狂喜への贐
非現実:作

■ くたびれた街6

「オマタせたね、ハイ」
「とある依頼を受けてる・・・捜索だ」
「ソうなの」
「男性でな、行方不明なんだよ」
「・・・ソう」

目黒は小出しに説明しつつ、李の反応を見ていた。
頭が上がらないとは言えど李も情報を迂闊には引き出さない。
言ってみれば駆け引きである。
李にとってみれば、この情報を提供して大丈夫かというのは常に頭で考えるのは当然である。

「男性が自由意思も無く消える、というのは随分と妙だと思わんか?。
彼は結構良い所に努めているし、家族間では全く問題も無かった。」
「・・・ ・・・ ・・・」

何気なくだが、目黒は強い意思を込めてゆっくりと言葉を選び発言をした。
頭の良い李は何が言いたかったのかを即時に理解したのだろう。
小さく頷いた李が口を開いた。

「結論ハ・・・無いネ」
「無いか」
「無イかもしくハ、聞いてナイのどちらかネ」
「・・・邪魔したな」

目黒は飲みかけのコーヒーを李に手渡しして立ち上がった。

「モう帰るカ?、今日は随分と早イのネ」
「待ち合わせてんだよ、まぁまた来るわ」
「裏口からカ?」
「普通に打ちに来るよ」
「ソ、久々に目黒サンと打ちたいヨ」

せせら笑いながら目黒はカウンターを跨いで表の店側から出て行った。
外は丁度夕暮れ差し迫るという感じで、ビル群は赤く染まっていた。
今日は穏やかな気候とテレビで言っていたが、さすがにこの時間帯は寒さが身に染みる。
目黒は煙草に火を付けて集合場所へと歩を進めた。
(流石に李に情報が来ないというのは無いだろう・・・)
見事に予想は外れたのは幸いと思う。
どこぞの組織が佐伯タカユキを拉致したとなると、もうお手上げである。
それこそ警察に駆け込むしかない。
人を拉致・解体・輸送するのには大掛かりになるし、表も裏も顔が利く李も何かしら手を貸してるだろう。
李は決して嘘は言わない、情報を提供するかしないかの2択だけだ。
それでああもハッキリと「無い」と口にしたという事は信用できる。
(佐伯は犯罪に巻き込まれた訳では無いと・・・)
だが、これで正真正銘捜査は迷走した訳だ。
(さて・・・どうしたもんかねぇ)
冬の夕暮れは早い。
太陽が傾くにつれ、凍て付くような寒さと闇が同時にやって来た・・・。



暗い・・・暗い・・・
いや暗いという話どころではない。
闇という言葉が相応しいだろう。
この世界はオカシイ・・・
いや自分がオカシイのか?。
オカシイのだろう。
天井も床も解らない程に気が狂っている。
狂喜狂気驚喜・・・果てしなく狂った世界で溺れ続けている。
時間という概念は既に捨てられた。
この世界にはそんなものいらない。
目に映るものは自分に跨る1人の少女のみ。
それだけで十分だ。
他には何もいらない。
行為に溺れ、自分がよく解らなくなるまで果てしなく快楽に酔いしれる。
もう何も解らない。
怖いんだ。
恐ろしいんだ。
男性器がビクンビクンと波打ち、チョロリとごく僅かな精液を出した。

「ンふぅ・・・」

少女は自らの膣で受け止めた精液を指ですくい、小さな舌で舐めとり喉へと流し込んだ。
そして・・・ ・・・ ・・・

再び少女は腰を動かしだす。

どうしてこんな事になったのだろうか?。
狂気の宴は終わりがないのだろうか?。
怖い怖い怖い怖い怖い。
もう嫌なんだ。
もう止めたいんだ。

「元気なくなっちゃった?」

跨る少女は淫らな笑みで問うた。
コクコクと、男は激しく首を縦に振る。

「そんな事ないよ、私の中にいるコは十分元気だよ?」

男は首を横に激しく振る。

「まだまだよぉんもっと頂戴ぃ〜〜濃くてネバッこい精子」

狂気だ狂っている。
夢でも見ているのか、男はゆっくりと瞼を閉じた。

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