僕の彼女
kyousuke:作

■ 第14話 新しき出会い 6

 飛鳥の家庭は複雑だ。まず飛鳥と直接繋がっているのが父親だけで後は腹違いの弟と妹がいる。当初は飛鳥も父親とその義理の母親と過す事は躊躇っていたが不倫相手だった女性、つまり今の義理の母親の実家や本人も罪悪感から引き取る事にしたが大人が納得しても弟は納得してなく気まずい雰囲気で二年が過ぎようとしていた。

「ただいま〜〜つぐみ〜清二〜航兄〜〜」

飛鳥は自宅玄関で声を掛けるとトテトテと女の子が駆け寄る。ロングヘヤで可愛い目をしているのが現在小学三年生の館 つぐみだ……この子は直ぐにお姉ちゃんと呼んでくれた。

「清二は?」

「サッカーしてくるからつぐみ、お留守番だって航兄は部活」

「アイツは……」

飛鳥は呆れた。館 清二は現在小学五年生……生意気な弟であって未だにおねえちゃんとは呼んで貰えないのだ。制服をハンガーにかけハーフパンツとシャツに着替える。館 航(ワタル)とは飛鳥より一歳年上の兄である。

「雅美さんとお父さんは今日も遅くなる………食材は……よし…今日はハヤシライスだ!」

冷蔵庫のメモを見て言うとつぐみが喜ぶ。十八番となっているハヤシライス(ハッシュドビーフ)は辰子さんの得意料理だった………。

「つぐみも手伝う〜〜〜」

「じゃあ人参の皮を剥いて〜〜」

皮むき器と人参を手渡す飛鳥………こうしてみると式先生とよく作っていたなと思い出した……。


 夕方になると弟が帰ってきた。

「飛鳥! めし!」

その瞬間お玉を軽く叩く飛鳥……つぐみはまたやったと思った。かれこれ二年間三日に一度は繰り返される光景…。

「年上を呼び捨てにしない! あと、妹を一人で留守番させない!」

「うるせぇ! 後から来たくせに!」

つぐみはこうなるとこの場を納められる人を呼びに電話の短縮ダイヤルを押す。

「あっ、つぐみです……はい…」

受話器を置くと清二は飛鳥の髪を引っ張り飛鳥は清二のホッペタを指でつまんだ。今日も夕食は少し遅れるがその分煮込めるからいいかと思った。



 数分後……一人の女性が膨れる飛鳥と清二を宥める。彼女は館 瑞樹…父の妹で現在小説家だが官能専門である……自宅近くにアパートを借り其処を仕事場にしている。

「今回も清二が悪いっ、そりゃあ飛鳥は腹違いの姉だがが種は同じなんだ。つぐみなんて直ぐになれたんじゃねえか?お前も男なんだし……少しは」

「瑞樹叔母さんなんかに分からないよ!」

ハッシュドビーフだけはしっかり食べた清二は部屋と向かってしまった。

「お兄ちゃんも頑固だね」

可愛い顔して時々覚めた顔をするつぐみは言う。

「それより締め切り大丈夫なんですか?」

「ん? 追い込みに入っているから………う〜〜〜ん、飛鳥ちゃんのこれって美味しい!」

瑞樹のアパートにはもう1組の布団がある。飛鳥の避難場所も兼ねていて彼女にとっては有能なアシにもなるのだ。

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