黒い館
けいもく:作

■ 17.香子さんのロウソク責め1

そしてドアを開けると、裸の愛子さんが床に正座して三つ指を付いていました。お館様はその仰々しさに驚きました。

「何やってるんだ?」

「お館様を待ってたんですよ」

「待ってたって、ずーっと?」

お館様は時計を見ました。愛子さんが入室する時刻から40分近くが過ぎていました。

愛子さんはうなずきました。

お館様は愛子さんが正座をして待っている間、真菜ちゃんとプロレスごっこに興じていたのでした。

「ごめん」
やはり心苦しさは否めませんでした。
「とにかく立って」
お館様は愛子さんの手をとり、支えて立たせようとしました。

「ちょっと、待ってよ、足がしびれて」

「おれの首につかまって」

お館様は太ももと腰の下に腕を入れ、愛子さんを持ち上げました。

愛子さんは女性としては重量級でしたが、何とか持ち上げることができ、男の威厳が示せたと胸をなでおろしました。

「ありがとう。お姫様抱っこしてもらうなんて生まれて始めて」

愛子さんは抱きついたまま、唇をお館様の唇に重ねました。

だけど、お館様の愛子さんを待たせてしまったことへの罪滅ぼしはそこまででした。

当番と言うのは、女性はお館様の快楽を保障しなければなりませんが、お館様が女性に快楽を与える必要はありませんでした。

それを不公平だと叫んでみても仕方がありません。当然のこととして受け入れることが必要でした。

だから、愛子さんは裸で床に正座してお館様を迎えようとしたのでした。

それが、お館様が遅れてきたことにより滑稽なものになってしまっただけでした。

そして、お館様はばつの悪さからか愛子さんをいつもより厳しく責めることに決めていました。

「今日は、ビデオを見せてやろう」

どうせ、お館様の見せるものだから、いかがわしいものに決まっているのですが、愛子さんは妙な胸騒ぎを覚えました。

モニターが映し出されると、アイマスクを着けた裸の女の人がベッドに仰向けになっていました。開いた股間はベッドの隅に繋がれていて閉じることができず、手は腰の下で縛られているのだと思いました。

「香子さん?」
愛子さんは、お館様に遠慮がちに尋ねました。

お館様は、「黙って観ていろ」と答えましたが、モニターに映されているのは紛れもなく香子さんでした。ということは、男はお館様でした。お館様が自分で撮影したものでした。

そして、ビデオの中のお館様は、いつもより、数倍は残酷でした。いえ、もしかすれば、愛子さんが知らないというだけで、香子さんに対しては普通のことをしているだけなのかもしれません。

香子さんは乳房に蝋を落とされていました。火の点いたロウソクを香子さんの胸に近づけたり遠ざけたりしながら、お館様は、悪い楽しみに興じているのだと思いました。

その楽しみとは、普段は凛とした美しさ漂わせている、香子さんをはずかしめることだったのかもしれません。もだえる香子さんを見つめるお館様の顔に笑いが浮かびました。

お館様は愛子さんの腕をつかみ、身体をひざの上に抱き寄せました。

そして、手にお館様のものを握らせました。愛子さんの手はとりあえず、やさしく握り締めていてくれればいいのでした。

自らが撮影したビデオでも、香子さんの乱れる姿に性的な興奮を覚えるのはやむ得ないことでした。

状況に応じて愛子さんの肩を舐め、乳房を揉み、指を性器に差し込み、すくい出した愛液を舐めることができるようにしておくべきでした。そして、多くの愛液を採取するには、愛子さんの乳房を長く揉み続けることが必要でした。お館様はそういう労力を厭う人ではありませんでした。

うまくタイミングをはかり、乳房を揉めば、いえ、下腹部を少し激しいくらいになぜたほうがいいのかもしれません。現実の愛子さんのあえぎ声とビデオの中の香子さんのうめき声が、ハーモーニーを奏でてくれるはずでした。お館様は是が非でもその二重奏が聞きたいと思いました。

だから、もうしばらくは愛子さんの肩を舐め、乳房は軽く触れるだけにしておこうと思いました。

ただ、その悔しさを紛らわせるために、愛子さんの乳首を爪先で、あたかもテーブルに置かれた10円玉でも飛ばすかのように弾きました。

その弾き方に、力を込めすぎてしまったために、愛子さんは、「アアッ」と声をあげて驚き、ひざの上で全身を震わせました。

でも、その時には、まだお館様がどういう方法で愛子さんの乳首に痛みを与えたのかわかっていませんでした。愛子さんは、それを聞こうとは思いませんでした。

同じ方法で第二撃、第三撃の痛みを与えられるとしても、防ぎようがないと思ったからでした。だから、愛子さんの乳房は、無防備のままでした。

片方の手はあいかわらず、お館様のものを握り、微妙な強弱をつけていました。それを続けることが、今の愛子さんの役目でした。自分の乳房を守ることより大切でした。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊