悠美、大騒動
木暮香瑠:作

■ プレゼントは何?3

「ううーーーん、やっぱりグラビア写真集かな? 賢一の喜ぶプレゼントは……。女性の裸、好きだもんなあ、男性は……」
 賢一の趣味を、男性一般の趣味と置き換えている。
「それともHゲーかな? 賢一も男だし……、きっと好きだよな」
 色々とギフトショップやゲーム屋を廻ったが、賢一好みのプレゼントは見つからなかった。と言うか、賢一が何を好きなのかわからないのだ、3年も付き合ってると言うのに。いつも悠美が賢一を一方的に振り回しているだけで、賢一のことを何も判っていなかったことに気付く。
「どうしよう、何買ったら賢一が喜ぶか、判らないよ」
 いろんなものを見て廻る悠美だが、見れば見るほど判らなくなる悠美だった。



 深夜、賢一の部屋、窓にコツンッと何かぶつかる音がした。

 !?

 賢一の部屋は二階である。部屋の明かりに誘われ、虫でも飛んできて窓に当たったかな? 賢一は特に気にもせず、マンガを読み続けた。

 コツンッ!

 !?

「賢一! 開けなさいよ」
 マンガを読んでいる賢一に、押し殺した声が聞こえる。
 賢一は、何事? と思いながら窓は開け下を覗いた。
「何だよ、悠美か……。何か用か?」
「何か用かじゃないわよ。何で鍵締めてんのよ。玄関の鍵、閉まってるわよ、もう……」
 呑気に声を掛けてくる賢一に、悠美は怒った様に頬を膨らませた。
「普通締めるだろ。もう10時だぞ。それに玄関のチャイム押せばいいだろ」
「ご両親にばれちゃうでしょ」
「いいじゃねえか。お前が来ても何も驚かねえよ」
 そんないつもの他愛のない会話が繰り返される。
「そうじゃなくて……。もう、開けてよ」
 悠美は、さっきよりも頬を膨らませて言った。
「判った判った。待ってろ」
 賢一はそういうと、玄関に向かった。

 玄関から入った悠美は、賢一にしーーーっと立てた人差し指を口に当て、抜き足差し足で階段を上がっていく。
「なんだよ、親父たちに知られると拙いことでもあるのか?」
 しーーーっとされてることもあり、賢一は小さな声で悠美に聞いてみる。
「ちょっとね」
 悠美は、たいした事じゃないという感じで答えた。でも、知られちゃ拙いことには変わりはないみたいだ。賢一も、とりあえず悠美に従って音を立てないように階段を悠美の後を追った。

 部屋に入った悠美は、いきなりTシャツを脱ぎだした。

 !?

 一瞬の静寂の後、賢一は、
「ひいっ!!」
と、驚きの声を上げる。
「しーーー!、なんて声上げてんのよ。ご両親に聞こえちゃうじゃない」
 悠美の人差し指が賢一の口を塞ぐ。
「で、でも、何してんだ!! 着ろよ」
 口を塞がれようと、賢一は突然の出来事に声を上げざる負えなかった。
「何してんだじゃないでしょ。今日、あんたの誕生日でしょ!? プレゼント、まだだったから、私のバージンあげようと思ったんじゃない」

 !?

 何度目の!? だろう。いつも悠美には驚かされている賢一だったが、こんなに短い間に、こんなに驚かされることは初めてだった。

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