百花繚乱
百合ひろし:作

■ 第13章 お嬢様の試練5

かえでは目を覚ました。すると隣には美里がいて、ドアの所にはサングラスを掛け、白いスーツを着た屈強な男が立っていた。
「こ、ここは……痛っ……」
かえでは言うと同時に身体中に走る痛みに起き上がれなかった。美里は、
「かえで様、ごめんなさい。私が襲うように言ったばかりに―――」
と泣きじゃくった。かえでは首を振った。
「いや、相手が危険だって分かんなかった私が駄目だった。頭失格だってさ、その通りだよ―――」
と言った。そして、
「もう―――、美里。私の力じゃあんたを養えない―――ゴメン」
と謝った。美里は、
「かえで……様……」
と、それしか言えなかった。そこにさっきの女性が来た。
「あなた達について調べさせてもらったわ」
と言った。かえでは、肘をついてなんとか起き上がり、
「私たちをどうするの?」
と聞いた。女性は、口元に笑みを浮かべ、
「どうするも何も、これから説明する事をやるかやらないかは選ぶといいわ」
と言い、部屋脇のモニターをつけ、画面を見せた。画面にはリングで闘う女性の姿が映っていた。
「ここは闇プロレス"丸紫"よ」
と言った。そしてこの女性は丸紫の社長であった。
かえでと美里はルール等聞いた後、選手になる事を決めた。
そう―――断ったら生きられない。断ったら社長に殺されるとかそういう事ではない。社長は攻撃してこないが、社長に完膚なきまでやられるという醜態をさらした事は既に様々なグループに知られてしまった為に、今度は自分達がやられる番なのだ。誰が見ているか分からない、兎に角そういう情報は直ぐに伝わるのだ―――。負け犬になったら一生負け犬。それがこの世界の掟だった。しかし、丸紫にいれば、社長の眼光の届く範囲に居る事になり、守られる事になる―――。社長は直接そういう事は言わなかったが闇の世界で生きてきたかえではそういう事なのだと理解した。
更に、社長はかえでと美里に、学費の面倒は見るから高校に今からでも通うようにと言った。二人は今普通に通っていたとすれば高校二年生の年―――、今から入学すれば一年留年の扱いである。もしかしたら、もう一年留年するかもしれない。しかし、それでも通えと言った。それが無理なら、高等学校卒業程度認定試験(高認)を受けるように言った。かえでと美里はその言葉に従うことにした。
「あと、貴方―――かえでさんと言ったわね。で、そちらの方を養えないと言ったわね?」
社長は聞いた。かえでは、
「はい……。私は、美里にいい暮らしをさせてやるって言ったんです。でも、こうなっちゃった以上……」
と答えた。社長はそれを聞いて、
「ならば強くなりなさい。強ければ、勝てるのであれば出来ますよ。あと、美里さんとやら。あなたも強くなれますよ」
と言った。こうしてレスラーかえでと美里が誕生した。


社長に少し休んでるように言われたかえでは美里と一緒に休んでいた。その時、
「闇プロレスってこちら?」
県立相生高校の制服を着た、かえでより少しばかり背の低い女生徒が言った。髪は耳より少し長く、そして太い眉毛が可愛らしかった。その人は傷だらけのかえでを見て、
「あ、こんにちは。どうしたんですか?」
生徒は聞いた。かえでは、
「ちょっとした理由があってここに入る事になったのよ」
と答え、そっぽを向いた。相生高校の生徒は、
「そうなんだ―――。私は、もしいい所だったら入ろうかなって思う」
とニコッと笑って答えた。そして、
「社長は何処ですか?」
と聞いた。かえでは、
「今ちょっと出て行ってる。社長室にはいないの?」
と言った。生徒は、
「あ、社長室忘れてた。行ってくるね」
と行って出て行った。

そして暫く経って、かえでと美里が休んでいる部屋に戻って来た。社長と一緒に―――。
「彼女も一緒にやる事になったわ。三人入門日が一緒なので仲良くやりなさい」
社長が生徒に自己紹介するように言った。生徒は、
「伊藤美恵子です。ん―――、見ての通り相生高校の制服です。生徒会長だから、リングネームも生徒会長で。宜しくお願いします」
と笑顔で挨拶した。かえでは驚いた。生徒会長がこんな所で生徒会長と自己紹介するなんて有り得ない。自分が窃盗団の頭だったと告白するようなものだ―――、いや、それ以上だった。かえでがここで窃盗団の頭だった事を告白するのは、闇の人間が闇の世界で自己紹介することそのものなのだが、生徒会長となれば話は違う。
相生高校の生徒会長が闇プロレスラーだなんて何処かで知られたらどうするつもりなんだ―――と。かえでは、生徒会長は天然なのか馬鹿なのか、と思うと自分が自分の事を隠す事が馬鹿らしくなった。
「私は、佐々木かえで―――。さっきまで窃盗団の頭張ってたわ。社長にやられてこの通りだけど……、それで入門したの。宜しくお願いします」
かえではそう自己紹介した。美里も、
「私もかえで様と一緒に入りました。宜しくお願いします」
と自己紹介し、三人は一緒にトレーニングして上を目指す事になった。

生徒会長は可愛いフリルのついたシャツとミニスカート、そしてミニスカートの下にはスパッツというスタイルで、かえではドレスを動きやすくアレンジした様な派手な衣装を、美里はコスプレをするスタイルを取った。そうして、新人戦を迎え、その後美紗や良が入ってくることになった―――。

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