国取物語
しろくま:作

■ 6

ボルス「うおぉぉぉぉ!!!」
ボルスが無謀にもオーガに向かって突進する。するとオーガは、抜き手でボルスの身体を貫いた。
ボルス「がはっ!!!・・・畜生・・・」
クリス「ぼ・・ボルス!!!」
しかしボルスは、先ほどの爆薬のピンを抜き、オーガの口の中にねじ込む。捕まえるためにわざと接敵したのであろうか。
オーガ「むがっ・・・・き、貴様!!!」
ボルス「3・2・1・・・死ね!!!」
オーガの口の中で大爆発が起こる。普通の人間ならば粉々になるほどの爆発だ。強靭な身体を持つオーガは原型こそ留めていたが・・・
この戦いで生き残った者は25人・・・ボルスもその後、息絶えた。
クリスはレオナたちを救出する。レオナはその後も、相当な暴行を受けたのであろう、意識が朦朧としている。
レオナ「あ・・・く・・りす・・・」
クリス「レオナ!!! ごめんね・・・でも、もう大丈夫だから・・・」
そして4名を救出した騎士団は洞窟を後にする。辛くも勝利したが、失ったものは大きい。クリスは泣きながら城へと向かった。



アレク「そうか。ボルスが・・・・」
アレクも悲しい顔をしている。もちろん騎士団の総大将を失い、実際問題として、厳しい状況におかれてはいる。しかしそれ以上に、1人の友人を失ったことへの悲しみが大きかった。
クリスもまだ、ボルスを失ったショックから立ち直ってはいない。
そして翌日、あの洞窟では葬儀が行われた・・・
ちなみに被害にあった女性はレオナを含め8名。最初にさらわれた2人は、いまだ発見されていない。オークたちも、一枚岩ではないようだ。
レオナの心の傷はまだ浅く、翌日からクリスと話しをすることが出来た。しかし、他の女性は心を病み・・・・・
レオナが一番心配していたことは、自分が妊娠したのかどうか、それだけであった。仮に、交配が可能であっても妊娠したかどうかは分からない。
医者は「きっと大丈夫だから」と励ましていたものの、それは気休めである。あれだけ大量の精液を、それも何度も何度も流し込まれては・・・
あのような化け物に犯される、ただそれだけでも相当ショックであろう。しかし、化け物の子をその身に宿すなど、あってはならないこと。もし、妊娠してしまうようなことになったら彼女は・・・
しかし、クリス達に心を落ち着かせる暇などなかった。

兵士「アレク様!!!」
突然、ある兵士が王の部屋に飛び込んでくる。
アレク「どうした? 血相を変えて。」
何も知らないアレクは、まだ落ち着いていた。
兵士「スーザンが・・・スーザンが侵攻を始めました!! 先ほど軍を動かし始めたのです!」
アレク「何だと!? 和平協定を結んだばかりなのだぞ? それに、スーザンはまだ軍を出せるほど兵が残っていまい?」
たしかに先の戦争で、スーザンの軍は壊滅的な打撃を受けた。今は最低限度の人数しかいないはずである。
兵士「そ、それが・・・スーザンの軍は・・・人間ではないのです!!」
そう、今侵攻を始めた軍は、そのほぼ総てがオークで結成されていた。中にはオーガの姿も見える。恐らく、オーガが指揮を出しているのであろう。
アレク「まさか・・・オークは・・・スーザンが!?」
スーザンは生物科学が進んだ国ではあった。オークが出没し始めたのは終戦の1年後。もはや疑う余地はなかった。
実際、知られてはいないが生物兵器の実験は5年以上前から進んでいたらしい。しかし、ロマリアのような、即戦力に繋がる兵器とは違い、戦争には間に合わなかったようである。
アレク「おのれ・・・しかし、応戦するしかあるまい!」
アレク「第2、第3、騎士団の団長をここへ集めろ!! そして、大砲の準備も進めておけ!!!」
兵士「はっ!!」
そうしてクリス達は呼び出された。
クリス「なんですって!? スーザンが?・・・こんな時に・・・」
アレク「いや、こんな時だからこそ攻めてきたのだ・・・ここ最近の、一連の事件は恐らくスーザンの手によるもの・・・」
クリス「そ、そう言えば・・・オーガが、自分のことは何も分からないって、レオナが言っていたわ!」
そう、オーガ自身には、なぜ自分がロマリアで暴れているのかを、まるで理解していない。
アレク「ふむ・・・ロマリアを混乱させるために、オーガどもを利用したとも考えられる。」
クリス「しかし、あのオーガが、強靭な肉体を持つオーガが、素直に人間の命令を聞くとも思えないわ?」
クリスは、オーガの恐るべき戦闘能力を、身をもって思い知らされた。そのため、スーザンがあのオーガを操っているなど信じられない。あのオーガを操れるはずなどない、と・・・
アレク「しかし、現実にオークの軍は侵攻を始めている!!」
アレク「よし! 全兵力をもって応戦する! 各騎士団は兵士団を引き連れ、第4、第5騎士団と合流! その後攻撃を仕掛けろ!!」
また、戦争が始まってしまった・・・

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