哀妹:芽衣
木暮香瑠:作

■ 恥辱の体育館4

 川田の背中から開放された芽衣は、段違い平行棒の演技をしているところを撮影することになった。
「わたし、平行棒なんて出来ません。やったことないし……」
「大丈夫よ。ぶらさがるだけで良いから……」
「でも、10秒もぶらさがれないし……」
「ちゃんとかんがえてあるはわ……。そんなこともあると思って……」
 真由美の指示で、藤原が縄を取り出した。芽衣は、縄に恐怖を感じ、
「何するの? 縛らないで……。」
「大丈夫よ。平行棒から落ちないよう手首を縛るだけだから。でも、芽衣ちゃん、縛られるのも好きみたいね」
 真由美は、封筒の中の写真を覗き込みながら微笑んだ。
(真由美さん、だめぇ……。写真……見せないで……)
 芽衣は、写真を体操部員たちに見せられることを恐れて、指示に従うしかなかった。これ以上の人に兄との秘密を知られたくなかった。知られれば、あっという間に学校中の噂になってしまうことが怖かった。

 芽衣は、手首にタオルが巻かれ、縄で平行棒に吊るされた。芽衣は、だらりと吊るされた脚をもじもじと擦り合わせる。芽衣には、もう一つ気になることが合った。少し前からおしっこに行きたくなっていた。
(ああ、トイレに行きたい……。でも、みんなの前で言うの、恥ずかしい……)
 あと30分ほどで約束の時間は終わる。芽衣は、我慢することにした。股を擦り合わせる芽衣を見て、真由美は心の中でほくそ笑んだ。
(ジュースに混ぜた利尿剤、効いてきたみたいね)

「ちょっと汗が足りないんじゃない? 体操してんだからもう少し汗、かくんじゃない?」
真由美の提案に柴田は答える。
「そうだよね。霧吹きも用意してあるんだ」
 柴田が、鞄の中から霧吹きを取り出した。そして芽衣の顔に、シュッと霧を吹きかけた。暑い体育館の中、恥ずかしさに熱った身体に霧の冷たさが心地よかった。霧が、芽衣の腕、脚と次々と吹きかけられる。霧は、芽衣の身体に大きな水滴を作る。さらに霧を吹きかけると、やがて水滴は流れ出し、レオタードに吸い込まれていった。追い討ちをかけるように、レオタードにも霧はかけられた。水を含んだレオタードは、身体に吸い付き肌の色を透かして見せる。
「うおおぉ……、ビーチク、丸見え……」
 男子たちの声に芽衣は驚き自分の胸に目をやった。
「えっ、そんな……」
 白いレオタードは水を含み、肌の色と同化している。乳首の形はおろか、乳輪の色形まで透かして見せている。
「きゃーーーー、見ないで、見ないで……、そんな……」
 芽衣は、身体を捩るが無駄な抵抗だった。両手を吊るされた状態では隠すことさえ出来ない。追い討ちをかけるように、お腹から股間にも霧吹きの水が吹きかけられる。水に濡れたレオタードに、縦長の臍の形が、股間の翳りが浮き出てくる。
「すげぇーーー、丸見えと一緒じゃん……」
 男子部員たちは、目を丸くして見入った。
「い、いやっ……、み、見ないで……、恥ずかしい……」
 芽衣は、顔を真っ赤にしている。赤く染まった頬を一筋の涙が流れる。そんな芽衣に、女子部員たちは、冷たい視線を投げかけた。
「なに恥かしがってんの? 自分で透けるレオタード選んだんでしょ? 色気でも人気を得ようと思ってんでしょ」
「ほんと、いやらしい。乳首やお毛々まで見せて人気者になろうなんて……。涙も同情を得ようって魂胆でしょ」
「う、ううっ……ひ、ひどい……ち、違います、ううっ……」
 芽衣は、吊り下げられた身体を震わせ、涙を流した。

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