夢魔
MIN:作
■ 第32章 崩壊63
純は稔の電話を受け、笠崎に向かって
「おい、大至急車を回せ! 俺の家までダッシュで帰る!」
真剣な表情で告げる。
「解りました、丁度近くに最適な車が御座います。それでお送りします」
笠崎は告げると、直ぐに携帯電話を取り出して、英語で話し始めた。
純は直ぐに正面玄関に向かうと、正面玄関前に外交官ナンバーの黒のキャデラックDTSプラチナムが止まる。
純と絵美が近付くと、直ぐに運転席から黒服を着た、1人の白人が降りてきて扉を開けた。
純と絵美が車に乗り込むと、滑り込むように運転席に戻り、DTSを走らせる。
男は文字通り大至急で、車を走らせた。
スピード違反、信号無視、その他交通違反のオンパレードで、純達を4分掛からずに自宅に届ける。
車を降りた純は一目散に、玄関に走るが絵美は顔面蒼白で、フラフラとしか進めない
「ご主人様、先に行って下さい…」
絵美はやっとそれだけ告げると、後ろから支えに来た運転手に助けられる。
「先に行くぞ!」
純はそう告げて絵美を置いて、玄関を潜りエレベーターに乗り込む。
自宅に着いた純は、パソコンの電源を片っ端から入れ、OSの起動を待つ。
時刻は22:15、純は自分の組み立てた、最新鋭パソコンの起動が、初めて遅く感じた。
◆◆◆◆◆
時刻は22:05、佐山から呼び出しを受けた柏木が、愛車のクラウンを走らせ、分院に到着する。
柏木はパーティーで酒を飲み、ほろ酔い気分で車を運転していたが、分院のエリアが見える場所に来ると、我が目を疑った。
(な、何だ…、昼間は何も無かったぞ…。それに、あの煙…間違い無い分院の方角だ)
月夜に照らし出される黒い壁と、その真ん中から立ち上る煙を見て、柏木の酔いは一気に醒める。
柏木はアクセルを踏み込み大扉に急ぐと、そこは柏木の想像を超えていた。
まるで、獣が暴れたように、ボロ屑の如く横たわる警備員と言う名のヤクザ達。
その身体は、有り得ない圧力を受け、文字通り壊れている。
柏木は蒼白の表情で、ヤクザ達の合間を縫い分院に近付くと、分院の前の交差点で一台のバイクが燃えていた。
柏木の目が、そのバイクの直ぐ近くで、半狂乱に成っている佐山を見掛け、車を止める。
柏木が車を降りて、佐山に近付くのと、佐山が柏木に気付くのがほぼ同じで、お互いが口を開く。
「どう成ってるんです、これは?」
「どう成ってるんだ、これは!」
柏木と佐山は、同時にお互いに問い掛ける。
2人はお互いに顔を見合わせ、睨み合ったが、立場の弱い柏木が視線を外し
「取り敢えず分院内に入りましょう…」
ボソボソと告げ、ポケットから鍵を取り出した。
分院の扉を開け、中に入った柏木は、その惨状に呆然とする。
先ず柏木の目に入った物は、綺麗に破壊された制御用のコンピューターだった。
ワナワナと震えながら、コンピューターに近付き、直ぐに分包機の異常に気付く。
貴重な薬物のストックが、全て空に成っていた。
柏木はそれを半狂乱で確認すると、ハッと我に返り直ぐに倉庫に向かう。
柏木は倉庫の状態を見て、ガックリと膝を落とし、項垂れた。
それもその筈、倉庫内の全ての完成薬物が、綺麗に無くなっていたのだ。
項垂れる柏木の背後に立ち、佐山がボソリと呟く
「大失態だな…。これは、全てお前の責任だ。俺の口から、直に報告するからな…」
佐山はそう呟いて、全ての責任を柏木に擦り付けた。
柏木は泣きそうな顔で、佐山の顔を見るが、佐山の顔を見た瞬間全ての反論を飲み込み
「はい、私の失態です」
あっさりと、自分の失態として認める。
柏木もまた、佐山の催眠術に掛かり、佐山の傀儡と化していたのだ。
佐山は分院の状態を見て、顔を歪めると
「これでは、あの小娘の洗脳も出来んな…。仕方が無い、心が折れるまで、使い回すか…」
ボソボソと呟いて、佐山に視線を合わせ
「おい、車に乗せてる少女の、処置をしろ…。道具として使うから、要らん機能は全て壊せ…」
冷たい声で命令する。
「はい、解りました。それでは、子宮と声帯を破壊し、全ての歯を抜歯して、手足のそれぞれの腱を20%ずつ切って自由を奪います」
柏木はそう答えると、フラフラと幽鬼のように立ち上がった。
柏木は診察室から、台車を持ち出すと、佐山の車まで行き、拘束された美香を台車に乗せる。
チアノーゼの浮いた美香は、殆ど自発呼吸が出来無い状態まで、追いつめられていた。
瀕死の美香をそのまま分院内に運び込むと、美香の拘束を解き手術台に載せた。
美香は拘束を解かれた物の、グッタリとし荒い呼吸を吐き、全身が痺れて感覚が無く成っている。
人形のように扱われ、美香はあっと言う間にマングリ返しの姿勢で、股間を天井に向け固定された。
柏木は、美香を人間として見てはいなかった。
完全に[処置を施す物]として、ぞんざいな扱いで、美香を固定する。
柏木はスーツのジャケットを脱ぐと、手術着を着込む。
だが、その手術着はかなりの量の返り血を浴び、どす黒く変色している。
柏木が羽織った手術着は、滅菌の為で無く、自分の洋服に血が付くのを防ぐ為の物でしかなかった。
無影灯の中に美香のピンク色のオ○ンコが、照らし出される。
柏木はそんな美香のオ○ンコに、器具を差し込み膣口を拡げ、子宮を引き出し子宮口を開いた状態で固定した。
柏木は虚ろな視線で美香を見詰め
「今から、子宮内膜の削除を行う。子宮内膜は海綿層・緻密層・基底層に分かれているが、緻密層まで剥ぎ取り、基底層を酸で焼くと、二度と再生しない。これは、一生涯生理が来ない状態だと思いなさい」
術式を美香に説明する。
その声も、どこか感情が欠落し、作り物のように聞こえた。
■つづき
■目次4
■メニュー
■作者別