夢魔
MIN:作

■ 第22章 教師3

 狂が校長室を後にすると、後を追うように庵も出てきた。
 庵は大股で、狂に追いつくと
「狂さんはこれから、どうするんですか?」
 これからの行動を問い掛ける。
「俺か? 珍しいな…庵が俺の行動を気にするなんて…。ははぁ〜ん、何か相談事か?」
 狂が庵の行動に疑問を持ちながら、直ぐに推測して問い返した。
「ええ…時間が有ればで、構わないんですが…。俺じゃ、答えが出ないもんで…」
 庵はぶっきら棒に言いながら、狂の顔を真剣に見詰める。
(何だよ…こいつ…相当悩んでるみたいだ…。庵がねぇ〜…? 珍しいから、聞いてやろ)
 狂は興味をそそられ、場所を旧生徒会室に変え、相談に乗る事にした。

 旧生徒会室に入ると、庵が大きな溜息を吐いて、項垂れる。
(おいおい…。初めて見たぞ庵のこんな姿…何があったんだ?)
 狂は目を白黒させて、庵を見詰めた。
「おい、庵…何が有ったんだ…? 稔じゃなくて、俺に相談するって言う事は…、沙希の事か?」
 狂が先回りして、庵に問い掛けると、庵はガバリと顔を上げ
「な、何か聞いてるんですか? あいつ…何か狂さんに相談してるんですか?」
 狂の両腕を掴むと、ブンブンと振り回す。
 庵のパワーで振り回される狂は、首振り人形のように首をガクガク震わせ
「ば、やめろ! …死ぬ…死んじまう! 止めろー」
 必死で声を張り上げる。

 狂の悲鳴に気が付いた庵は、ハッと我に返り
「すいません…」
 ボソリと呟いて、狂の腕を放した。
 狂は首を揉みながら、苦痛の表情を浮かべ
「ったくよ! ゴリラ並みの力なんだから、常に気を付けろ! 首が飛んでくかと思ったぜ…。で、沙希がどうしたんだ?」
 庵に文句を言うと、話しを促す。
 だが、狂の催促にも、庵はジッと考えたまま、動かない。
「おい庵…」
 狂が業を煮やして、庵に話し掛けると
「変なんです…」
 庵がほぼ同時に話し始めた。

 狂は庵の言葉に
「何が変なんだ?」
 相の手のように問い掛け、話しを促す。
 すると庵は、ポツリ、ポツリと呟くように話し始めた。
「依然と全く、行動が変わらないんです…。いえ、むしろ更に積極的に、寄って来るんです…。まるで、俺がした話しを忘れているような…。普通では、有り得ない反応を見せて居るんです…。俺には、沙希が何を考えているか…全く解らないんです…」
 庵の告白に狂が、頭を捻りながら
「ま、待て…話しが見えねぇ…。沙希がお前に寄って行くのは、当然だろ? …ん…? 庵…、お前つかぬ事を聞くけど…。沙希に何言った!」
 庵の話しを分析し、それに気付いて庵に詰め寄る。

 庵は狂にいきなり、首を絞められ
「い、いえ…大した事じゃ無いんです…。ただ、[忘れろ]と言ったんです…」
 狂に告白する。
「言葉をはしょるな! てめぇ〜解ってるから、はしょってんだろうよ! そんなんで、相談がどうのとか言うんじゃねぇ!」
 狂が、庵に怒鳴ると、庵は観念し
「校長達をホテルに呼んだあの日に…、沙希に…前日、風呂場で身体を洗った事や、優しくした事を…忘れろって言ったんです…」
 全てを狂に話した。

 狂はポカンと口を開け
「馬鹿かお前は? そんな事…普通口が裂けても言わねえぞ…」
 庵の話を聞いて、自分の感想を、口にした。
「ですが…、ですが、俺の身体は、あいつを…」
 庵が感情を爆発させようとした時
「いや待てよ? おかしい…確かにおかしいぞ!」
 狂が庵の言葉を遮り、言葉を漏らした。

 庵は狂の言葉に、口をつぐむとジッと狂を見詰める。
 狂は考え込み始め、ブツブツと呟いていた。
「お前の言うとおり、おかしい…。沙希は、感情を殺して付き従えるタイプじゃない…。なのに、お前にそんな酷い事を言われ、落ち込みもせず感情を抑え込んで、今まで以上に接するなんて器用な真似、到底出来ない筈だ! あいつはそんな器用なタマじゃねぇ…。良くも悪くも直情型だからな…」
 分析を終えた狂は、庵に向かって、分析結果を話す。

 庵は少しムッとした表情で、狂の事を見詰めていた。
「ん、んだよ…睨むな…」
 狂が庵の目線に気が付いて、気圧されると
「余り良い気がしません…あいつの事をそんな風に言うのは…止めて下さい…」
 庵が視線を離し、ボソボソと言った。
「だったら、てめぇも、そんな事言うんじゃねぇよ! ったくよ、でっかい図体して、ちっちぇえ奴だな…。身体の事も、あいつは知ってんだから、ドシッと構えろよ! ましてや、治らねぇ訳じゃないんだからよ…てめぇのチ○ポ…。痛みさえ戻りゃ、受けれるんだろ? チ○ポの再生手術…」
 狂がそう言うと、庵はコクリと頷いた。

 庵のチ○ポは前腕の皮膚などを使い、形成する事が可能で有り、神経を繋げる事により感覚のあるチ○ポを作る事が出来るのだが、庵は後天性無痛症と言う、感覚障害を起こしているため、神経の接合が出来ずにいた。
 チ○ポの形成をするためには、先ず無痛症を直す必要が有ったのだ。
 その事は、庵は元より、稔も狂も知っている。
 そして、庵の無痛症の原因が、心因性の物で機能的には、何ら問題がない事も、稔の義父によって診断されていた。
 庵の場合は、回路が作動するための何かが足り無いだけなのだが、その何かが全く解らなかった。

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