投稿者:Mr.M |
――えっ、やはり、今朝のあの子が”ちなみ”なのか… もしそうなら、香は現実の世界を小説に仕立てているってことなのか?
「そんな訳ないな、あはは」
小説は、明日の朝、お前の真意を確かめてやるとのBlog主の命令で終わっていた。
――ふっ。 何か面白いな。 ついでだ。
真介は明日の朝、もう一度駅に行ってみる気になっていた。
◆
ケーキ工房ロートンでのアルバイトを終え、綾がマンションに戻ったのは、22:30を少し過ぎた頃だった。
綾はこのアルバイトをとても気に入っていた。
コンクールで何度も入賞した神内シェフの経営する店で、人気のスウィーツショップだ。
綾は、この店の喫茶ルームでウェイトレスとして働きだして3週間ほどになる。
おしゃれな店の雰囲気と、メイドのようなユニフォームも綾の好みだ。
持ち前の愛想良さと笑顔で、たちまち綾目当てと思える男達が度々訪れるようになっていて、『可愛いね!』と声を掛けられる事も満更ではなく、尚のこと懸命に接客に努めた。
オーナーの神内シェフも綾を可愛がってくれ、店の人気者となった綾を『あんな親父やお兄ちゃん達に度々ケーキを食べに来させるなんて、綾ちゃんも罪な事だね〜』とからかいながらも大事にしてくれているのが実感できる。
今日も、50歳前後と思われる綾の父親と同じ年頃の男が、本を読みながら時折綾にねめつけるような視線を送り、店の看板まで2時間も粘っているのを神内シェフが気にして、マンションまで車で送ってくれたのだった。
「シェフ。 ありがとうございました。 じゃ、おやすみなさ〜い」
ペコリと会釈して、マンションに駆けていった。
「ふふ。 可愛い子だ。」
車を出して店に向かう道、神内は久しぶりにときめきを感じていた。
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