君の瞳の輝き
あきんど:作

■ 第二部5

   そして現在・・・

 鈴は目が覚めるとまぶしい電気の明かりに手をかざして目を覆った。
「ここはどこだろう?」
 周りを見渡して自分が今どこで何をしているのか考えようとした。
 そして今見た夢を思い浮かべてみた。
 確か、数ヶ月前にバーの客室のソファーで母の裕美子の旦那に身体を奪われたときのことだった。
 なんであのときのことを・・・
 鈴は考えて気がついた。

「そうだ・・確かビデオの撮影で、男の人に身体をいじられて我慢できなくなって・・・」
 鈴は思い浮かべてみてなんて自分が破廉恥なことをしたんだろうと、赤面した。
 だんだんと記憶がよみがえってきた。「はいカット!!!!」
 その声でようやく終わった安堵感から身体が崩れて・・それから・・シャワーを浴びて・・
 控え室のソファーでうとうとして・・・眠ってしまっていたんだ・・。
 身体には毛布がかけられていたが身体がじんじんする。特に女の子の大事なところが・・。
 鈴は立ち上がりソファーの脇においてあった私服を見つけて着替えた。
 おそるおそるドアをあけて周りを見回すと、さっきまでのスタジオに加藤さんや倉田さん・・
 ほかにも何人かスタッフがあわただしく片付けに入っていた。
近藤「おー鈴ちゃん。目が覚めたかい。どう、気分は?」
 近藤は鈴を見つけると笑いながら近づいてきた。
鈴「何とか大丈夫です。身体がじんじんするけど・・それよりあの、私これから・・どうしたら・・」
近藤「そのことなんだが、君のおうちに電話して撮影が終わったんで迎えに来ていただきたいって言ったんだけど・・」
 鈴は近藤の言葉をじっと聞いていた。
近藤「お母さんはお店が忙しいので送ってきて欲しいっておっしゃって・・それで今誰が良いか相談していたところだよ」
 鈴は母がこられないのにがっかりしたが、よく考えれば今日の撮影の内容を知られたくなかったのでそのほうが都合が良いと考えた。
倉田「僕が送っていきますよ。」
近藤「本当かい。そりゃ助かる。頼むよ。」

こうして鈴は倉田の運転する車で鈴の自宅のある神戸まで帰ることになった。
倉田の運転する乗用車の助手席に鈴が座り、車はスタジオのある大阪を後にした。
鈴は大阪の夜景を見てあの日のことを思い浮かべてみた。
小学4年生の誕生日のことだった。
父と母が誕生日ケーキを買ってきてくれてロウソクを立ててお祝いをしてくれた。
鈴はこの楽しいひと時をもっと過ごしたかった。
みんなが寝静まった深夜、鈴はトイレに起き、リビングのテーブルにロウソクが残っていることに気がついた。
あのきれいな光をもう一度見たい・・鈴はそう考えてロウソクとライターを持ち、玄関で火をつけた。
ろうそくの灯りはきれいな炎を描いていたが、鈴の手にはロウが垂れ落ちてきて「熱っ・・」鈴はロウソクを投げ出した。
玄関には冬の暖房用の灯油が置いてあった。ロウソクの火は瞬く間に灯油に燃え移りあっという間に家をのみこんでいった。
炎の中父が鈴と母に「逃げろ!」と言っているのが聞こえた。だがすぐに天井が崩れ落ち父の声はそこで途絶えた。
燃え墜ちる自宅を見ながら母は泣き崩れていた。
消防の捜査で火の出所が玄関だと知りそこにロウソクの燃えカスがあったことから母はすべてを悟った。
その日から母の心は散った枯葉のようになった。
火事の責任を背負い鈴の一家は苦しい生活を余儀なくされた。
そんな時あの男がやってきた。

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