黒い館
けいもく:作

■ 6.愛子さんと香子さん1

 真菜ちゃんの次は愛子さんなのでしょう。服を脱いで順番が来るのを待っていました。

 そして、裕美さんの話も続きました。

「女は、万歳するような形で縛られているでしょ。お館様も寄り添うように隣で寝て、右手はローソクを持っていても、左手はあいているでしょ。手枕をしてくれて、『我慢してくれるかい?』 耳元でやさしくささやかれると、その時は、どんなに熱くっても耐えぬこうとおもうの。耐えてお館様に喜んでもらおうって。でも、蝋が落ちてくれば、そんなこと忘れてしまっている。ただ、熱さから逃れようと暴れまわっているだけ」

 裕美さんの話は生々しく、真菜ちゃんの態度はけなげでした。半開きの口から呻くような吐息とかすれた声が聞こえました。それは、鞭打たれた回数を示す数字でした。

「夜伽をする女には、代わりがないの。だから、一旦、お館様のベッドに入ったら、自分の身体でお館様を喜んでもらうしかない」
 のぞまれれば朝まででした。

 裕美さんは、香子さんのことを言っているのだと思いました。

 お館様が、夜にセックスをする時は、愛子さんと真菜ちゃんと香子さんが交代で相手を務めるはずでした。

 安全日以外は、コンドームを使うにしろ、自分の子宮で精液を受け止め、お館様が欲するように身体を捧げなければならないことは同じはずでした。

 ただ、お館様が乳房に蝋をたらすのは、香子さんだけだと先刻、裕美さんもみとめていました。

 執拗なまでに蝋をたらされ、泣きじゃくる香子さんに、お館様はどのようにセックスをさせるのでしょうか。

 足を縛られていないのも、暴れる香子さんを力ずくで犯すためかもしれません。苦しみ、もだえる、香子さんを、お館様は余裕を持って、見ることができるはずでした。

 妖しく動く膣部を見つめながら、お館様は、欲望を燃やしていくのでしょうか。

 陰毛をかきわけ、香子さんが、もっとも見せたくない部分を指先でこじ開けるようにして、そのサーモンピンク色に、血走った眼を向けるのでしょうか。

 それはあるいは、女をレイプする時と近い感覚なのかもしれませんでした。

 真菜ちゃんの鞭打ちは「10」と数えたところで終わりました。

 次は、愛子さんがお館様にキスをして、真菜ちゃんと同じようにひざまずいて、股間を開け、手を頭上で組みました。

「明日香さん、これが終われば愛子と真菜にあなたを送らせることにします」
 お館様が言いました。

 愛子さんも始めて聞いたのか、「えっ」というような顔で、わたしを見て一回頭を下げました。人のよさそうな笑顔でした。でも笑顔を見せている場合でもありませんでした。

 お館様の鞭は、真菜ちゃんの時と同じ強さで、ただ、愛子さんの場合は、胸をとらえていました。

 愛子さんは、身構えていませんでした。突然の痛さが愛子さんを襲いました。愛子さんは、「ウッ」という呻き声を出しながら、正座するようなかたちで、その場にしゃがみこんで呆然としまいました。

 お館様は、愛子さんのわきの下に手を入れ、ささえるようにしながら、ひざまずいて背筋を伸ばす姿勢に戻し、乳房を手で触りながら、そこに傷がないのを確かめてから、乳首を口に含みました。

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