黒い館
けいもく:作

■ 6.愛子さんと香子さん3

 現実に、三歩もはなれていないところに胸を突き出して、手を頭に乗せて、鞭で打たれている愛子さんの姿がありました。

「その頃は、まだ、真菜ちゃんがいなくて、わたしと香子さんと愛子さんが交代でセックスの相手をしていた。今じゃあ、すっかり補欠になってしまったけど」

 裕美さんは、自嘲するように言いました。でも、わたしには由美さんは。十分すぎるくらい美しく魅力的に見えました。

「その日の夜は、わたしの番だった。ベッドに入ってしばらくすると、『愛子を縛ろうとしたロープがあっただろう。持ってきてくれ』と言ったの。わたしは、ロープを渡しながら、お館様は、本心では愛子さんに逃げられたことが、悔しくて仕方がないのだ、と思った。そしてその悔しさを私の身体ではらそうとしていることも知った。

 愛子さんほどではないけど、わたしもどちらかと言えば、巨乳系でしょ。少しは愛子さんの身代わりができるかもしれないと思ったわ。そして激しい責めを覚悟した」

「10」を数え終わると、愛子さんへの鞭打ちは終わりました。おやかた様は、ほんのりとピンク色をした乳房をなめ始めていました。

 愛子さんも最早、手を頭の上に乗せる必要がなくなったので、両手でおやかた様の頭を、あたかもそれが大切な宝物であるかのように抱きしめました。

「ベッドにグルグル巻きね、何本もロープをとおされて、ほとんど身体を動かせない状態にしてね」

 裕美さんは、下を向いて「ククッ」とおかしさをこらえきれないような素振りを見せました。

「15センチのプラスティックの物差しね。あれを曲げて、元に戻る力で、わたしのおっぱいにあたるようにするの。何て子どもじみたことをするのだろう、と思ったけど、たたかれてみるとけっこう痛かった。

疲れてくると横に寝て、しばらくわたしのおっぱいを吸って、それからまた物差しでポンポンとたたくの。夢中になって没頭しているみたいに、その繰り返しをいつまでも続けていた。

わたしが音を上げて、『もう、許して』言えば、きっと許してくれたと思う。でもその時の私は、それは言ってはいけないことばだと思った。

たとえ愛子さんの身代わりでもかまわない。お館様が、わたしをたたくことで気がおさまるのなら、好きなだけたたかせてあげようと思った」

 次は、香子さんの番でした。香子さんは脱いだばかりのブラウスとスカートをていねいに折りたたんで椅子の上に置きました。香子さんのことだから、心の準備はできていると思いました。気負いを感じさせない自然な動作でした。

「そんなことが、朝まで繰り返されて、わたしは涙も止まらないし、洟もかめないし、でもとにかく我慢した。朝日を見ながら、やっとお館様がセックスをする気になったみたい。ロープを解いてもらって、私の上半身なんか、汗やら、鼻やら、涎やら、もちろんお館様の唾も混ざって、もうベチョべチョ。お館様がタオルで拭いてくれて、そのままわたしを抱き寄せて、対面座位っていうのね、それでつながったのだけど、私の中に性器を入れながら『やせ我慢はするな』って、笑われた。でも、喜んでくれているってことはわかった。わたしは、とにかく務めを果たせたと思った」

 裕美さんは閨房の中まで赤裸々に語っていました。

「そのあとで、朝食を食べにキッチンに行ったのね。愛子さんがもう来ていた。わたしたちの朝ごはんも作ってくれた。赤い眼をしてね、どうやら、昨晩、眠れなかったのは、わたしだけではなかったみたい。愛子さん、鞭打ちから逃げ出してしまった自分がよほど悔しかったのね。わたしに、『昨日のロープはどこにあるの?』って聞いた。さすがに、『一晩中わたしを縛っていたのよ』なんて答えられないじゃない」

 裕美さんは笑いました。

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