母はアイドル
木暮香瑠:作

■ 染み込んでいく官能9

 玄関のドアが、荒々しい音を立て開かれた。
「耕平が帰ってきたみたいだな」
 耕平が見たのは、まるでハイエナが死肉を貪るようにキッチンの床に散らばったザーメンを求めて必死で舌を這わせるまさみの姿だった。まさみは耕平が帰ってきたことに気付かない。こんな姿を見せられない、汚い部屋を見られたくないという気持ち、綺麗にしなくちゃという一心で床を舐めていた。

「お前の従妹、すげー淫乱だな。おれたちの出したザーメン、全部飲み込むんだもんな。こぼれたのは舐めてしまうし……」
「ほんと、スキもんだな。チ○ポ刺したら、すぐに腰振ってさ。キュッ、キュッて締め付けちゃったりして、精液搾り取るんだもんなあ……」
 まさみが床を舐め回す光景を呆然と見詰める耕平に、及川と柴田が話しかけた。耕平は、怒りに満ち満ちた視線を返す。耕平の只ならぬ表情に一瞬たじろいだが、それに負けまいと強気に続けた。
「お前とも毎日やってるんだろ? こんなに淫乱な従妹なら、我慢できないよな、お前も……。我慢できないのは……まさみちゃんか」
「お前はどこ使ってんの? マ○コか? 口か? それともケツか? まさみちゃん、どの穴でも感じるスキもんだもんな」
「くっ!! ……」
 耕平は、唇を噛み怒りを噛み殺した。

 一人、観客が増えたことにも気付かず床の舌掃除をしてるまさみに、龍一が声を掛けた。
「早く綺麗にしないと、先生が帰ってくるぜ」
「いやっ! 先生に知られちゃう……」
 何も言葉が入らないほど一生懸命に床を舐めているまさみだが、先生という言葉だけが辛うじて飛び込む。まさみは、さらに舌先に力を込めザーメンを抉り取ろうと必死で動かした。

 無心で床に舌を這わすまさみ。見守る男たちのことなど関係なかった。耕平が帰ってきたことさえ気付かず、ただひたすら舌掃除に必死だった。綺麗にしなくちゃと言うことだけが、まさみの意識を占拠していた。白く丸いお尻を掲げ、恥部が見えることさえ厭わず這い蹲る姿は痛々しささえ漂ってくる。その姿に、さすがに柴田たちも気が引けた。
「そろそろ帰るか。耕平の親父さんに知られたら、まさみちゃんも恥ずかしくて、もうしてくれないかもしれないからな」
 柴田は、そう強がりを言って玄関に向かった。
「そうだな。まさみちゃん、また頼むな」
 及川がそう声を掛けると柴田の後を追った。他のみんなも、気まずそうに下を向いておずおずと帰っていった。

 みんなが帰っていった事にも気付かず、まさみは必死で床を舐め続けていた。
「綺麗にしなくちゃ……。早くキレイに……」

 ペチャッ、ペチャッ……、ペロペロ……

 一人残された耕平の耳に、床を舐める音だけが響く。
「まさみ、もういいんだ。あいつら帰ったから……」
 耕平は優しくまさみに声を掛けた。必死で床を綺麗にしようと舐めまわすまさみには、耕平の言葉も耳に入らない。股間から滴り落ちる精液と愛液が床を汚していく。
「あん、ここも汚れてる。綺麗にしなくちゃ」
「まさみ! もういいんだ!! 舐めなくていいんだ!!」
 耕平は床からまさみを剥がした。
「だめえ、綺麗にしなくちゃ……、先生にばれちゃう! 綺麗にしとかなくちゃ……」
「もう! あいつ等、帰ったんだ!! 帰ったんだよ!!」
 耕平は、まさみの肩を掴み大きく揺さぶった。
「えっ?」
 やっと正気に戻ったまさみの瞳に耕平の顔が映っていた。
「間に合わなかったんだ……。ごめんね、耕平君の家なのに……汚くしちゃって……」
 汚れた床にペタンと座り見上げるまさみ。白く曇ったメガネの奥から、涙の浮かんだ瞳が耕平を見詰めている。自分が一番の被害者なのに、謝ってくるまさみが耕平には愛おしかった。
「身体……、綺麗にしよっ。シャワーを浴びよっ」
 耕平は優しく声を掛け、まさみを引き起こしバスルームに向かった。身体に纏わり着くドロドロになった布切れ。それが、まさみのお気に入りのエプロンだと気付のにしばらく掛かった。耕平は、そっとそれを剥ぎ取った。
「あっ、……」
 まさみは小さな声を上げ、耕平の手にあるエプロンに手を伸ばし何か言おうとするが言葉が続かない。
「エプロンも……きれいに洗わなくちゃ……」
 耕平は、優しくまさみに声を掛けた。

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