女麻薬捜査官和美
若光:作

■ 家畜編2

 海上を行く和美は、また便器に小水を落とした。排泄をこらえる感覚など既になかった。「お前は、奴隷ですらないのだ。奴隷ならパンティー位は、はけるだろう」オリエンテーションでの男の言葉が、脳裏に浮かんだ。あのオリエンテーションの時、ふと和美は頭が軽く思えた。妙に頭がうすら寒いのだ。唾液の垂れる事など構わず和美は、顔を直立して頭部を左右の二の腕にこすり着けた。ザラザラした痛みが、二の腕にあった。髪が五分狩りにされていた。和美はあの時、一段と甲高いくぐもった声で、絶叫したものだ。活動しやすく少し長めのボブ・カットは、和美も気に入っていた。「お前が身につけられるのは、下の毛だけだ。髪の毛など邪魔なだけだ。かつら屋に売ってもよいがDNAで、足がついたらヤバイから焼却した」
 向こうに着いたら大小の排泄は所構わず、垂れ流しだそうだ。そんな家畜の自分が、一々排泄を躊躇しても意味なく思った。向こうでは汗をかきまくるそうだ。「汗で、汚れは流れていく。汗は最高の石鹸だ」そうだ。「馬と同じだ。どこでもヒリ出すし、風呂になど入る筈がないだろう」家畜として野外での使役中の雨だけが、水浴びだそうだ。船が南に進むにつれ、冷房などあるはずもなく、和美の身体を汗が伝いだした。量を増す汗は、上半身からのそれが和美の股間に集まり、確かに肛門と小水口を洗い流した。汗にまみれる自分の身体が、意外に清潔なのに和美は納得した。捕われて以来、風呂など入っていない。拷問の時もその後も、排泄は垂れ流しで、排泄器が拭かれたりされた事はない。立ち昇る自らの排出物と汗の臭いの中で、適度な塩気の二の腕の香りと腋香が、和美の唯一の救いだった。腋の下は、晒けだされて蒸れてさえなければ、決して悪臭を発しないと、和美は学習した。ヒップの下から、突き上げてくる和美自身から放たれた悪臭の中で、和美の汗はコロンにすら思えた。一つだけ和美には希望があった。和美の視界は、キーボードを叩かされたあの何分か以外、アイマスクに閉ざされたままだ。これだけ何も見せないという事は、自分が救出された後、組織の内実が漏れる事を恐れていると考える余地があった。。敵がここまで徹底的に視界を奪うなら、それは敵にも弱みがあるのであり、救出される可能性があると和美は、信じたかった。だがその時は、ここまでの屈辱の全てがあらわになる。最低限、裁判官の前では自分が受けた拷虐の全てを話さねばならない。それよりは、家畜の方がいいかとも和美は思った。


 更に何日か過ぎたのだろう。未だ健康を保ち、かつ不自然な体勢を強要される事が、トレーニング理論でいうアイソメトリックス(静的運動)の効果を発揮した。アイソメトリックス――筋肉に適度な負荷を与える事により、体脂肪の燃焼と筋肉の発達をもたらす――効果の、何日もの集中的継続は和美の肉体を著しく鍛え上げてしまった。眠り、というものではなかったろうが、ごく浅い眠りらしき時間が断続的にはあった。うたた寝と、言ってよいのかもしれない僅かなまどろみの間も勝手に筋肉には、負荷が掛かるのだ。給餌する男は、時々手を休め和美の乳房や腹をまさぐった。さすがに汚いからだろう、性器やアヌスには、決して手を触れない。和美は女として扱われていない家畜というより物なのかと思った。オリエンテーションの最後に、和美は多分四・五人だろう男から代わる代わるの凌辱を受けた。その時の男の言葉が、思い出された。

「お前が家畜ではなく、奴隷、つまり一応は人として扱われる事がある。それは性奴隷としてだ。俺達が、最初の味見をする」
 マットのような物を巻いたのだろうか、柔らかくもないが、耐え難い程固くもない、丸くて和美の身長を充分カバーできる長さの物の上に、あお向けにされ手足でそれを後ろで抱き抱えるように手枷同士、足枷同士が繋がれた。後ろ手の手枷と足枷が、これまた鎖で繋がれた。体重でマットは適度につぶれ、和美の乳房と性器が剥きだしに上に突き出されて、固定された。アルコールを湿した綿で性器からアナルにかけてが拭かれた。冷たさに和美としてはヒィーとでも言ったつもりの悲鳴を挙げた。もちろん口枷は、言葉としての意味を失わせた。和美のヒップの下にクッションらしき物が、詰め込まれた。いよいよ剥きだされた性器とアナルには、ゼリー状の何かが塗り込まれた。小刻みに和美は震えた。震えは乳房を不規則に振動させた。家畜から奴隷に身分が上がったとは、到底和美には、考えられなかった。高校の頃、面白半分の性体験はあった。ただ痛いだけでもうイヤだと思った。麻薬取締官になってからは任務ばかりで何もなかった。事実上ヴァージンも同じなのにと和美は呪った。
 男達は、犯す事に飽きるとあお向けをうつぶせに上下を逆にして縛り直し凌辱を続けた。今度は、アナルが集中的に狙われた。入る筈がなかった。先程の電極責めに使用したアヌスストッパーより、二回りは太い物が、和美のアヌスに捻り込まれた。絶叫する和美の口枷からは唾液が、アヌスからは鮮血が、したたりマットに染みた。水分が補給された分少量の小水が鮮血を薄めた。埋め込まれたアヌスストッパーのまま、和美のヴァギナは貫かれまくった。性的興奮など無縁の和美だった。男達は、最初の二回り位迄は精液を放出させた。順繰りの三回目辺りからは何も出なかった。だが、適度な交代により、充分に屹立するそれは、和美のヴァギナを責め抜いた。和美は、既に放心状態だった。性器は開ききり力も入れようがなかった。もう失神も出来なかった。失神の忘我に逃げ込むには、和美の感性は、錬磨され抜いていた。失神もできない自分が、和美は呪わしかった。やがてアヌスストッパーが、抜かれた。「おおぅー、ケツの穴ァー」と言って最初の男が、アヌスに屹立した男性器を入れた。入らなかった。「ケツの穴は無理だ。ケツの穴は、向こうの奴らに任そう。もうこんな女やる奴いないだろう。」だった。
 和美の性苦は、終わった。ようやく遠のきつつある意識の中で、和美は奴隷の時のみ女として、人としての扱いをされる事を学んだ。

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