「脱ぎなさい」「はい……」
ドロップアウター:作

■ 羞恥の舞い2

 少女が全裸になると、私はすぐ指示を出した。
「そこに立って」
 部屋の真ん中辺りを指差した。そこなら、体の動きを全部見ることができる。
「あっ、ちょっと……すみません」
 少女は脱いだパンツを手早く丸めて、学習机の下に入れた。
 こんな時にも、この娘は律儀に衣服を畳むのか。日頃の習慣だろうが、その何気ない動作に感心する。母親は入院中と聞いたが、務めは果たしているようだ。よく躾けられている。
 下着を置くと、少女は指定された所に立った。
「……ここですか?」
「ええ……隠さないで。両手は体の横にくっつけて、胸を張りなさい」
「あっ……はい」
 私にきつく言われると、少女は股間に添えていた左手を離した。
別に怒ったのではない。こんな時下手に優しくすると、ためらう余地を与えてしまうのだ。少女は真面目だから、少し気の毒だとは思うが。
 少女の体は、かなり幼さを残していた。乳房はほんの膨らみかけで、すっぽりと掌に収まる程度の大きさだった。恥毛もまだ生えてなくて、股間の亀裂がはっきりと見えた。剃ったわけではないらしく、表面がつるつるしていた。
 泣くかなと思ったけれど、少女はきゅっと唇を結んで、恥辱に耐えていた。裸身で涙をこらえる姿は、本当に美しかった。だから、もっと虐めたいと思った……
「じゃあ、まずは挨拶の仕方からね。いつも部活の時やっている、始めと終わりの礼……してみなさい」
「はい」
 少女は返事すると、体の前で両手を揃えて、深くお辞儀した。
「今日も、お稽古に励みます。よろしくお願い致します」
 上体を起こすと、今度は畳の上に正座して、三つ指をつく姿勢になった。そして、深く頭を下げた。
「……また精進できました。ありがとうございました」
 少女の声は震えていた。いつもの挨拶も、裸で言わされると辱められた気分になるのだろう。表情もこわばって、ひどく緊張している様子だった。
「合格よ、森川さん」
 私は少女に告げて、立つように促した。
「声はちょっと小さかったけど、背中を曲げる角度、手の位置……中学生としては文句のつけようがないわ。さすが、ずっと日舞を習っていただけあるわね」
「あっ、ありがとうございます……」
 少女は戸惑った顔をした。私が普段ほとんど生徒を褒めないから、少し困惑したかもしれない。もっとも、こんな状況で言われても素直に喜べないだろうが。
 私は少女が立ち上がるのを待って、小さな扇を手渡した。
「次は、今練習している二曲、舞ってみなさい」
「分かりました」
 少女は扇を受け取ると、一度深呼吸して、引き締まった表情になった。全裸ということを除くと、部活の時に見せるいつもの姿だった。
 だが、いざ踊り始めると、少女の頬はみるみる赤くなった。動けば動くほど、自身の恥ずかしい部分を強調してしまうのだから、無理もなかった。途中、ちょっと涙ぐんでもいた。
 それでも、少女は一生懸命に舞った。畳の上で膝を曲げてターンし、流れるように足を運びながら、扇を美しく操った。胸や下半身を露出して泣きそうになりながら、精一杯の気力で踊っていた。
 一曲目が終わると、少女は膝を抱えて座り込んだ。
「まだよ、森川さん。もう一曲踊りなさい」
「はい……」
 そう返事したものの、なかなか立つことができなかった。さすがに全裸で踊らされて辛かったのか、抱えた膝が小刻みに震えていた。
「柚木先生」
 その時、養護教員の佐藤に呼ばれた。
「ちょっとだけ、真由子さんを借りてもいいですか?」
 私は了承して、部屋の隅に引っ込んだ。こういった行事は相手の専門だから、流れは全て任せることにしていた。
 佐藤が前に来るのと同時に、少女も立ち上がった。もう胸を隠すには諦めたのか、股間だけを両手で押さえた。それでも、遠慮がちに言った。
「手、よけますか?」
「今は、そのままでいいわよ。恥ずかしいもんね」
 そう言われると、少女は心底ほっとした表情になった。
「よかった……ありがとうございます」
 些細なことで礼を言う姿が、痛々しかった。少女はそれだけ追い詰められていた。
 佐藤は、医療用のゴム手袋をしていた。さっき私が少女に指示している間、座敷の奥で両手にはめていた。消毒もされていて、注射の時に使うアルコールの匂いがした。
「じっとしてて」
 短く告げると、佐藤は少女の体に手を伸ばした。
「はい……んふっ……」
 少女はびっくりした目で、養護教員の顔を見つめた。相手の指が、少女の幼い乳房に触れ……ちょこんとしたピンク色の先端をつまんでいた。

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