黒い館
けいもく:作

■ 12.真菜ちゃんの失態2

 その日、真菜ちゃんは、いつもより少し前戯が短いかなと思ったのですが、それでも、お館様のものを膣で挟み、精液を体内で受け入れたつもりだったのです。そして、お館様の欲望を抜き取ったつもりだったのです。

 もともと、真菜ちゃんが当番のときは、お館様は、乳房を舐め、お尻を舐め、自然のままに楽しんで子宮に精液を注ぐことができればいいくらいに考えていました。それでも、その若くて新鮮な身体は、お館様に十分な喜びをもたらせてくれました。

 ただ、香子さんや愛子さんが当番のときは、もっと激しくサディスティックな方法で責めたてていたのでした。

 たとえば、香子さんの場合は、ベッドの四隅に手足を固定してから、責めるのがつねでした。

 香子さんは、服を脱いでベッドに上がると、まず、お館様から二本の縄が手渡されました。香子さんは深く頷くと、自らの足首をベッドの隅に繋いでいきました。

 手首はお館様の役目でした。そうして、動けなくなった香子さんを見つめながら、お館様はその責め方をじっくりと、考えるのでした。

 机の引き出しを開ければ、裕美さんが買ってくれた何本かのバイブレーターがありました。その中には、かつて、裕美さんと二人で住んでいた頃に使っていた懐かしいものもありました。

 いくら見つめても、裕美さんの汗も涙も、もちろん、愛液も残っていませんでしたが、今の香子さんと同じように、ベッドに縛りつけた裕美さんに、何度も使って、泣かせた、思い出ぶかいバイブレーターでした。

『香子ならこれくらいのものを使っても、大丈夫だろう』とかってに考え、大きめのものを一本抜き取りました。

 電池を入れ、スイッチを押すと、ブーンとモーターが回る音を立てて震えはじめました。

 その音を聞けば、動けないでいる香子さんにも、自分が、これから何をされるのか察しがつくはずでした。

「今から、おまえにこれを使ってみようと思うのだが」

 お館様は、わざと見せつけるようにバイブレーターを香子さんの顔の間近にやり、了解を求めるふりをしました。

 香子さんには、『否』も『応』もありませんでした。

 もちろん、香子さんにとっては、はじめて使われるバイブレーターでした。

 その形のグロテスクさ、大きさ、振動の激しさ、眼前で見せつけられれば、脅えを感じずにいられませんでした。

『これがわたしの身体に使われたとき、わたしは、なおも正気を保ち続けることができるだろうか』と思いました。

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