黒い館
けいもく:作

■ 17.香子さんのロウソク責め3

それは泣き叫んでいるという感じでした。たとえ、少しでもこの地獄のような熱さから逃れたい、香子さんにはそれ以外のことが考えられないのかもしれませんでした。

それほどまでに、香子さんへの責め方は厳しかったのでしょうか。

「ギャアーッ、グォー」とかの濁音の叫び声の合間に、「もう、かんにんしてください」、「許してください」といった哀願する声が混ざりました。

そして濁音の叫び声は、いつまでも変わらなかったのですが、発することばは、「ごめんなさい、もうしません」ばかりになっていました。

でも、香子さんは何も悪いことはしていません。もちろん、謝る必要もありませんでした。香子さんはお館様の性欲を高めるために泣かされているだけでした。お館様にしてもあやまって欲しいとは思っていません。

ただ、やめて欲しいと願う心が、薄れていく意識の中で、子供の頃にお母さんに叱られて、謝ったことばを繰り返しているだけかもしれませんでした。

香子さんの顔についた液体は、ほとんどが香子さん自身の汗とよだれと鼻水であったとしても、股間についているものは、お館様が香子さんにむさぼりついた時、残していった唾液でした。

もがいているだけの香子さんからでも、愛液が出ているのでしょうか。お館様は陰毛をかき分け、香子さんの股間をうれしそうに舐めていました。

だけど、お館様は香子さんの乳房は舐めませんでした。上に乗った赤い色のついたロウを手で払いのければ、舐めることもできるはずなのですが。あるいは、香子さんを泣かせた記念にもう少しそのまま残しておきたかったのかもしれません。

お館様は香子さんの唇を吸い、笑顔を浮かべながら、ロウソクを握りました。

そして、耳元で優しく、「次が最後だからな。がんばるんだぞ」とささやきました。それが悪魔のささやきなのか、天使のささやきなのかわかりませんでした。

香子さんは、わずかにうなずいたような気がしました。

最後のロウソク責めも今までと変わりませんでした。

あるいは、それは女性を鞭で打つ時のように、感情だけで加減をくわえないのが、お館様のポリシーかもしれませんでした。

だから香子さんは、最後まで泣き続けました。そして、お館様がロウソクの火を消したところで、ビデオも終わっていました。

ビデオを最後まで見た愛子さんは「すごい」と言って、ため息をつきました。

香子さんが当番の時は、愛子さんの時より激しく責められているのは知っていました。

時に朝まででした。朝食の時、疲れた表情とはれた瞼から徹夜で責められのだと思いました。

また、お館様も隠そうとしませんでした。服も着せてもらえず、身体に縄を巻かれて、食堂に来ることがあるのは香子さんだけでした。股間にまで縄を通されて、肩を抱かれて、あるいは、指先で乳首をつままれて、引かれてくることもありました。

そんな時のお館様は、責めた余韻のようなものが糸を引いて、香子さんを手放せなくなっているのだと思いました。意味もなく突然吸われるおっぱいは、お館様の唾液がからみついて、乾くことがありませんでした。

食べるときも縄をほどいてもらえず、お館様のひざの上で箸に載せた食べ物を少しずつ口に運んでもらっている姿は、飼い主に愛されたペットのような気がしました。口移しで飲み物を与えられても香子さんは拒みませんでした。

だから、香子さんはよく鞭で打たれたのかもしれません。そうでもしなければ、お館様は香子さんへの慕情を断ち切れませんでした。さすがに、二十四時間香子さんを抱きしめてることはできませんでした。

お館様は、愛子さんを向き合う形にして抱き締めてベッドに仰向けに寝かせ、そのまま上にのしかかっていきました。

愛子さんの豊かな乳房に口に含めば、久しく女性の乳房を舐めていなかったような気がしました。ビデオの中の香子さんの乳房を舐めていなかったからかもしれません。

乳首を歯にはさみひっぱったり、五本の指で押さえへこませて、乳房の形を変えて、遊んでみました。

愛子さんにはビデオの衝撃が強すぎたのかもしれません。しばらくは何も言わず、お館様にされるがままになっていました。

実は、愛子さんも乳房にロウをたらされたことがありました。でも、あそこまで凄まじいのはありません。

足は縛られていませんでした。

その代わりに、お館様は、仰向けになった愛子さんの恥骨の上に腰を下ろして、肩に両足を乗せました。

「ロウソク責めをするからな」と言って、愛子さんを見下ろしました。

愛子さんも、裕美さんや香子さんが、よくお館様に乳房にロウをたらされて泣かされていることは知っていました。それが熱くてつらいものだということは、容易に想像できました。

でも、その時のロウソク責めは、手を高く上げ、乳房に数滴落とされただけでした。

お館様が愛子さんを脅えさせて遊んでみただけの、身構えた愛子さんも拍子抜けしてしまう程度のものでした。

愛子さんは、「香子さんはいつもあんなに?」と聞きました。本当は、「ひどいことをされてるの?」と続けたかったのかもしれません。

「この時は、ビデオカメラを回していたので、つい激しくやってしまった」
お館様正直に答えました。
「それで、何となくひとりで見辛くって」

「わたしと一緒に見ようと思った?」
愛子さんは、少し、あきれたような顔をしました。

「それもある」

「Hなビデオは女と見るのが一番」
愛子さんは、乳房を吸われて少し落ち着いたのか、お館様の背中に手を回して笑いました。

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