真梨子
羽佐間 修:作

■ 第6章 従属25

− 診 察 − 8月3日(水)

「おはようございます。 奈保子さん」
 真梨子は出勤直後に、1階にある高倉ビューティ本店の川上奈保子から急用だと呼び出されて駆けつけてきた。
「久しぶりね、真梨子さん。 お元気?」
「ご無沙汰していました。 はい、元気にしています。 急ぎのお話って?」

「今日はね、脂肪吸引の検診よ」
「はい?!」
「今日は桑野先生がお見えになってるんだけど、1件キャンセルが入っちゃって先生の時間が少し空いたの。 それで貴女のバストのチェックがそろそろだって思い出したのよ。 貴女、忙しそうだし桑野先生とスケジュール合わせるのは難しいでしょうからチャンスだと思って仕事の振りをして電話したの」

「そうだったんですか」
「30分位、いいでしょ?!」
「はい…」
「さぁ、準備して!」
 奈保子は急かすように真梨子を診察室へ導いた。

          ◆

「羽佐間さんは以前にも増してとても綺麗になられましたねえ。 眩しいくらいですよ」
「まあ… 桑野先生… お上手を仰って…」
「いや本当ですよ。 女性はコンプレックスを克服すると見違えるように綺麗になられます。それが私達のやりがいがなんですよ」
「あ、ありがとうございます、先生…」
 真梨子は平静を装っているが、医師の診察とはいえ明るい診察室で男性に乳房を触られながらの会話はとても恥ずかしい。
 今も桑野医師は両手をバストの下にあてがい、タプタプと乳房の揺れを確かめているのだ。
 真梨子の頬は赤らみ呼吸が少し乱れているのを悟られないようにゆっくりと息を吐いた。

「あっ…」
「乳首から粘液のようなものは出ませんでしたか?」
 桑野医師が乳首のバーベルピアスを左右にずらしながら尋ねた。
「ええ… 最初の3日位だけであとはぜんぜん…」
「そうですか。全然問題ないですね。 じゃ下のピアスも見せて頂けますか?羽佐間さん」
「えっ…」
――どうしょう… アナルのプラグが…
 梶に命じられたアナルプラグは毎朝自宅での腸内洗浄が終わってから入れる事が習慣になっている。
――こんな姿を見られる訳にはいかない!
「あの…そ、それはもう… 大丈夫ですから…」
「あら? どうして? まさか真梨子さん、恥ずかしがってるの?」
 奈保子が笑いながら真梨子の顔をのぞき込んできた。
「あ、いえ… 汗をかいていますから…」
「あらっ、そんな事気にしないでいいわよ。大事なところが化膿してたりしたら大変な事になるわよ!」
 もじもじする真梨子を見て奈保子が笑うのをこらえながら真梨子の耳元に口を寄せた。
(真梨子さん、旦那様に何か悪戯されてるんでしょう?! あ・そ・こ・に!)
「あっ、いえ、あのぉ…」
(隠さなくていいのよ。貴女達、ご夫婦の趣味は知ってるんだから。 うふふっ)

 真梨子は顔を伏せコクリと頷いた。
 恥ずかしいところを幾度か見られている奈保子なら桑野医師に上手くとりなしてくれるだろうと期待して白状したのだが、期待は裏切られた。

「大丈夫よ! 先生も私もそういうのには慣れっこだから。時間がもったいないわ」
――うっそ! 奈保子さん… 許して…
「あの…おトイレに…」
「気にしないの!さあ脱いで診察台にあがって頂戴。先生のお時間があまりないのよ」
――奈保子さん…
「はい…」
 少し高圧的な奈保子の態度に気圧されスカートのホックに手をかけた。

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