桜怜ちゃんグラマラスデイズ
わたる:作
■ 25
「はぁ……はぁ……」
桜怜は走って家に帰った。
体中が汗まみれで、胸の谷間にも汗がたまっている。
「はぁ……はぁ……」
荒い呼吸のまま自分の部屋に入り、クーラーをつける。
「はぁ……暑い……」
桜怜は呟き、ベッドに横になり呼吸を整える。
そして汗まみれの制服を脱ぎ、Jカップの胸にはあまりにもきついブラジャーも一気に取ってしまう。
「汗ふかなきゃ……」
桜怜はタオルを取り出し、パンツ一枚の格好で滴る汗を拭き、しばらくそのままの格好で涼む。
誰にも見られていないのに、桜怜は両腕で豊満すぎる胸を覆っていた。
そして先ほどまで起こっていた、桜怜にとっては恥ずかしすぎることを思い出す。
同級生の男子たちに桜怜のコンプレックスである胸をイヤというほど見られ、水着着替えまで見られた。胸や股間は何とか見られていないが、豊満なお尻は完全に見られた。しかも携帯で撮られている。
「いやっ……!」
そこまで思い出し、桜怜は顔を伏せた。
「もう……いや……!」
桜怜は呟き、恨めしい自分の大きすぎる胸を強く抱きかかえた。
それから一夜が明けた。
体育こそないが、今日も補習の日だ。
桜怜は憂鬱でたまらなかったが、転校したてで休むわけにも行かず、しぶしぶ学校に向かった。
「今日は大丈夫……体育ないんだから……」
自分に言い聞かせるように言いながら、桜怜は学校に向かった。
幸い今日の補習は一時間。
「目立たないように座って……終わったらすぐに帰れば大丈夫……」
カバンで夏服の下でパンパンに盛り上がる胸を隠すようにしながら桜怜が呟く。
しかし、あの桜怜に向けられるいやらしい視線を思い出すとやはり気が重い。
「だめ……気にしなかったらいいの……大丈夫……」
羞恥を振り払い、桜怜は教室に入った。
チャイムが鳴り、補習授業が始まる。
桜怜のほかにはしっかりあの男子たちがいる。
(気にしない……気にしない……)
桜怜はそう思い、ただただ授業に集中した。
男子たちはやはり桜怜を見てはニヤニヤしているが、桜怜は気づかないふりをした。
「おい……今日いくよな?」
「おう……ちゃんと海パン持ってきたか?」
「へへ……楽しみだな……」
男子たちは教師に聞こえない程度になにやら話している。
桜怜は少し耳を向けたが、自分に関係ないようなので安心する。
そうこうしている間に補習が終わる。
「よかった……」
何事もなかったことに桜怜は安堵し、すぐに教室を出ようとして……
「桜怜ちゃん……へへ、ちょっと待ってよ……」
男子の一人が桜怜を呼びとめ、男子たちが近づいてくる。
「えっ……なに……?」
無視するわけにもいかず、桜怜が言う。
「今日これから僕たち海行くんだけど桜怜ちゃんも一緒に行こうよ」
男子が唐突に言う。
「え……海……?」
桜怜が戸惑い、聞き返す。
「ああ、学校からちょっと行ったところに小さいけど砂浜があるんだよ、結構穴場で人も少ないけど僕らはよく行くんだ」
男子が答える。
「ほら、もっと桜怜ちゃんと仲良くなりたいしさ、行こうよ」
他の男子がニヤニヤと言う。
(いや……! 海なんて……)
桜怜が思う。
「あ……今日は用事があるから……」
桜怜が言う。嘘だったが、こんな男子たちと一緒に海なんて行けるはずもない。
「そっかぁ……残念だなぁ……」
男子の一人がそう言いながらおもむろに携帯を取り出す。
そして何やら操作して、画面を桜怜に見せた。
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