狂牙
MIN:作

■ 第2章 ゲーム6

 俺は、テーブルにグラスをカツンと鳴らしながら置き
「おい、解禁だ。コレに見合ったサービスをして差し上げろ…」
 ぶっきら棒に女達に告げた。
 女達は一瞬で顔を輝かせ、着ているドレスを脱ぎ捨てて、全裸に成って床にはべり始めた。
 夏恵まで、立場を忘れ興奮に目を輝かせて、俺の足下に這い蹲っている。
 俺は溜め息を吐き、夏恵の頭に手を伸ばし
「俺の奴隷達は、まだ別の行き先が有るから、絶対に傷は付けないで下さい…」
 低い声で、男に釘を刺しておいた。

 男は、隣にいるマドラーを刺した女を膝の上に引き込みながら
「君のスタンスは知っているつもりだ、意に反するような事はせんよ」
 スーツの内ポケットから、スティック糊のような物を取り出し、尻に貼っていた応急処置の絆創膏を剥がす。
 途端に女の傷口から血が流れ、赤いドームを3っつ作る。
 男が女の傷口に、スティック糊を無造作に塗ると
「あきゅぅ〜〜〜ん」
 女は身体を仰け反らせ、顔を持ち上げて眉根に皺を寄せ、泣きそうな顔をする。
 女の3っつ空いていた穴から血が止まり、肉が盛り上がって傷口を鬱ぎ、白いかさぶたが作り出された。

 俺の目線が鋭くなり、雰囲気がザワリと騒いで揺らめくと、男はスティック糊をテーブルに立て
「私の所で開発中の[携帯用細胞活性剤]だ。効能は変わらないよ。反応時間は5倍に延びたが、[反応滓]の毒性は1/10,000に抑えている。1、2回服用しても人体に影響は与えない程度には改良出来た…」
 俺に説明して、ニヤリと笑い
「この手の女だったら、こっちの方が良いかもしれんな」
 女のオ○ンコに、指を差し込み掻き混ぜた。
 男の言う通り、男に抱えられている女は、その痛みを快楽に変え、何度も連続で絶頂を迎えている。
 男の弄ぶオ○ンコは、白い粘り気のある愛液を垂れ流し、ビクビクと震えていた。

 俺は自分の奴隷の反応にも、男のテクニックにも驚きはしなかったが、男の差し出した薬に驚いた。
 それは、有り得ない薬だからだ。
 元々、[マテリアル]で使われている[細胞活性剤]は、反応滓の強い毒性のため常用は避けられている。
 まぁ、100gチューブ1本が50万円もする薬を常用する馬鹿は居ないだろうが、それにつけてもリスクの有る薬である事は間違い無い。
 その毒性が抑えられたと言えば、この薬の使用者は爆発的に伸びる筈である。
 それは、誰もが知っており、誰もが思っている事だった。
 それ故、今目の前にある薬は、誰もが開発に着手し、未だ形を得ていない筈の物だった。
 そう、本部ですら作る事の出来無い物を、この目の前の男は実用レベルで成し得ていた。

 俺の全身に緊張が漲る。
 自分に推し量れない事態に、俺の身体が反応したのだ。
 途端に女達は、冷水を浴びせられたようにビクリと震え、顔を強張らせる。
「こらこら、そんな怖い顔をしてはいかんだろう…。私が楽しめないじゃないか」
 男はとぼけた笑顔で、俺の雰囲気を掻き消そうとした。
「あんた…何者だ…」
 絞り出すように吐いた俺の質問に、男は一切答えず
「私は君のような人間…、嫌いでは無い…。だが、快く思わない者が多いのも事実だ…。君のスタンス…、もう少し力を付けてからの方が良かったな…。いや、力を付けそうなのが、ネックに成っているのかな…」
 膝の上の女を降ろしながら、両手を組んで身体を乗り出し、微笑みながら囁いた。

 男の肘がテーブルに乗り、組んだ両手に顎を載せ俺をニコニコと見詰める。
 押し黙り見詰める俺の雰囲気が、更に剣呑な物に変わると
「若い者は良いね…、その持つ牙が誰にでも突き刺さると思っている…。だが、忘れちゃ成らんよ…、年老いた獣には、長年研ぎ澄ませた爪があると言う事を…」
 ニコニコと微笑んだ表情はそのままで、真っ向から俺の気配を押し返してきた。
 女達の時間が凍り付き、息すら止まってしまう。
 それ程、俺と男の気配は殺気を孕んでいた。

 俺と男は数十秒睨み合い、お互いを探り合う。
 だが、その時俺は気付いた。
 この緊張した空気は、俺の気持ちその物だという事に。
 そう、俺は得体の知れない男に、怯え、警戒し、敵意を剥き出していたのだ。
 女達を凍り付かせた気配は、俺が放つ物で、男はそれを同じ量、同じ質で受け止めただけだった。
 俺は自分が怯えていた事に、途端におかしくなり、全身の緊張を解いた。
 すると、フッと掻き消すように、店内の空気を撓めていた、殺気が霧散する。

 女達はその落差に顔を青ざめさせながら、ゼェゼェと荒い呼吸を繰り返した。
「失礼しました…」
 俺は男に向かって、スッと頭を下げて謝罪すると、男は身体を背もたれに戻しながら
「これで、ユックリと愉しめるな」
 ニコニコと笑いながら、静かに告げる。
 俺は苦笑いを浮かべ、目の前のグラスを一息に飲み干すと
「お前達で、俺の非礼を詫びてくれ」
 女達に告げる。
 これは、この男が俺の客人で有り、奴隷達がその全てを掛けて奉仕する事を了承する言葉だ。
 女達は俺の言葉で、こぞって男に傅き奉仕を始める。
 男はそれをニコニコと受け止め、俺の女達を嬲り始めた。
 そして、俺の店は淫卑な空気に満たされる。

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