黒い館
けいもく:作

■ 1.レイプ1

 わたしは、ふと思います。若い女が一人で山を歩くというのは、危険なことではないでしょうか。

 もちろん、山は危険です。でも、わたしの身体は、男の欲望の対象となっていないのでしょうか。

 だけど、そのときのわたしの気持ちは、そうしたことに頓着する余裕がないほどにすさんでいたのかもしれません。

 わたしは、ひとりで山道を歩いていました。そして、山は雄大でした。恋に破れ疲れはてた、わたしの感傷なんかとは無関係にそこに聳えていました。甘えを許さない厳しさでした。

 そして、運命的ともいえる出会いがありました。

 わたしは足をすべらせたのを覚えています。それから後のことが、夢か現実なのかはっきりしません。妄想は性的でした。

 男の年齢がよくわかりませんでした。少年のようでもあり、青年のようでもあり、中年のようでもありました。

 Tシャツとスラックスをむしり取られたわたしは、下着だけで逃げていました。パンティに泥がついていました。いいえ、全身が泥だらけでした。それでも、逃げる以外にすべがありませんでした。

 泣き、叫び助けを求める声は、遠くの山にこだまするようでした。しかし反応は、それだけでした。時おり、小鳥のさえずりが聞こえるくらいで、山は静まり返っていました。

 男には、余裕がありました。体力の差は歴然としていました。

 口元に笑みを浮かべているのがわかりました。ひどく下卑た笑みでした。男がわたしをどうしたいのかもわかっていました。

 走る速さも違いました。男の手が私の肩の後ろをつかみました。わたしは、蛇ににらまれた蛙でした。

 立ちつくしたまま、頬を平手で打たれました。二度、三度と繰り返され、痛さにわたしは抵抗をあきらめました。

 全身の力が抜けていくのがわかりました。わたしは男のなすがままでした。

 男はポケットからナイフを取り出し、ゆっくりとした動作で私の顔を刃先でなぞるように触れさせました。男の下には、恐怖に脅えるわたしがいました。

 ブラジャーとパンティが切り裂かれました。たそがれ時の斜陽が、ふくらんだ乳房を照らしていました。

 いいようのない屈辱感でした。女は男の性欲を満たすことができます。わたしは、道具でした。わたしは、道具としての務めを果たさなければなりませんでした。犯される覚悟はできていました。

 男は乳首に吸い付いてきました。掌で乳房をもみ、中指と人差し指の間に挟み、盛り上げてからでした。男に焦る必要はありませんでした。自らの欲望に忠実に、そして、優雅な趣味を楽しむように、わたしを扱えばいいのでした。

 男の口は、右の乳首から左の乳首に移りました。わたしの身体は無反応でした。男が少し悔しそうな顔をしたような気がしました。男は丹念に両の乳首を舐めていました。

 そして、その口がわたしの唇をふさぎました。男の荒い息遣いを感じました。唾液が開いたわたしの口に流れ込みました。汗の臭いが、鼻をおおいました。舌を差し入れられて、もわたしには、歯をたてることさえできません。

 男は勝ち誇っていました。あとは、時間をかけて、戦利品を堪能すればよいだけでした。

 いったん、わたしから離れ、自らの服を脱ぎ始めました。意外と貧弱な体つきだと思いました。ただ男性器だけは十分に膨張しているような気がしました。

 男は、わたしを抱きしめ、今度は、一転して優しい愛撫を繰り返しました。髪をなぜ、腋の下から足の甲まで舌を這わせていきました。そして下腹部、広げられた股間にまで、男は、気のすむまでなめればいいのでした。

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