母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 妄想を誘う肢体10

 ほとんど潤っていない肉襞を、傷ついた粘膜を抉り取るように怒張が前後する。
「ひっ、い、痛い……、うっ、動かないで……」
 耕平の腰の動きに合わ、タップンタップンと揺れる豊乳を握りつぶし耕平が言い放つ。
「感じてるんだろ? 凄い締め付けだぞ」
「か、感じてなんか……いない! い、痛い!! 痛いの……、ぬ、抜いて……」
 まさみは、苦痛から逃れようと腰を振った。そのことが男の官能を心地よく刺激するとも知らずに……。
 耕平の怒張を粘液が包み、動きがスムーズになった。
「感じてるんだろ? 自分から腰振って……。そんなにいいのか? チ○ポが……」
 耕平は、腰の動きを早くした。
「ち、違う……。痛いの……。ぬ、抜いて……」
 まさみの願いも虚しく、耕平は腰を激しく撃ちつけた。

 温かい媚肉が耕平の肉根を包んでいる。狭い蜜壷が、砲身をきつく締め付ける。耕平は、その甘美な刺激に、怒張を膨らませた。身体中の血液が、その一点に集中したかのようにドックン、ドックンと膨れ上がる。
「ううっ、うおおおぉぉぉ……」
 雄叫びにも似た呻き声と共に、耕平はまさみの中に熱い滾りを解き放った。
「いやあああぁぁぁ……」
 お腹の中に流れ来る熱い濁流を感じたまさみの悲鳴が、狭い脱衣場の壁に響き渡った。

「ううっ、うっ、うっ、ううっ……」
 呻き声のような泣き声を上げ絶望にぐったりと横たわるまさみから、耕平は肉棒を抜いた。肉棒には、泡だった白濁液と赤い液体が付着していた。
(えっ? まさか……?)
 耕平は、まさみの力なく開いた股間に目をやる。たった今、耕平が射精した白濁液に混じって鮮血が流れ落ちてきた。怒張の動きを良くした潤滑液は、まさみの純潔を守る膜が引き裂かれた証だった。
「は、初めてだったのか? オヤジとは……まだ……」
 耕平は、顔面を蒼白にし呟くような小さな声で訊ねた。まさみは泣き顔を、酷い顔を見られまいと身体を捩り耕平に背を向ける。
「ううっ、先生、十八になるまでは……、籍を入れるまではって……。ううっ、ううう……」
 まさみは泣きながら、答えを詰まり詰まりの声で搾り出した。

 自分の侵した罪に呆然と立ち竦み、まさみの震える背中を見詰める耕平。
「もう、隆平君のママでいられないね。うっ、ううっ……」
 まさみは、耕平に背を向けたまま泣いた。
(この風景、いつか見たことある……。いつか聞いたことがある、この台詞……)
 耕平は、心の奥深く片隅に刻まれている記憶を辿る。
(……病院? ……ベッドの上、……)
 顔を見せないように泣くまさみに、耕平は十二年まえに亡くなった母の姿を重ねた。ベッドの上で、涙を見せないようにすすり泣く母親の背中……、幼い心に刻まれた記憶を……。
「ママ……」
 耕平の口から、十二年前と同じ言葉が漏れた。
「えっ!?」
 まさみは振り返り、耕平を見た。まさみの視線が、耕平に突き刺さる。耕平の胸をギュッと締め付ける。居た堪れない罪悪感を感じた耕平は、逃げるようにその場を後にし自室に駆け込んだ。



 下半身しか映さないはずの盗撮カメラは、耕平がまさみを押し倒したことにより、まさみの全身を映していた。三つ編みを解いた、メガネを掛けていない星野奈緒の顔を……。そして、耕平が奈緒を抱いた事実全てを映していた。

 龍一は車の中、怒りに肩を震わせていた。
「耕平の野郎、奈緒の処女を襲いやがって!」
 龍一は、妹のような親しさを感じていたアイドル・星野奈緒が犯されたことに憤りを燃え上がらせた。
「それになんだ? 母親だと? 奈緒のヤツ、耕平の母親になったって言うのか? 耕平の親父と結婚したって言うのか? 俺たちを裏切って……、許せねえ」
 怒りは、ファンの気持ちを裏切る行為にまさみにも向けられる。
「オレより先に奈緒とやりやがって……」
 なにより、自分の目を着けた女を耕平が先に手をつけたことも許せない。牡の尊厳を傷つけられたような気がした。

 龍一は、まさみに対して絶望を、耕平に対して恨みを覚えた。怒りの波が、激しく渦巻いていた。龍一が、初めて抱く為の女ではなく観ることができた少女。その奈緒がバージンを失い女になった。守りたい少女は、奪いたい女へと龍一の中で変わっていった。

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