人身御供
非現実:作

■ 処女巫女12

「こっ、殺してやるっぅ!!」
「ぐわぁはっはっは……魏志、遊んでやれぃ。
すぐに殺すでないぞ、琴乃姫のこの姿を見せてやるのじゃ。」
「ははっ」
「姫様ぁっ、正気に戻りなさいませっぇ!!!」
「無駄じゃ無駄じゃぁ、この姫はもう尻で感じておるわぁ」
「おのれぇ……」

総布の手が上下に大きく動かされると、それに応える様に姫様の腰も動いていた。
見たくも無い状況に我を忘れかける。

「貴様等も、じっくりとそこで見てるがよいわ。
大事な大事な貴様等の姫が堕ちて行くのを。」
「んぁぁあああ〜〜…ききょぉ……ぉぉ!?」

(聞きたくも見たくも無い……もう終わらせてやる)
匕首を逆手に持ち直し、飛び込む姿勢になる。

「金剛殿っ、いざっ」

シャララァン……
錫杖の輪が鳴り、深く息をする金剛殿。
ジワリジワリと錫杖を真横にして、魏志を牽制する。
忍び足で魏志四郎の斜め横に移動する。
スーーーと、脇差が私を追って来た。
総布の手が一時止まった。
場がシンと静まり、冷たい空気が支配する。
合図など無用……我等は幾度と無く主様達を守護してきたのだ。


ガッ…キィィッキィィッ……

魏志四郎の大刀と錫杖が、激しい音を立てて交差した。
……跳ぶ。
魏志四郎の真横から、すり抜ける様に私は跳んだ。
雄叫びと同時に脇差が動いた。

「ぬぅっ、ぉぅ!!」
「ちぃ!!?」

すり抜けた筈だった。
だが……魏志の動きを封じていた筈の錫杖がいとも簡単に弾かれ、脇差が動いていたのだ。

「金剛殿っ、如何したのじゃっ!?」
「……すまぬ」
「あまりにも簡単に押されておりまするぞ、剛力の金剛殿らしくない」
「…… ……むぅ」

これでは姫様をお救いする事が出来ない。
(金剛殿、集中しておらぬ……)

「ぐははは、そこの僧も男のようじゃなぁ〜〜修行は失敗したのか?。」
「む!」
「こんな淫猥な姫が気になっておるわ」
「こ、金剛殿っ?」
「……違う」
「ぐぅっふっふ…隠すでない、貴様は気になっておる。
それもその筈、仕えていた者がこんな事になっておるからのう?。」
「……違う」

今までじっと奥で隠れていた風見甚五郎が総布へと近付き、耳打ちをする。
(あの者、危険な事を考えておる)
…… ……嫌な予感がした。

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