家畜な日々
非現実:作

■ 〜追記〜2

肌に突き刺さる感覚が気になり、目を覚ました。
というか、今まで何故寝ていたのか、ソレまで何処で何をしていたのかすら思い出せない。
(ここは、何処?)
左右に目を泳がすが、覚えの無い場所。
そして、不思議と手足が動かない。
(ん〜……何故、肌がチクチク?)
視線を身体へと移す。

「え、えぇっ!?」

自分の現状に、驚きを隠せなかった。
それもその筈で…… ……。
裸のまま横向きで、更に寝ていた場所にはワラが敷いてあるのだ。
肌に突き刺さる感覚は、ワラだと確認できた。
(違うよ、そんな事よりも……何で私?)
改めて必死に何が起こったのかを思い出すが、思考は一向に空回り。
むしろ考えすら纏まらない位、頭の中は真っ白。

「お目覚めか?」

私の真後ろからの男の声だった。
本当に今まで気付かなかった。
そして、今までの事が脳裏に蘇ってしまった。
全てを思い出した…… ……。
今の私の現状、そしてこうなっている実態……。

背筋が凍る。


「大野……さん?」
「おはよう、由紀さん♪」

やけに楽しげな大野健三の声。
コツコツ……コツ。
後ろから私の目の前へと歩み寄った大野健三の姿が目に写る。
ソレまでの事を全て思い出していた私は、唇を噛み締めて睨む。

「せっかくの可愛らしい顔が台無しですよ?」
「あんたねぇっ!!」
「あのままだと、埒が明かなかったじゃないですか」

私の目の前で、ゆっくりと左右を行ったり来たりとする大野。

「それでね、考えたんですよ私」
「……」
「双方互いに解決出来る方法を、ね♪」
「…… ……」

卑下た笑みを浮かべる大野から視線を外して、吐き捨ててみせる。

「あんたってホント……救われない位のどうしようもない人ね!」
「ふふ、最高の褒め言葉かな?」
「こんな風にしないと女の1人も寄り付かないなんて、ホント哀れな男!」
「む……」

癇に障ったのか、大野の顔つきが少し変わった。
口調がガラリと変えて、大野が口を割る。

「お前は金が払えねぇが、俺は人員が欲しい」
「……」
「それなら、お前を家畜として育てて、酪農で働かせてよぉ。
尚且つ新しい商売でもしようかってな?。」

まさしく大野は悪魔の表情そのものだった。
初めて私は恐怖を覚えた。

「どうよ、名案だと思わないか?」
「あんた……本気?」
「当たり前だ、これならもっと金も潤うし楽して稼げるんだ」
「…… ……狂ってる、よ」

狂気以外何者でもない。
この男は本当に狂った人間だった。
この男が憎いとか、そういう感情は全て虚無となり、自身のこれからにただ恐怖する。

ナニガ、ドウナルノカサエ、ワカラナクナル。

これは、狂った世界で夢を見ているだけだ。
私は半分理解出来ない思考に、無理矢理を叩き込んだ。

「さぁ、たっぷりと稼いでくれよぉ」


悪魔、大野健三の声は既に、私の耳に届かない……

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