真梨子
羽佐間 修:作

■ 第9章 肉人形43

− 上場セレモニーT −  9月16日(金)


浩二をマンションから送り出した後、真梨子は引越しの荷造りをした。

 マンションには備え付けの家具や家電が用意されていたので、荷物は衣類がほとんどだ。

 洋服をひとつずつを手にとって整理していると、様々な恥辱の記憶が頭をよぎる。

 梶に買わされた数多くの扇情的な服、雅に貰ったエロティックなドレスやボンデージ、俊一に何度も着せられたセーラー服、、、 それぞれを身に付けて陵辱された場面を思い出し、記憶をも棄て去るように段ボール箱の中に投げ込んでいった。

 昼過ぎには大方の荷物の整理がつき、昼食を摂ってから、半年間住んだ部屋を一心不乱に隅々まで掃除した。

「あっ、もう3時だわ、、、 シャワーしなくっちゃ」

 パーティに出席するため5時に到着する両親を、東京駅に迎えに行く約束をしていた。

   ◆

「きゃっ〜! 誰っ?! よっ、横田さん、、、」

 バスルームを出ると、ソファに座った横田が真梨子に向かって手を振っているのだ。

 突然のことで驚いたが、思えば横田が合鍵を持っていても不思議はない。

「さあ、出掛けるぞ」

「あっ、、、 5時に両親を東京駅に迎えに行かなきゃならないので、、、」
 裸身に巻いたバスタオルを握り締めて真梨子は身を硬くする。

「いくら田舎モンでも、一人でホテルまで来れるだろう」

「も、もう終わりにしてください、、、 もう最後だって、、、」

「ふん。 誰に何を聞いてるのか知らないが、神戸に戻るまではお前は俺たちの管理する牝犬だ」

「あぁぁぁ、、、」
 啓介の最後の陵辱に喘ぎ、告げられた妊娠の事実、、、 そして浩二の子供として産めと衝撃の命令が下された。

 そして昨夜、浩二の子供だと欺く大芝居をやり遂げ、もう東京での悪夢は終わったものだと思っていた。

――この男達は、夫の晴れ舞台の日にさえ、一旦捕らえた私という獲物を嬲り尽くすのね、、、

「さあ、早く支度しろ」
 横田はバスタオルを剥ぎ取り、真梨子のヒップをピシリと叩いた。

 真梨子は裸のまま、ドレッサーの前に座り、化粧を始めた。

 暫くするとクローゼットでゴソゴソしていた横田が、真梨子の後ろに立った。

「ふふっ、素敵な服があるじゃないか。 これ、着ていこう」

 鏡に映る横田のかざした服は、ヒップの部分がくりぬかれたレザースカートだった。

「そ、そんな服で外になんて、、、」

「くくくっ。 知らないとでも思ってるのか?! これ着て、俊一とドライブして、漫画喫茶でやりまくってたじゃないか!」

「いやぁぁぁ、、、」

「こんないやらしい服を、姉弟で買いに行くとはな。 度し難い変態だぜ。 さあ、早く着るんだ」

「あぁぁぁ、、、、はい」
『神戸に戻るまでは、、、』 この言葉がせめてもの真梨子の慰めだ。

――明日には神戸に帰れる、、、 この子と一緒に、、、

   ◆

 車は、上場祝賀パーティが催されるエンパイヤー・ホテルの駐車場に滑り込んだ。

「この格好では外に出られません」
 車を降りようとする横田に真梨子は懇願した。

 パーティが始まるまではまだ2時間程あるが、浩二の会社のスタッフはパーティの準備で既に来ているはずで、絶対に見られるわけにはいかない。

「漫喫の中ではウロウロしてたくせに、よく言うぜ。 エレベータに乗るだけだ。 早く来い!」

 車から強引に連れ出され、地下駐車場から乗り込んだエレベーターが向かったのは最上階のスウィートルームだった。

 横田に背を押され足を踏み入れた部屋の奥のソファには、やはり吉岡専務がいた。

 そして吉岡の向かいに座り背を向けている人物のシルエットに真梨子は衝撃を受けた。

――まさか、、、 梶部長、、、

「お〜〜っ! 元気そうじゃないか、羽佐間君」

 振り返った男はまさしく、真梨子を嬲り尽した梶だった。

「なっ、なぜ梶さんが、、、」

「ふふふっ。 昨日やっとギブスが取れてなあ。 今日はリハビリを兼ねてお前の送別会をしてやるよ。 あははっ」

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