人妻と少女の淫獄
木暮香瑠:作

■ 開かれる淫獄の扉4

 自分の部屋のクローゼットに備えられた姿見に映る姿を見て、美香は肩を振るわせた。素肌に纏ったキャミドレスは少しサイズが小さく、伸縮性の素材は美香の身体にぴったりと張り付き女らしい線をくっきりと表した。
「いやっ! ……」
 美香は言葉を失った。胸の膨らみは、服と双乳の間にデルタ地帯を作り、深い谷間を晒す。纏わり着くように貼り付いた生地は、胸の膨らみの形をありのままに示し、乳輪の大きさから乳首の形まで晒した。そして括れた腰からヒップに掛けてのラインは、男達を誘惑するかのような畝りを見せつけている。裾からは脂の乗った太腿が、股の三角の隙間を垣間見せながらすっと伸びている。
「どうしよう……。これでショーツも脱ぐの?」
 少しでも屈めば、後からは双尻の隆起を白昼の元に晒すことになる。歩いただけでも裾が捲くれ、前からでも恥丘を覗かせるかもしれない。それほど短い裾丈だった。誰にも見られていないとは判っていても、恥辱に顔が熱くなる。美香は片手で胸を隠し、もう一方の手で裾を下に引っ張った。

 ピンポーン。

 戸惑い立ち竦む美香の耳に、玄関のチャイムの音が聞こえる。はっと顔を上げた美香に、玄関から篠原の声が届く。
「美香さん、デートの準備は出来てる?」
 美香は胸と股間を隠し玄関に向かった。

 玄関では篠原がにやけた顔で待っていた。
「うーーん、やっぱり似合うね、そのドレス。胸も垂れてないし……って言うか、若い頃より張った感じ? 腰は括れが増したし、お尻だって脂が乗って女らしくなってる」
 篠原は満面の笑顔で美香を評価する。
「こんなことして……何が楽しいの!?」
 美香は恥辱を上回る怒りに、きっと篠原を睨みつける。
「強くなったね。以前は、恥ずかしがって泣くだけだったのに……。母になると強くなるって言うけど、妻になっても強くなるのかな?」
 六年間の歳月が強くした美香を嘲笑うように、篠原は美香の身体を嘗め回すように眺め言う。
「ちゃんとブラジャーは外してるね。乳首が勃ってるんじゃない?」
「そっ、そんなこと無いっ!!」
 美香が恥辱から逃れるように上半身を捩り、視線から逃れようとする。篠原は視線を下に移した。美香が身体を捩ったことで、腰からお尻に掛けてのラインが強調され篠原の視界に入ってきた。
「あれ? パンツの線が見えてるよ。みっともない。折角のドレスが台無しだ。さあ、脱いでっ!」
 篠原の言葉に、宅配便に入れられていた写真と沙希のことが頭をよぎる。篠原の要求はそれが何でもないことでも、美香に対する脅しになっていた。
「くっ! 判ったわ……。脱いでくるから待って……」
 美香は恥辱と怒りに顔を真っ赤にし、篠原を玄関に残しリビングに身を隠した。

 カーテンが閉まっているか目を配る。外から見られないことを確認し、裾から手を居れショーツに指を掛ける。そして、柔肉に貼り付いた布地を剥がした。
「はあ……」
 自分のしてることのバカバカしさに溜息が漏れる。
「大丈夫よ、沙希ちゃん……。あなたには、絶対手出しさせないから……」
 躊躇する自分に言い聞かせるように小さな声を発する。今の自分の幸せな家庭を守る為、義弟の純潔な幼馴染を守る為、ショーツに掛けた手を下ろす。そしてショーツを足首から抜き取った。

 スウスウする股間が、美香を心許無いくする。薄い布地がたった一枚なくなっただけで、こんなに不安になるなんて……。不安定な情緒の美香の目に、宅配便の箱と羞恥写真が映る。
「捨てなきゃ、写真を……」
 時間が無い。美香は写真を夫や昇に見られる訳にはいかない。とりあえず隠す場所を探す。
「美香さーーーん、早くーー!!」
 玄関から近所中に聞こえるような大きな声で篠原が呼んでいる。
(だめっ、そんなに大きな声で……。近所の人に見られたら……)
 出掛ける所を近所の人に見られる訳には行かない。こんな売春婦みたいな服を着て出掛ける所を……。
(急がなくちゃ。写真……)
 慌てる美香には、写真を隠す適当な場所が思い浮かばない。宅配便の箱にショーツと写真を入れ、とりあえずソファーの下に包みごと隠し玄関に急いだ。

 不安な気持ちのまま玄関に現れた美香。その肩を抱き、篠原は美香を外に連れ出した。

 玄関の前には、篠原の用意したオープンカーが止まっている。
「さあ、どうぞ」
「えっ!? この車で……」
 屋根の無い目立つ真っ赤な車に、美香は戸惑った。
(これじゃあ、見てくださいって言ってるみたいなもの……)
「歩いてデートの方が良かった? でも、その服じゃ、目立つよね」
 意地悪く篠原は微笑んだ。まろで、美香の心の中を読み透かしてるみたいに……。

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