狂牙
MIN:作

■ 第5章 血の連鎖1

 白亜の豪邸の一室
 チャプチャプと湿った音が響く。
 全裸の女が2人ソファーに座る男の股間に座り込み、顔を降って居る。
 女の1人は、涙を流し、もう1人は、ウットリとした顔で、舌を使っていた。
 涙を流して居るのは、今年40歳に成る女だが、その姿はどう見ても、20台後半である。
 もう1人は、まだ若く18〜20で、顔の雰囲気は、良く似ていた。

 年上の女は名前を美沙と言い、若い方は久美と言った。
 久美は美沙の娘で有り、美沙は娘の身の安全を条件に、危険な[潜入]任務を行っていた。
 美沙は天童寺の命令通り任務を達成し、30分程前に屋敷に戻って来たのだ。
 直ぐに美沙の前に、少し成長し、美しく成った娘が現れた時には、美沙はホッとした。
 天童寺は約束を守り、極端な改造は久美に行わず、五体は揃っている。

 だが、その直ぐ後に美沙の表情は凍りついた。
 少しはにかみながら、美沙を見て
「初めまして、身の回りをお世話させて頂く奴隷で御座います。名前などはまだ与えられておりませんので、お好きなようにお呼び下さい」
 正座して、床に額を擦り付けて挨拶した。
 その視線、その行動、その言葉、全てが美沙に愛娘が[初対面]だと、本気で言っている事を教える。
 呆然とする美沙の耳に、天童寺の哄笑が響き
「約束は守ったぞ。そいつは、新薬の実験に使った。大脳に働く薬品で、脳内の伝達系統を白紙化する。こいつには、お前と関係する一切の記憶を白紙化したが、実験は成功だったな。ハハハハッ」
 天童寺の言葉の意味を理解した、美沙の膝から力が抜ける。

 良顕の優しさを受け、それを裏切らなければならない美沙は、この1年血を吐く思いだった。
 だがそれは[娘の無事のため]その自分の大儀のために、[仕方が無い事]と恩を仇で返してしまう。
 そして、待ちに待った愛娘との対面。
 自分の1年が報われる日に、美沙は絶望を味わったのだ。
 目の前の愛娘は、人として無事で有ったが、娘としては死んでいた。
 無垢な視線を向ける、娘を前にして美沙は号泣する。
「う、うわぁ〜〜〜っ! ひ、酷い…。酷すぎる!」
 良顕の優しさや思いやり、力強さや支配力、それらを全て裏切って得た代償は、あまりにも惨い物だった。

 泣き崩れる美沙に、天童寺は止めを刺す。
「その女は、お前専用の肉便器だ。ちゃんと肉便器として扱わんと、気が触れるぞ。お前がウイザードクラスの催眠術師なら、暗示を解く事も可能かも知れんがな。ははははっ」
 天童寺の肉便器は、只の物でしかない。
 排泄物の処理は元より、あらゆる痛みを受け、恥辱を晒し持ち主を楽しませる。
 所有者に取っては、欲求の発散物であり、生きた便所だった。
 その存在は、器物と同じで有り、愛情などを注ぐ存在ではない。
 責め抜かれ、虐め抜かれ、奉仕し続けていないと、肉便器は容易に精神のバランスを壊してしまう。
 そう、深層心理に植え付けられた奴隷達だ。

 美沙は、人がましい生活を送らせてくれた良顕を裏切り、その報酬として、自らの手で愛娘を傷つけ陵辱する日々を与えられた。
 この時美沙が、精神のバランスを崩さなかったのは、皮肉にも裏切った筈の良顕の言葉があったからだった。
 [マゾなら、マゾで良い。それに合った人を見つければ、それで良いだけだ。支配を望む間は、俺が支配を与えてやる。望む事を目指して努力していれば、いつかは笑える日が来る筈だ。俺は、それを信じる]
 良顕が初めて、相手をしてくれた時、美沙の目を優しく見つめて言った言葉が、美沙を踏みとどまらせた。
(良顕様…申し訳御座いません…。これは、美沙の贖罪です。素晴らしい日々を有り難うございました…)
 美沙は良顕に心から謝罪し、地獄の生活を受け入れる。

 絶望に打ち拉がれる、美沙を見ていた天童寺は
(ふっ、1年で随分と塗り替えられたな…。それが奴の影響力か…。だが、それも遅い…、もうゲームは[詰み]の状態だ…)
 美沙の心境の変化を読み取り、鼻で笑う。
 天童寺が背中をソファーに預け、足を開いた。
 その動きで周りの奴隷達が反応し、動き出そうとするが天童寺は目で制し
「おい、何をしている。1年で忘れたのか?」
 美沙に向かって問い掛ける。
 美沙は顔を跳ね上げ、天童寺に視線を向け、直ぐに視線を久美に向けると、久美は既に発情し持ち主の言葉を待っていた。

 天童寺は、奉仕を命じない。
 その行動を見て、判断するのが奴隷達の仕事だ。
 美沙は悲しそうな視線を天童寺に向け、全てを諦めた表情を浮かべ
「ご主人様にご奉仕するわよ…」
 小さく呟いて、這い進む。
 久美は美沙の身体を追い抜き、天童寺の股間にむしゃぶりつくと
「ご主人様、ご奉仕させて頂きます」
 嬉しそうな声を上げ、天童寺のチ○ポを呑み込んだ。
 その姿を見ながら、美沙は久美の横に並び口淫奉仕に加わる。

 美沙達が口淫奉仕を始めて、20分程が経つと、1人のメイド服を着た美しい女性が近付き
「ご主人様。ラボからご連絡が入っております」
 携帯電話を差し出しながら、深々と頭を下げる。
 連絡は、ラボの所長からで、小夜子(由梨の本名)から連絡が入り、それに対してブラインドが掛かって居たと言う物だった。
 天童寺は、通話を切ると
([ブラインド]? この期に及んで、まだゲームに直接関係する情報を隠していたのか…。タダでは潰されんと言う事か…)
 ニヤリと笑い、美沙の髪の毛を掴むと、奉仕中の美沙を引き起こす。

 突然髪の毛を掴まれ、膝立ちを強要された美沙だが、ここでは全て天童寺の意志の赴くままだ。
 何をされても、全てを受け入れなければならない。
「おい、叶が何に対して、[ブラインド]を掛けたか覚えているな? 今、小夜子に関する[ブラインド]は、何個有る?」
 天童寺の質問に
「私が確認出来たデーターは、一昨日の夜のbT8迄で、その中には小夜子様の[ブラインド]データーは有りませんでした」
 美沙が即答すると
「と言うと、昨日今日の話しだな…。何か心当たりはないか? 有益な情報なら、娘の暗示を解いてやるぞ…」
 天童寺は少しだけ考え、美沙に再度問い掛ける。
 美沙は天童寺の褒美を聞き、必死に記憶を探るが、思い出せたのは朝方の警報騒ぎだけだった。

 それを聞いた天童寺は
(警報? 何か、トラブルを抱えたか…。本部は静観を約束しているから、それでは無い筈だ…。他の組織か…? いよいよ奴も、悪運が尽きたか…)
 美沙の髪の毛から手を離し、興味を無くしたように2人を蹴り倒して
「こいつらを部屋に案内してやれ」
 壁際に待機する、美しい奴隷に命じる。
 恭しく頭を下げた奴隷は、2人の背中に鞭を浴びせ、追い立てるように部屋を出て行った。
 これから、美沙と久美の2人は、地下に有る一室で、二人だけで生活する。
 肉便器になった娘の精神が壊れないように、陵辱の限りをつくす日々が始まった。

 美沙が部屋を出て行くと、直ぐに小夜子から連絡が入り
『ご主人様、最終段階に入りたいと思います。孝司を1週間留守にさせて下さい』
 天童寺に依頼して来た。
「1週間? 計画ではまだ早いし、期間も1ヶ月の筈だ。その間の貸し出し調教は、どうするつもりだ?」
 天童寺が訝しそうに問い掛けると
『事情が…変わりました。貸し出しは…、勝負が付いた後に…して下さい』
 小夜子は言葉を選びながら、切れ切れに通話する。

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