清めの時間2
ドロップアウター:作
■ ずっと一緒に……2
部活が休みになったので、わたしは久美ちゃんと一緒に帰りました。
わたしは、まだ頭が混乱していました。忘れなきゃって思うのに、どうしても思い出してしまって……ビデオ誰かに見られないかなとか、次はいつ「清めの時間」があるんだろうとか、つい色々と考えてしまいました。
久美ちゃんもそれを察してか、歩きながら、しばらくお互いに何も喋りませんでした。
やがて、雨が降り出しました。
朝は晴れていたので、二人とも傘を持っていません。なのに、どんどん土砂降りになっていくから……どこかで雨宿りしようか、それとも走って帰ろうか迷いました。
すると……久美ちゃんが、わたしの制服の袖をちょんと引っぱりました。
「ねえ……」
「ん?」
話しかけられたことにほっとして、わたしは久美ちゃんの言葉を待ちました。
「この後……お風呂、一緒に入らない?」
「……えっ」
予想もしなかったことを言われて、びっくりしました。お風呂なんて、家族とさえもう何年も一緒に入っていません。すごくドキドキして、久美ちゃんの顔をまともに見られませんでした。
「香帆ちゃんと、背中流しっこしたいな」
さっきまで泣いていたとは思えないくらい、久美ちゃんはおどけて言いました。わたしは、さっきビデオであんな姿を見てしまった後だから、それが痛々しく感じられました。
「うん……いいよ」
少しうつむき加減で、そう答えました。
「うそ……本当に、いいの?」
あっさり了承したから、久美ちゃんは驚いた様子でした。
「いいってば。あんまり言うと、照れちゃう」
おどけるというよりは、正直に言いました。顔が本当に火照ってきています。
ためらったけれど、今は……久美ちゃんの望むことなら、何でもしてあげたいって思いました。だって、あんなに心配してくれたから。
「でも、急にどうして?」
「え……だって」
理由を尋ねると、久美ちゃんはちょっと言いにくそうに答えました。
「香帆ちゃん倒れる前に、あたしに『恥ずかしいよ』って言ったでしょう?」
「ん……そうだっけ」
正直、全然覚えていません。
「だから、あたしのも……見せないと不公平かなと思って」
「やだ、そんなこと気にしてたの」
わたしは親友が愛おしくて、思い切り抱きしめたくなりました。
ビデオで久美ちゃんの裸を見てしまったことは、黙っていました。わたしも、それがちょっと罪悪感でした。だからどっちみち、お互いさまです。
「でも……今日だけ、だよ。恥ずかしいから」
久美ちゃんのずぶ濡れになった顔を見つめて、わたしは微笑んで見せました。
「それと、あんまり……じっと見ないでね。わたし、スタイル良くないし。ブラも……まだしてないんだよ」
「照れちゃって。あたしさっき見て、香帆ちゃん……胸とかお尻の形、すごいきれいって思った。そのうち、男子とかに狙われるよぉ」
「やだぁっ、からかわないでよ」
そうやって二人でじゃれ合いながら、雨の中を歩いていきました。
この先、もっと嫌なことされるんだろうなって思いました。わたしはそんなに強くないから、次もきっと耐えられないです。
でも、こうやって傍にいてくれる友達がいるなら、もう少しがんばれる気がします。どんな辛い目にあっても、ずっと一緒に……
「清めの時間2」完結
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