虜囚にされたOL
木暮香瑠:作

■ 寂しさと愛しさの狭間4

 会社が終りマンションに戻った麻希に、一人の空間が寂しさと恐怖を感じさせた。麻希は、明かりも点けないままカーペットの上で膝を抱いたままじっと座っていた。どれくらいの時間が経っただろう。窓の外はすっかり暗くなり、時折、車の通る音がするだけだ。

 突然、携帯の着信音が鳴った。液晶画面に表示された相手の番号は、麻希の知らないものだ。
「だれ? 誰なの? こんな番号……、知らない……」
 見知らぬ相手からの電話に、麻希は不安を感じた。不安というより恐怖さえ感じる。
『夜にでも電話をしますよ、ハハハ……』
 昼間、太田隆一に言われた台詞を思い出した。
(えっ? 太田産業の副社長……?)
「いやっ!!」
 麻希は、携帯を放り投げた。隆一が言った言葉を、振り払うように顔を激しく振った。

 麻希は、恐る恐る携帯を手に取った。呼び出し音は、ずっと前に鳴り止んでいる。何もしないでいると寂しさと孤独感が増してくる。誰かの声を聞きたくて、麻希はプッシュボタンを押した。数回の呼び出し音の後、携帯が繋がる。
「亮輔さん? 何処にいるの? 会えない? 今すぐ会いたいの……」
 孤独感が麻希を早口にする。
「まだ会社だよ。早くこの仕事を終わらせたいんだ……、麻希の為にも。だから、今日は……会えない……」
 亮輔は、麻希を気遣い優しく言う。
「辛いだろうけど、我慢してくれ。誰も部屋に入れるんじゃないぞ、いいな!」
 亮輔は、太田親子が再び麻希を凌辱に訪れるんじゃないかと心配する。
「うん、判った……。ごめんね、わがまま言って……」
 麻希は、携帯を切った後もディスプレー画面を見つめていた。画面には、通話時間が表示されている。ほんの数十秒の会話だった。
「亮輔さん……」
 画面を見つめたまま、麻希は呟いた。

 じっとしていると、どんどん不安が大きくなっていく。麻希の神経は、ちょっとした音にさえ敏感になっていた。マンション前の道を通る車の音が、麻希を嬲りに来る太田幸造のものに思えてくる。風の音さえ、忍び寄る太田隆一の気配に感じてしまう。

 麻希は、いつの間にかカーペットの上に膝を抱え横たわっていた。
「亮輔さん、すぐ来て……。傍にいて欲しい……」
 亮輔が来れないことは理解している。しかし、今日だけは傍にいて欲しかった。切なさに涙が、麻希の頬を伝った。
「あっ、……」
 麻希は、短い呻き声を上げた。タイトスカートから伸びた両太腿を擦り合わせ、指先がショーツの上から縦裂を撫ぜていた。無意識のうちに、スカートの中に掌を忍ばせていたのだ。
(わたし……、こんなときに何してんだろう? いやっ、……)
 しかし、孤独感に苛まれた麻希には指の動きを止める事は出来なかった。
「はあ、はあ……、亮輔さん……」
 指はだんだんと強く亀裂を押さえ込んでいく。もう一方の手は、服の上から胸を弄っている。

「抱いて……、亮輔さん、抱いて……」
 服の上からだけでは満足できなくなった麻希は、掌をブラジャーの中に忍び込ませた。昨晩の亮輔の荒々しい愛撫を思い出し、指先に力を込める。
「も、もっと強く……。すき……、好きよ、亮輔さん……」
 ブラウスの中で、豊満な膨らみに指が食い込んだ。

 ショーツの中でも、五本の指が蠢いている。中指を蜜壷に埋め込み、残りの指でもっこりとした柔肉を弄る。
「いいっ、もっと……、もっと深くまで……ああ、突いて……」
 秘孔を弄る指を二本に増やし、そして奥深くまで差し込んだ。
「いいっ……気持ちいいっ、太いのがいいの、ああ、いい……」
 麻希は、抜き差しを速くする。熱く熱を持った媚肉が指に絡み付いてくる。

「ああっ、ああっ、あハン……、もっと……ねえ、もっと、亮輔さん……」
 妄想の中で淫花を割り押し込まれた怒張は、亮輔の物より太く棹全体にブツブツとした突起があった。
「うっ、ううっ……、はあ……」
 麻希は背中を退け反らし、切ない呻き声を上げた。秘孔に差し込まれた麻希の指は、妄想の中の物に比べあまりにも細かった。
「も、もっと太いのを……」
 麻希は、強い刺激を求め腰を突き出す。
「えっ? いやっ……」
 麻希は恥辱に頬を染めた。妄想の中で求めていた怒張が、亮輔の物でないことに気付く。それはまさに、昨日、麻希を悩ました太田の物だった。妄想の中であっても、亮輔以外を求めている自分が恥ずかしかった。

 官能が萎んでいく。しかし、指の動きを止めることが出来ない。萎んでいく官能が、もっと強い刺激を求めて肢体の中を苦しげに蠢いている。
「どうして? ああ、どうしてイけないの? ああ……」
 寂しさと虚しさは、癒されるどころか募ってくるばかりだ。麻希は、蜜壷に埋めた指を抜くことが出来なかった。一人の部屋の中、麻希は身体をくねらせ、今まで以上に激しく指を動かした。

 切ない悶々とした夜は、時間だけが過ぎていった。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊