをリング上から見下ろしたい―――。そう思った。
「私と合いそうなら誰でもいいわ。お願い」
香は目を細めてそう言った後、亜湖をチラッと見て、ポニーテールにリボンをつけた―――。試合でも無いのにリボンをつけて―――。
亜湖は悟った。香が自分に照準を合わせた事を―――。でも何故、たかが新人戦を終えたばかりの自分に照準を合わせてくるのか、それは理解する事は出来なかった。

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