夢魔
MIN:作
■ 第32章 崩壊74
女性徒達は立ち上がって、拓人と慶太の背後に隠れると、弥彦は外に向かって
「良いですよ、入ってきて下さい」
自分の家のように、外で待つ人物に声を掛ける。
「お邪魔します」
2人分の女性の声が聞こえ、その姿を見た全員が声を詰まらせ、固まった。
そこに現れたのは、恐怖の風紀委員長と副委員長だったからだ。
「この2人と、この後手を組む事に成ったんで、僕達の関係を秘密にする必要が無くなったんです。で、紹介とミーティングがてら、ここにお呼びしたんです」
弥彦の簡単な紹介に、拓人と慶太は声を合わせ
「え〜っ!」
大声を上げる。
弥彦は拓人達に悦子が操られていた事や、理事長の思惑、これからの行動を説明した。
その説明は俄に信じられない物で、最初は全員眉を顰めていたが、悦子と薫が女性徒達に何度も謝罪し、その真剣さに触れ、徐々に真剣味を帯びる。
話が進むにつれ、女性徒達もご褒美のおねだりなど、どこかに飛んで行き、その重要さに聞き入った。
学校と生徒達を守る為、全員が結束するのにそう時間は掛からなかった。
◆◆◆◆◆
学校に教頭が戻ってきた時、それは始まっていた。
2匹の家畜奴隷がリヤカーを引きながら、学校の校庭を走り回っている。
そのリヤカーは2台有り、片方に伸也、片方に東が乗って、鞭を振るっていた。
2人が追い掛けるのは、残りの3匹の家畜奴隷である。
追われる家畜奴隷の身体には、無数の釘が刺さっている。
伸也と東の手には、騎乗鞭とネイルガンが持たれていた。
ネイルガンとは、圧搾空気を使い、特殊な形の釘を打つ物で、通常では壁に押しつけ無い限り、釘が出る事は無いが、2人はセィフティーを解除し普通のエアガンのノリで少女達に釘を飛ばす。
ローザが抜けた家畜奴隷、7匹を使い伸也と東が狩りのつもりで、遊んでいたのだ。
2匹横に並んで、リヤカーに固定された家畜奴隷の後頭部に付いている、鼻フック固定用のリングピアスに手綱が掛けられ、御者に成った東と伸也が引っ張って追い立てる。
強くひっぱっられる為、ピアスの根本から血が流れていた。
家畜奴隷のお尻には、無数の鞭の跡が幾筋も走り、手足から血が滲んでいる。
恐らく何十分もこの馬鹿な遊びに、酷使され続けたのだろう。
最早人間扱いなど、全くしていない。
その姿を見た教頭が顔を真っ赤にし
「何をしている!」
東と伸也を一喝する。
その声を聞いた、東と伸也は教頭に視線を向け
「あ〜ん? 何してるって? 見りゃ解るだろ、遊んでんだ」
「おい、おっさん。俺達に文句でもあるのか?」
東が小馬鹿にして、伸也が恫喝した。
だが、その2人に教頭は怯む事無く
「お前達がしている事は、度が過ぎると言ったんだ! 今すぐその馬鹿な遊びを止めろ!」
教頭が2人に命令すると、2人はリヤカーから降りて教頭に近付いて来た。
その顔は、明らかに反省している物では無く、こうるさい親父を排除しようと言う顔である。
2人が恫喝を込め、教頭を見下ろすが、教頭は一歩も引かない。
教頭もサディストとして、大きく自分を変えたのだ。
暴力を駆使するだけが、サディストでは無い。
支配し慈しむ事が、サディストだと教頭は気付かされ、この一方的な陵辱者に真っ向勝負を挑んだ。
東と伸也は当然のように、教頭を殴り飛ばした。
だが、どれだけ殴りつけようと教頭の視線に、一切の怯えは無く、凛とした態度で家畜奴隷を擁護し続ける。
教頭は文字通り、ボロボロにされたが、一切引く事は無かった。
それどころか、その意志を強め、2人を睨み付ける。
それは、純に触れ[心を折らない事]を学んだからだ。
実際腕力に劣る者が、奴隷を持ったとして、女性を危機から守る為に必要不可欠な物がそれだった。
[自分の身に何が起ころうと、奴隷に危害を与えさせない]その意志がない者に、奴隷を持つ資格は無い。
教頭はそれを学び、実践した。
東と伸也はその教頭の気概に押され、次第に殴る手から力が抜ける。
2人には、教頭を殺してまで、この遊びを続ける意志がなかったからだ。
「ちっ! シラケちまった…。もう良い、東さん俺の奴隷で遊びましょう…」
拳を赤く腫らしながら、伸也がそう言うと
「ああ、こんな爺さんに舐められるのはムカ付くが、ぶち殺しても仕方ねぇ…」
東も手を止め、伸也に賛同する。
2人は教頭をうち捨て、管理棟に向かった。
教頭はボロボロにされながらも、満足そうな笑みを浮かべ、校庭に大の字に成った。
その教頭に、奈津実と留美子が涙を流しながら、リヤカーを引いて駆け寄る。
「あう、あう、あお〜」
2匹の家畜奴隷は、教頭の身体に縋り付き、不自由な口で声を張り上げ泣いた。
「お、お前達…わ、私は…大丈夫…だ…。それより…、身体は…大丈夫…か…」
教頭はニッコリ微笑みながら、2匹に話し掛ける。
奈津実と留美子だけで無く、他の家畜奴隷にされた女性徒も全員が集まり、心配そうに教頭を見詰めた。
7匹の家畜奴隷に見守られる教頭に、1人の影が近付く。
「あんた、男だったわよ…。見直しちゃった…。最初は、只のヒヒ爺だと思ったけど、ちゃんといっぱしのご主人様じゃない…」
キサラは、そう言うと家畜奴隷達を、リヤカーから外し奈津実に薬と鍵を放り投げ
「ラウンジの鍵よ。あんた達を守った、ご主人様に[お返し]をしなさい…」
ニッコリと笑って、静かに告げた。
2人は大きく頷くと、教頭の両脇を抱え、職員棟に向かう。
その後を、5人の家畜生徒が追い掛けて行く。
教頭はこの後、ラウンジで7人の家畜奴隷の献身的な看護を受ける。
この事件を機に、奈津実と留美子だけで無く家畜奴隷達の信頼は、教頭に集まった。
■つづき
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